第1話
「ねぇ、次はさカフェに行こ!」
「いいよ、ねぇちゃん俺……」
「危ない‼︎」
知らない人が急に叫んだと思ったら――
ドンッッッッ
体に衝撃が走り私は吹き飛ばされた。
一緒にいた弟は……。弟がいた方向は血だらけになっていて、私はそのまま意識を失った――
気がついたら、青空が広がる色とりどりの花を咲かせた美しい花畑の中にいた。
「ここはどこ? ……晴樹は? 私たちは確か――」
「ねぇちゃん、ここどこ! 俺たちどうなったの⁉︎」
ふと隣を見ると双子の弟、晴樹がいた。
「ここがどこかは知らないけど……私たちは多分トラックに轢かれて死んだ……」
「じゃあ、ここは天国?」
「違います、ここは神界です」
私達の声ではない知らない女性の声がして、顔を向けた。
「「あなた達はどちら様ですか?」」
晴樹と声が揃った。
そう、あなた達と言うからには二人いるのだ。美しい顔をした男女が――
女性の方は
男性の方は
「初めまして、私達は双生神と呼ばれる神です。私は姉のルナで隣の男が――」
「弟のステラだ。よろしく」
「初めまして、私は
「初めまして
「それで、早速なんだけどあなた達死んじゃったんだけど、面白そうな魂だからここに呼んでみたの! 普通は、魂になったら記憶自体無くなってしまうし、話せなくなるのよ。でもあなた達は違う、だから生まれ変わるのに選択肢をあげる。あなた達は地球と異世界、どちらに生まれ変わりたい?」
ルナ様は私達に選択肢を与えてきたが異世界がどんな世界なのか聞いてみないとわからない。
「あの、すみません質問なんですが異世界とはどんな世界ですか?」
「僕も気になります!」
「あらぁやだ! 説明し忘れてたわごめんね、異世界についてはステラから聞いて!」
「……じゃあ説明する。その世界はテラと呼ばれ、魔法がある世界だ。
種族はエルフやドワーフ、竜人や獣人、人間など様々な種族が暮らしている。人間には王族から平民までの階級があり冒険者や神職者などもいる。神は主に私達二柱を含め、七柱存在しそれぞれ崇められている。ちなみに魔王や魔族なども存在するが人間とあまり変わらない姿形をするため、人間達とは対して敵対しておらず、至って平和な世界となっている、だがしかし魔物は存在するため危険はある。説明はこんなもんだが何か聞きたいことはあるか?」
「特にないです。説明ありがとうございます。晴樹はどっちにするか決まった? ……私は決まったよ」
「俺も決まった。じゃあいくよ!」
「「異世界でお願いします!」」
「わかった。異世界だな」
「異世界なのね?じゃあ次に異世界転生特典で特別に3つのお願いを聞いてあげちゃう! 何がいい?」
「晴樹、私が決めてもいい?」
「いいよ、姉ちゃんの方がそうゆうの得意でしょ」
「じゃあ一つ目に私達が生きてきた人生を無かったことにしてください。私達には私達を愛してくれた両親やもう一人の弟がいましたが、死んだことでいつまでも悲しんでほしくないです。だから元々居なかった者にして欲しいです」
「わかったわ。それでは二つ目は?」
「二つ目は次に生まれる場所でも教育がしっかりと受けられ、かつ家族仲がいいところがいいです」
「それも大丈夫よ。では最後の三つ目は?」
「三つ目は次の人生では私を男性にかつ魔法が得意なように、弟は同じく男性で武術を得意なようにして欲しいのです。晴樹もいいよね?」
「うん、いいよ。二人で最強だね」
「わかったわ、全部の願いを叶えてあげる。でもね、なんか願い事が小さなことばかりだから特別にもう一個いいわよ」
「じゃあ私たち二人とも恋愛できないようにできますか?」
「それは、なぜ?」
女神様にそう問われた。
私達には人間では必ずあるはずのものが無かった――それは『他人に対しての興味と感情』
私達は一部の感情が欠落した人間だった。大切な人以外はどうでもいいし、他の人になんて興味も何ももてなかった。
生前、東京で私達は暮らしていた。実家暮らしの二十三歳で今年から就職する予定だった……。小学校、中学校、高校、大学とそれぞれ晴樹と一緒に通っていたが、いつも周りから見られていた。
