第15話

 

 学長の話が終わり、フェデリー先生とラフトゥ先生のいる公爵邸に戻った。


「おかえりなさい、3人とも試験はどうでしたか?」

「おーおかえりー、試験は合格しただろ?」


「「「ただいま戻りました!」」」

「はい、試験は合格でした!」

「僕達、首席と次席と四位でした!」

「お二人とも手加減し忘れたみたいで……」


「「カイト、それは言わないで!」」


「私の言った事を忘れていたんですね?」


「「は、はい……」」

「でもわざとではないんです! たまたまと言いますか……」

「成り行きと言いますか……」

「本当は僕達だって目立つつもりはなかったんです!」


「はぁ……。まぁいいですよ、なんとなく予想していましたから。貴方達2人とも箱入りですもんね。


だから、カイト君が少しセーブしただけでもよしとします。……ただ次からは気をつけるんですよ。私達は学園の中まではついていけません。三人とも学園に入ったら、私達はまた冒険の旅に出ます。そろそろお別れの時になりますね……」


「先生達がいなくなるなんて寂しいです……」

「僕達と一緒に学園行きませんか?」

「私達の先生を学園でまだしてくれませんか?」


「お言葉は嬉しいですが……、私達は自由を愛する冒険者です」

「俺らは先に行ってるからお前らが俺らのところまで来いよ」


「そうだ、よね」

「冒険者、ですもんね」

「私達が先生達に追いついて、いやっ! ……追い越して見せます!」


「その調子ですよ頑張ってください。……それにしても子供の成長とは早いものですね」

「出会った時はこーんなに小さかったのにな、あっという間にデカくなっちまった」


「私達はこれからも君たちが誇れるような先生でいますよ」

「だからお前らも俺らが誇れるような弟子でいてくれよ」


 言葉の後に、先生達は私達の頭を撫で回した。

その後は合格祝いをして盛り上がり、翌日にベネディクト王国に戻った――












 あっという間に学園に向かう日になった。


「あっという間の三ヶ月だったね、もう学園に入学するんだよ」

「うん、早かったね。この世界に転生して早八年、あっという間の八年だった……。

色々な人に出会って、様々なことを教えてくれたよね……。みんな優しくて、ルナ様やステラ様もいつも見守ってくれてとても感謝してもしきれないね……」


 私達は2人で話し合っていた。

 キースやルキが生まれて、今ではペットのように生活しているけど本当は聖獣なんだもんね……。


「そういえば、キースとルキは今のような生活ではなくなるかもしれないけど本当にいいの?」


「僕達はリン達といるのが当たり前だからね。リン達がいなきゃ、僕達はこの世界にいる意味はないから、リン達がいるところに僕達はついて行くよ?」


「でも僕達の行くところはこの王城よりも狭い、寮の中だから窮屈だと思うよ」


「大丈夫、我達は小型化ができるからな。小型化すると普通の猫と犬にしか見えんから、ただのペットだ」


「まぁキース達がいいなら私達はいいよ。ただ聖獣扱いではなくなるからね」


「「うん! (わかっておる)」」



「じゃあ……そろそろお別れの挨拶に行かないとね」

「そうだね、いくら長期休みで帰って来れるとはいえしばらく家を離れるんだもんね」


「……先生達ともお別れだね」

「悲しいなぁ」

「私達のことを先生達は待ってはくれないよ」

「僕達が追いつくしかないよね……」


「「がんばるよ(ろう)!」」



 私達は家族のもとに向かいお父様、お母様、お兄様、お義姉様、お姉様に別れの挨拶をする。

 学園に試験に行った時もそうだったけど、やっぱり同じことをみんなして長い時間引き止められた。



「それではみんなまた帰ってきますね!」

「僕達いっぱい勉強して、成長してくるので楽しみに待っていてください!」


「あと冒険者になるのを許してくれてありがとうございます‼︎ 頑張ってきます!」


「「それでは、行ってきます!」」


 私達は馬車に乗り込み、エデュケアに向かった。

 今回もカイトと先生達がいて、先生達は僕達が学園に入ったのを見届けてから冒険の旅に出るらしい。


 フェデリー先生と連絡先は交換しているので、いつでも魔法で手紙を送れる状態にしてある。これで少しは先生と離れても寂しくないよね?








