本作は、文明開化の帝都を舞台にした幻想譚です。古書店で出会った書生と千年妖狐の関係が、恐怖と庇護、支配と甘やかしの狭間で揺れ動いていく様子にどんどん引き込まれます。銀座十二階の怪異や狐の嫁入り行列など、明治の空気と怪異が溶け合った幻想的な描写も圧巻です。守られるだけの玲が知識で活路を開く場面は胸が熱く、奏の独占欲に甘さが滲む瞬間には頬が緩みます。これから二人を取り巻く結社や闇がどう動くのか、とても楽しみです。