自分で言うのはなんだが、私たちの家族は美形揃いだった。両親共に顔が整っている方だったために私達双子と三つ下の弟ももれなく顔が整っていた。両親は仕事で忙しいはずなのに私達に愛情をしっかり注いでくれ、時には厳しく、時には優しく、大事に育ててもらった。あとは文武両道を両親が口酸っぱく言ってきていたのでそれに応えるために晴樹と一緒に勉強から運動まで頑張った。その結果が名門学校の学年一位と二位だった。
周りからは感情が欠落した人間には見えないように、普通の人に見えるように、人好きのする顔をしていた。そのおかげからか周りには沢山の人がいた。
しかしあまり興味を持つ事ができず、話を聞き逃したことは一度や二度、それ以上にある。そこでふと恋をしたら、結婚をしたらと将来のことを晴樹と一緒に色々考えたが、想像する事ができなかった――
だって、私たちには人を好きになるという恋愛的感情が心の中にはなかったから。
生前どれだけ私達は人を好きになる事ができない、感情も乏しい欠落した人間だと思い悩み、2人で話し合ったか。
結論は出なかったが最近では開き直り、自分たちらしく生きればいいか、と思ってた矢先に死んでしまった。
「私達は恋愛的に人を好きになる事はありません。私達らしく自由に好きなことをすると決めているので誰にも邪魔されたくないのです」
「俺からもお願いします」
「うーん、できるにはできるわよ。ただ面倒臭い事にはなるけどいい?」
「それはどんな事ですか?」
「まぁ、何をするってわけでもないんだけど私達の愛し子になる事かな? 別に私達は君たちが面白くて気に入っちゃったからいいんだけどね」
「愛し子とはまさか、すごくレアな存在って事ですか?」
「うん、そういう事! しかも愛し子は基本的に各神と同じ色の瞳をしちゃうし、聖獣も一緒に生まれるから"即刻バレ"ちゃうよ! まぁ、その国にとっては愛し子が幸せであればあるほど豊かになるからいいんだけどね。あと私達は双子じゃん? であなた達も双子じゃん? 双子ってさ基本的に少ないし産まれたら全員に加護をあげるんだけど、愛し子は今までいた事ないんだよね。そこまでのお気に入りがいなかったの。だからすっごく祝福されることになるけどいい?」
「……でも愛し子になるとなんで恋愛や結婚ができなくなるんですか? 普通は婚約者だ、結婚だ! って幼いうちに決められたりしません?」
「あぁ、それはね、愛し子って死んだら期限はあるんだけど、神の下に仕えるのよ。それで恋愛や結婚をすると縁ができるから魂が結びつきやすいの。死んだ後、それがあると神は愛し子だけが欲しいから相手の魂ごと消滅させちゃうのよ。それを人間界にも伝えているから愛し子だけは恋愛と結婚禁止なの。しかも消滅した魂は永遠に戻らないわ。ただし例外も一応あるけど、自分の神に頼み込んで神が納得した場合のみたった一度だけ恋愛や結婚をすることができる。けれどそれをすると、愛し子の資格を失い永遠に戻る事ができないの、例え生まれ変わったとしてもね。みんな私達神が好きだからね、そこまでして恋愛や結婚をする愛し子は今までにいなかったわ。だからこの例外は愛し子と各国の王と王妃だけが知っている秘密よ。どうする?」
私は晴樹と顔を見合わせ頷いた。
「「愛し子にならせてください!」」
「じゃあ決まりね! 深月は私の愛し子で――」
「晴樹は俺の愛し子だ……」
「じゃあそろそろお別れの時間ですかね? 体がどんどん薄くなっていってるし……」
「俺質問したい! ルナ様やステラ様にはどうやったら次会えますか?」
「教会に来てくれればまた会えるわよ、また会いましょうね」
「じゃあまた会おうな」
「「はい、ありがとうございました! 絶対会いに行きます!」」
ルナ様とステラ様は優しい微笑みを浮かべながら私達を異世界へ送った……
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