限界VTuberさんは全てをさらけ出し、切り抜き・MAD素材自由化宣言をする。
ろっし
1章 素材でも見てくれるなら
第1話 私だって誰かに見られたい。
高校卒業する前は、大学生になったらSNSを活用して色んな人と繋がろうと考えていた。
その時は希望に夢を膨らませ、私の平たい胸がちょっとだけ膨らんでいる気がした。
待ちに待った春。そして始まる大学生活。
人前で自己表現するのが苦手な私だけど、大学デビューをばっちし決めるために隣の席の子に話しかけたり、できるだけ目を見て会話することを心がけたけど……
G.Wが終わる頃には全てが打ち砕かれていた。
仲良しグループのラインに私はいない。
SNSを覗くと同級生のみんなは出掛けている。
スマホを見つめながら涙を流し、欲求が爆発した私がとった行動は……
「こんこんちゃーっす! 限界系VTuberの限界ましろだよ☆」
人から見られたいという承認欲求が爆発した私はなけなしのお金でVデビューをしていた。
「今日も始まりました限界チャンネル! G.Wが終わって激しく鬱な私は毎日限界だよ~」
実家の六畳一間の部屋に中古で購入したPCに、中華マイク。カメラはスマホで代用している。
悲しいことにスマホのバッテリーが不安定だから時々アバターがフリーズしちゃう。
「あっ新規さーん来てくれてありがとう! 自己紹介するね」
同接の数字がゼロからイチに変わった時がとにかく満たされる。
固定リスナーがいない私にとって、新規リスナーはとにかく興奮する。
『どうも』
「どうも~だって可愛い! 限界VTuberの限界ましろです! 限界の理由は――」
『なんとなく面白そうだから覗いてみたけど普通ですね。限界って書いてあるから頭バグってるかと思ったのに』
「え……へへ。そうかな。一ヶ月で大学中退した限界エピを話そうかな~って。あはは」
人気を得るために声高めに出したり、かわいこぶったりこっちだって大変なんだよ!
『いやだってさ、自分の下着を晒したり首から下を映したり限界って意味ではこれくらいやってるVいるじゃん。それを期待してたのにさ』
かー! むっかつくなぁコイツ! 初対面なのに上からだなほんと! 大学にもマウント取りたがる男がいたわ!
「ちょっと~! そういうこと言う人嫌いだな~」
『嫌われてもいいんだけど事実じゃん』
頭の中でブツン! なにかが切れる音がした。
「じゃあ限界見せてやんよこのやろー! ほら実写だぞ! 拝めよ讃えろよ!」
感情が焚いてしまった私はアバターを消し実写を配信する。
メイクしてないし、前髪がパラリと割れている。
どうせなら超絶美人(本人談)の私を見せてやりたかったわ!
『うわっキレたんだけど! 晒してもいいこれ? 人気でそうだね笑』
「勝手にしろよ芋野郎!」
目をかっぴらき、舌を出しながら中指を立てるポーズ。
あ~やっちゃった。昔から煽られるとすぐ感情乱れちゃうんだよね。
「ちょっとましろ~。夜中に大声出さないでよ」
廊下から聞こえるのはお母さんの声。
もう役満やんけこれ。
『しかも親フラwwwwww 明日から人気者だね。名前も聞こえてたし』
「あーそうかよ。今すぐSNSに拡散しろよこのやろー。お前のおかげでこっちも人気者だわ。勝手に切り抜いて再生数稼げよな。私なんてフリー素材なんだからァ!」
『フリー素材VTuber爆誕! んじゃ、自由に使わせてもらうわ』
フリー素材VTuberだってウケる。
――名前も部屋も顔もバレたし、明日からどう生きていこうかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます