第14話 別れと出会い
数時間にも及ぶ激闘の末—
ついにレイナの体が限界を迎えた。
「こんな……馬鹿なことが……」
彼女の美しい顔が苦痛に歪む。その足元には航希の『根源破壊』によって崩壊寸前の結晶体が残されていた。
「あなたを倒せば他の七死司祭の力も削げるはずだ」
航希の言葉にレイナは最後の笑みを浮かべた。
「そう思うならやってみなさい……ただし……次の『腐敗の魔女』は私より遥かに強いわよ……」
その言葉を最期に彼女の体は灰となって消え去った。
「勝った……のか?」
アッシュが信じられないといった表情で呟く。
「ああ。間違いなく倒したはずだ」
航希が応じると同時に全身から力が抜けていく感覚があった。
「航希さん!?」
エルミナが慌てて支える。見ると航希の頬には赤みが差しており息遣いも荒い。
「大丈夫だ……ちょっと疲れただけ」
無理に笑顔を作る航希だが明らかに消耗している様子だった。
「指輪の力を使ったせいでしょうか……」
エルミナが心配そうに見つめる。その言葉に航希は苦笑いを浮かべた。
「みたいだな。使いすぎると体に反動が来るようだ」
「しばらく休養が必要ですね」
ハルトが冷静に判断する。「レイナを倒したことであと六人。でも……今すぐ全てを追うわけにはいかないでしょう」
「同感だ」レティシアが頷く。「航希の体調もあるが深淵教団の方でも何か動きがあるはず。その兆候を待つべきだと思う」
「じゃあどこか安全な場所に行こう」
アッシュの提案で一行は近くの村へ向かうことになった。
数日後—
小さな山村についた一行は宿屋を借りて休養することにした。
「航希さん。食事をお持ちしました」
扉を開けて入ってきたのはエルミナだった。その手には温かいスープとパンが載ったトレーを持っている。
「ありがとう。ちょうどお腹空いてたんだ」
航希が笑顔を見せるとエルミナも安心したように微笑んだ。
「どうですか?体調は」
「大分良くなったよ。ただ……やっぱり指輪を使うと疲労感がすごいな」
航希がベッドの上でため息をつく。
「無理しないでくださいね。私たちのために命を削ってるんじゃないかって心配です」
エルミナの真剣な眼差しに航希は胸が熱くなった。
「ありがとう。でもみんなのおかげでここまで来れたんだ。それに……」
航希が窓の外を見つめる。「まだ終わっていない。レイナの最後の言葉……『次の腐敗の魔女は私より強い』と言ったのは気になっているんだ」
「七死司祭には代わりがいるということですか?」
エルミナが驚いた表情を浮かべる。
「恐らくそうだろう。だからこれからはもっと慎重に戦略を練る必要があると思う」
航希が真剣な表情になるとエルミナも頷いた。
「そうですよね……でも今はしっかり休んでください」
そう言って部屋を出て行こうとしたエルミナだがふと足を止めた。
「あの……航希さん」
「ん?どうした?」
エルミナが恥ずかしそうに視線を泳がせる。
「もし……もしですよ。世界が平和になったら……」
そこまで言ったところで扉がノックされた。
「航希さん。起きてますか?」
アッシュの声だ。タイミング悪く邪魔されたエルミナは少し恨めしそうな表情を浮かべた。
「起きてるよ。入ってきていい」
航希が返事をするとアッシュとレティシアが入ってきた。
「航希さん。大事な話があります」
アッシュが珍しく真剣な表情をしている。
「何かあったのか?」
「実は……」レティシアが一枚の紙を取り出した。「先程町で噂を聞きつけました。深淵教団の活動が再び活発化していると」
その言葉に航希は体を起こした。「詳しく聞かせて」
レティシアが説明を始める。数日前から各地で不審な魔物の出没が増えている。そしてその背後に必ず深淵教団の紋章を持つ者がいるというのだ。
「もしかしたら……次なる攻撃の準備を進めているのかもしれません」
「そうか……」航希は考え込んだ。「だったら早めに対策を練らないとな。まずは情報収集か」
「はい。それで……」レティシアが航希を見つめる。「あなたの体調が万全でないなら一度首都に戻って態勢を整えるのもありだと思います」
その提案に航希は少し考えてから首を横に振った。
「いや。今のうちに動くべきだと思う」
「ですが……」
「指輪の力も大分理解できてきたし……それに」航希がレティアの瞳を覗き込む。「七死司祭の一人を倒したことで奴らも焦り始めているはずだ。ここがチャンスかもしれない」
その言葉にレティシアも頷いた。「分かりました。では次の目的地を検討しましょう」
その時突然宿屋の外が騒がしくなった。
「航希さん!外に……!」
フィオネが慌てて飛び込んでくる。その背後には群衆に囲まれた黒い鎧の一団が見えた。
「あれは……深淵教団の兵士たち!?」
アッシュが驚愕の表情を浮かべる。
「まさか……私たちがここにいることがバレたの?」
エルミナが蒼白になる。
「とにかく迎え撃つ準備を!」
レティシアが即座に指示を出す。航希も急いで立ち上がり指輪に手を添えた。
その時群衆を割るように進み出てきた一人の男性が目に入った。それは黒髪に赤い瞳を持ち堂々とした佇まいの青年だった。
「おい。お前たちか?俺の部下を殺してくれたのは」
その声は若々しいが威圧感があった。
「お前は……一体誰だ?」
航希の問いかけに青年は冷笑を浮かべた。
「俺か?俺の名はガルド。七死司祭の一人……『炎獄の支配者』と呼ばれている」
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