第2話 ましろクソコラグランプリ

「えいえいえーい! 誰もいねーけど今日も配信すっぞ!」


 昨日の夜、わんわん泣いたから喉が痛い。


 だっていきなりバカにされるんだもん。


 か弱い女の子に何すんだよ。


 泣いた理由は顔晒したのに反響なかったからだけど。


「昨日はね~芋野郎にいきなり煽られて一生分泣いたのさ! 泣き顔も晒したかったけど、そこは自制心が働いたね。私より働いてる」


 誰もいないのに妙に元気な私。


 キャラ作らないで話すのってすごく素敵。


 自分大好き。


『どうも。昨日の者です』


「んあ? 昨日の……良く来たな待ってたぜ」


 私を泣かした張本人だ。


 今日も来るなんて最早私のこと好きだな。


『昨日と態度がかなり違いますね』


「当ったり前じゃんか! 顔・部屋・名前まで晒したんだから、もう振り返ることねーよ! ……そっちの方が好きです? ほらやっぱり私のこと好きじゃんか」


『ほら?』


「顔見て好きになったんでしょ? 恥ずかしがらないで言ってみ~」


『いえ。今日は友達と面白いことしてきたので伝えに来ました』


 面白いこと?


 ガキのやることなんざエロ本を万引きしたとか、エロ本を共有したとか、エロ本を――


『限界ましろさんのクソコラ作ってきたんで見てもらおうと。一応、学年のみんなに作って貰ったんで今から呼びますね』


 ふーん。


 クソコラとな。


 ちょっとだけ頬が赤くなって体温が上がった気がするけど、平常心だよ。


 学年ってことは学生……


 一体何人いるのそれ?


「へー学年のみんなねー。君、人気者なんだ。私、人気者は嫌いだよ……って急に六十人!?!!!???!」


 一気に膨れ上がる同接の数。


 私の胸もこれくらい急成長してほしかった。


『こんばんは』

『とびきりのクソコラ作ってきました』

『DMに送ればいいですか?』


「ちょちょちょちょっと! 学年まるまるいるんじゃないのこれ!?」


『みんな面白そうって言うから』


「だからってリア友巻き込むのかよ。おめー発想の源が狂ってるよ。よし、DM送れ。配信に載せてやる」


 どうせガキの考えることだ。


 適当な拾い画に切り抜いた画像貼ってるだけでしょ。


 でも、凄い勢いでDM来てる。


 六十人が作るほど素材あったっけ?


 中指立てポーズくらいしかないと思うけど……


「はい一枚目」


 無作為に選んだDMを開く。


「これは……私の顔が貼ってあって身体がソファに……これホモビデオのインタビューじゃんかよ! 適当なトリミングしやがって有罪だぞ!」


 顔の角度があってない。


 点数すらつけられねーなこれ。やりますね。


「次は……字幕いじってるねこれ。もう顔晒すってレベルじゃねーぞ! か。ふっ甘いね。この程度じゃ泣けない。今度は動画か……え。みんな見てこれ凄いよ! 私の顔がAI加工されて実写みたい!」


 背景は街中で、服装は男性っぽい。


 青っぽいシャツに黒のアウター。


「お金いっぱい欲しいんだったら年金あてにしたらだめじゃない。自己防衛・顔晒し・素材提供・海外移住。日本脱出だよね。炎上商法なんかあてにしたらだめ……だって。あはははなにこれしょーもなっ! もう下らなすぎて泣けてきた! 個人情報晒してんのに自己防衛ってウケる!!」


 素材の使われ方に泣いた。


 クソしょうもない。


 意味わかんないけど笑える。


 私の存在意義なんてこんなもんだよきっと。


「ひっ……うぐっ……下らないよ~。なのに涙が止まらない~」


 その後もクソコラから手の込んだコラまで見せられ、泣きながら笑った。





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