「二回目のエデュケア到着!」

「学園の入学式まであと一週間だよ!」

「二人ともあんまりはしゃがないでくださいね」



「それでは学園に向かいましょうか」

「……もう入寮できるからな、とっとと終わらせるか」


「「「はい!」」」 




 学園の前に着き、先生達とお別れをする。


「……それでは、私たちはこれで失礼します。とても楽しい三年間でした。いつか……また会いましょうね」


「……お前ら、また会おうな。元気にしているんだぞ!」


「はい、先生達もお元気で……。三年間お世話になりました……。学園でのことは必ず手紙で送ります!」


「三年間ありがとうございました……。僕達がここまで成長できたのも、先生達が厳しく指導してくれたおかげです……」


「今までありがとうございました……。冒険者になって必ず会いに行きます! また、会えるのを楽しみにしています!」

 先生達は私達の姿が見えなくなるまで見届けてくれた――――。


 学園の中に入ったら受付に行き、自分たちの名前を言った。寮は男女別々で王族と聖女関係者以外は四人の共同部屋らしく、私達は出自を隠しているので共同部屋になった。共同部屋は成績順で決まっており、僕達三人ともう一人いる。


 まぁ、アホルト君が王族で良かったよ……。あの子がいると騒々しいからね。

 それで受付の人にもう一人が誰なのか聞いたら、試験の時に七位だった子なんだって。五位と六位は女の子らしい。同じ部屋同士仲良くなれるといいな、と私はそう思いながら部屋に向かう。


「えっと、106号室ってどこ?」

「あっ、あそこにあるよ!」

「そうですね、じゃあ行きましょうか」


 私達は部屋につき扉の前に立つ。

 どうやらもう一人の子は来ているみたいで、部屋から物音がする。深呼吸をし、三人で顔を見合わせてから扉をノックした……。


「おう、入っていいぞ!」


 了承を得られたので私達は扉を開け、部屋の中に入った。部屋は魔法で拡張されているのか、とても広く四人で生活しても伸び伸びできる空間になっている。


 ベットは二段ベットが二つ、机が四つと、とてもシンプルな部屋になっている。


「初めまして、今日からよろしくね。私はリアンって言います!」

「僕はリアンの弟のレオンだよ」

「私はカイトと言います。よろしくお願いします」


 私達に後頭部を向けていた男の子に、自己紹介を始めた。その時、男の子が振り返ると私はとても驚いた。


 「俺は……あれ?  お前、試験の時の?」



「あっ! 君は私に忠告してくれた子だよね?」


「まぁとりあえず、俺はハルトだ! よろしくな!」

「ハルトって言うんだね? 試験の時はありがとう!」

「リアンがお世話になったね……。僕からも礼を言うよ」


「いいや、別にいいよ! リアン……というかみんな呼び捨てでもいいか? 俺、堅苦しいの苦手なんだよ!」


「私はいいよ」

「僕も」

「私も構いませんよ」


「じゃあ呼び捨てで呼ばせてもらうな! ところで、リアンの試験はどうなったんだ? 俺、疲れすぎてすぐに待機場に行っちまったから結果見てないんだよ!」


「私は試合で三分間もったよ、ただ結構ギリギリだったけどね」


「だよな! お前の名前が首席だったからそうだと思ったんだよ! レオンも次席だし、カイトも四位だろ? お前らすごいな!」

 ハルトはニコニコの笑顔で話しかけてきた。


「ハルトも七位じゃないか……。十分すごいと思うけど……」


「いや、お前らは別格だよ! 特にリアンとレオンは満点合格だろ? 学園創設以来初めてだったって聞いたぞ!」


「まぁね、たまたまだよ。私達の教えてくれていた先生達がとても優秀だったんだよ」

「三人は全員同じ先生を師匠にもつのか?」


「そうだよ、僕達はみんな幼馴染なんだ」

「じゃあ三人ともよく知った仲なんだな!」

「そうだよ」

「そういえば、俺は平民だけどいいのか? 身なりからして三人とも貴族だろ?」


「別に私たちは気にしないよ」

「僕らはそんなの気にしないよ。実力があればいいんだから」

「そうですね、私も実力があればいいと思いますよ。というか普通に平民で七位ってすごいですけどね?」


「俺は教会で勉強していたんだよ、勉強を教えてくれるシスターがいてさ、たまたま運が良かったんだ。剣も独学でさ、才能があったのか、めちゃめちゃ楽しいんだよな」


「そうなんだね、これからよろしくね、ハルト」

「よろしく、ハルト」

「よろしくお願いしますね、ハルト」


「おう、よろしくな!」


 私達四人はすぐに仲良くなった。でも、ハルトには愛し子とかもろもろ言った方がいいのかな? 人柄は良さそうだから、言っても良さそうだけど……。キースやルキも小さいままは窮屈だろうし…… 。


 とりあえずレンとカイトに相談しよう。






 あのあとハルトは買い出しがあるとかで外に出た。

 私はこの隙を狙い二人に話した。


「ハルトに私達のこと言ったほうがいいかな?」

「うーん、いいやつだとは思うよ……」

「そうですね……どうしますか?」

「でも、部屋の中でも隠しているのは面倒臭くない?それに何かあった時に絶対バレるよ?」

「そうだよな……」

「お二人が決めていいですよ」


「いっそのこと、私達が卒業したら冒険者になる事を言って、一緒にやらないかって誘おうよ。それで一緒にやるって言ったら秘密をバラそう?」

「それだ、そうしよう!」

「では、決定ですね」




 ハルトが帰ってきて、私達がこれから卒業したら外の国に行って冒険することを話した。

学園にいる間は国内で冒険者をするため、いないことがたまにあることも言った。

その時にハルトも一緒にやらないかと誘った。



「三人とも冒険者になるんだな……。じゃあ俺と一緒だ! 俺、実はもう冒険者になっているんだ」


「そうなの?」


「おう、外の国を見てみたくてな! 俺も卒業したら外の国に行く予定だったんだが、三人がいいなら俺も仲間に入れてくれないか?」


「本当にいいの? 僕達と一緒で……」

「私達は君に話さなければいけないことがあるんですけど……」


「おう! 男に二言はねぇよ。三人の仲間にならせてくれ!」


「わかった、じゃあこれからよろしくね!」


「じゃあハルトには僕達の秘密を知ってもらわないとね?」


「あ、おう。お前らの秘密って?」

「聞いたら後には戻れないですよ、後戻りするなら今しかありませんが……」

「いや、俺はお前らの仲間になるって決めたんだ! だから聞くぞ!」


「よく言った、それでこそハルトだよ! じゃあ二人ともイヤーカフを外すよ」

 私達はイヤーカフを外して元の髪色と瞳の色に戻った……。


「お、おま……あなた達は……まさかその色は………」

「やぁ、改めましてよろしく。私はリュシアン・ベネディクト。学園ではリアン・ウェスティスで通う予定だよ」

「僕はリュシアンの双子の弟でオレリアン・ベネディクト。学園ではレオン・ウェスティスで通う予定」

「私はカイト・シュバルツ。2人のお守り役だよ。学園ではカイト・ヴァルターで通う予定です」


「なんで、双生神様の愛し子様達がこんなところにいるんだ! ……です」


「それはね、私達学園に来て、卒業してから冒険者になりたかったんだ!」


「どうして!」

「だって……愛し子って言ってもやることないし……」

「僕達……基本的に暇なんだよね」

「私はこうゆう方達なのでお守り役をしています。できればハルトにも手伝ってもらいたい」


「無理! 絶対無理! 平民の俺にはそんな高貴な方達は無理!」


「でもハルト、男に二言はないって言ったよね?」

「僕達に嘘、言ったの?」

 レンがあざとくハルトを見上げた





「うぅ、でも俺じゃ……お二人の足手纏いに……」


「ハルト、安心してください。私も足手纏いです。でもお二人と友達であり仲間です。ハルトもぜひ加わってください、お願いします。私を助けると思って!」


「うぅ、知っちまったもんは仕方ないよな……。わかった、これから俺は三人に肩を並べられるようにもっと努力するよ。だからこちらこそよろしく! というより、本当に呼び捨てでいいのか? 後、口調も……」


「私は別に構わないよ」

「僕も別に気にしないよ」

「私も大丈夫ですよ」


「じゃあ、堅っ苦しいのは本当に無理だから助かった!


「それでね、ハルトに紹介したい子達がいるんだ! 出てきてキース!」

「出ておいでルキ!」


私達は白虎と白狼に出てきてもらった。


「リン? 新しい仲間?」


「そうだよ、名前はハルト! 仲良くしてね?」

「わかった! 僕はリュシアンの聖獣、キースだよ。よろしく!」

「我はオレリアンの聖獣、ルキだ。よろしくな」

 ハルトは一瞬だけ気を失ったみたいに動かなかった。




「お、お、お初にお目にかかります。私はハルトと申します。よろしくお願いいたします、聖獣様」


「うん、よろしくね? 特別にキースって呼んでいいよ!」

「よろしくな、我も特別にルキと呼んでいいぞ」


「そ、そんな恐れ多いことできません、せめてキース様とルキ様とお呼びいたします」


「じゃあそれでよろしく!」

「我もそれでいい」


「ありがとう存じます」


「じゃあ僕達もここでは自由に過ごしていいね?」


「うん、いいよ」

「ただし、ここだけで他の場所ではダメだからな。外に出るとしても子猫が子犬になることだからね」


「わかってるよ、レン」

「そうだぞ、そんなに何度も言うでないわ」


「俺、生きていけるかな………」

「ようこそ、こちら側の世界へ。歓迎いたしますよ、ハルト」

「そんな歓迎は……いらない」



 こうしてあっという間に一週間が過ぎ、入学式当日になった。





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