未来編 第14話 帰ってきた/貴族騎士
裏路地が光り出すと魔法陣が広がり苦痛の声を上げながらギガスの身体が再構成されていく
街中に放置されたスピーカーから掻き乱されるようなアップテンポの電子音楽が鳴っている
すっかりボロボロになったアロハシャツを脱ぎ捨てると裏路地の先からタンクトップが投げつけられる
バイクを乗ったピンク髪の陽気な女、アンナ・ギルバートは髪を長くしてギガスを待っていた
「なんだか久しぶりだねギガス...牛乳に漬け込まれて...ふやけたシリアルみたいになってるけど?元気してた?」
ピッチリとした黒のボディースーツには装甲が追加されており各所が良い具合に噛み合っている
「元気だったよ?元気すぎてドワーフに嫌われるくらいにはね...ナハハハハwww」
「そんなアブラゼミが死ぬ時みたいな笑い方してないで後ろに乗って?話はバイクに乗ってからよ」
ノーヘルでは誰かの都合が悪いのか突如として出現したヘルメットをギガスは被るとバイクに跨る
アンナは少し笑うとエンジン音を鳴らす
「捕まっててよ〜!!敵のアジトまで道案内してあげるからさぁーーーーーーーーー!!」
バイクは2人を乗せて高速で走り出すと後ろから下半身を1輪タイヤに改造したロボット兵達が追いかけてくる
『評議会法を守レ...ギガスヲ削除スル...』
「なんか微妙にロボットの話し方が変わってるなぁ...きっと作者がSF設定を忘れかけているね...」
舌打ちするとアンナはバイクを加速させていく
「よくも人々を操って好き勝手してくれたわね!アンタらのボスもろともギガスが廃材アートに加工しちゃうんだから」
「しちゃうぞー」
後ろに向かってガチェポンを投げると地面に触れた衝撃で元の大きさの剣に戻る
数体のロボット達は地面から飛び出た剣に両断されて爆発して炎上した
ギガスはアンナの背中から手を回して彼女に捕まっている密着した体勢になっている
(いつもだったらサービスシーンだから興奮してたけど...なんか妙にスッキリしてるから何の感情も出てこないわ...何でなんだろうなぁ...)
アンナは前を向いて運転しながら話す
「ギガス...既に国王は私とアナタを指名手配し...評議会の決定による市民の弾圧や...騎士やロボット兵たちによる反乱分子の一掃を行っているわ...」
「トードのヤツ...馬鹿な事をしやがって...なんで馬鹿王子をのさばらせて...俺を狙うんだよ」
街中から悲鳴と混乱の声が聞こえてくる冒険者達も反乱を起こしてロボットや騎士と戦っている
(この戦いを早く終わらせなければ...不必要に血が流れ続けてしまう...止めなくては...)
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バイクが思い切りブレーキをしながらドリフトするとギガスは勢いで投げ出される
着地したギガスは人気の無い辺鄙な道の真ん中で困惑をしている
「こんなところから敵のアジトに行けるのか?」
「間違いないわ...他の冒険者達ともコンタクトを取ったけど...此処の地下通路からが最短で向かえる」
「よし、ならアンナは帰れ...此処からは俺が何とかしてやる...ウォーターハンマーの使い所だぜ!!」
アンナはバイクに跨ると別れの挨拶を言わずにカラッとした態度で走り出していく
「あくまで案内キャラだ...杏奈じゃない...」
ギガスは思い切りウォーターハンマーを振り上げると地面のコンクリートを破壊し地下に落ちていく
落ちながらもウォーターハンマーの中からチャポチャポと水の音が鳴っている
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瓦礫と共に無機質な廊下に落ちてきたギガスはハンマーを構えて走り出していく
目の前に立ち塞がるロボットの集団を意識すらせずにハンマーで次々と殴り抜けて魔王討伐を目指す
「こんな雑魚共じゃ...ハンマーヘッドシャークは止められねぇよ...ナハハハハwww」
目の前に黄色の魔法陣が現れるとギガの方に電撃を放ってくる
咄嗟にバク宙する事で避けたギガスは背後の気配に反応してハンマーで薙ぎ払う動きをする
背後で襲いかかってきていたのは貴族騎士のアラス
セントカリバーとウォーターハンマーは互いにキリキリと音を立てて硬さが拮抗しているのか火花をあげている
クリアなセントカリバーの刀身と
クリアなウォーターハンマー
偶然なのか互いに
2人は後ろにステップして距離を取ると互いに武器を構えて想いさえも相手に突きつけていく
「どけよアラス...魔王を倒さなきゃ...この世界までもが壊されちまうんだよ...時間が無い」
「魔王はオマエの方だろうが...オマエのやってきたことを全て知ってるんだぞ...この裏切り者が...」
足に魔法陣を通したアラスは素早い動きでセントカリバーを振り回していく
ウォーターハンマーをチャポ音を鳴らしながらギガスは攻撃をいなして回し蹴りを喰らわせる
アラスは膝を着いて疲れから荒く呼吸をする
(以前のギガスとは全く違う...俺の攻撃に少しも動揺をしていない所か...攻撃とも思ってない...
あの奇妙なハンマーのせいなのか...ヤツの実力は突如として俺のレベルを飛び越えて行った...)
ギガスは透明なハンマーを軽く振り回して中の水の音を鳴らしている
「もう諦めろよアラス...実力は分かった筈だろ?」
「それも魔王の力の一端なんだろ...どうしてトード国王に真実を隠していた...ザイラスは虐げられてきた弱い人間だった...どうしてなんだよ...」
「俺も自分のルーツを忘れていたんだよ...このハンマーを手に入れる際に殆どの記憶を取り戻した」
「ならどう思う?自分と同じ境遇か更に不幸な境遇で口にすることさえ苦しい想いをして生きて来た人間を簡単に殺すのか?心は痛まないのかよ...」
ギガスは無表情で髪をクルクルと弄り答える
「どれだけ不幸だろうが...可哀想だろうが...
俺の敵なら容赦なく叩き潰して殺す...」
「それを続けて喜ぶのは女神や闇の魔王...俺達の戦いを見て楽しんでいる傍観者だけだ...無意味だよ」
「忘れたのか?ザイラスは多くの種族の里を襲い資源を奪って当たり前の日常を奪った...許されない」
「それが仕組まれているなら?悪いのはコレを続けている上でほくそ笑んでいる奴等なんだよ...
トード王は提案をしたんだ...この世界と俺達と同じ思いをしている人々を救うためのな...」
ギガスは何処か...やり切れない想いを隠せていないアラスに気づくとハンマーを少し降ろして呟く
「なら...俺と決闘しろよ...オマエの主張が正しかろうが...間違っていようが...勝者が得るだけで済む」
「なんの解決にもならないんだよ...オマエの行動の全ては無意味の闇の中に消えているんだッ!!
2人は睨み目を合わせると雄叫びを上げながら互いの武器の力を最大限に高めて前に突き進む
ギガスとアラスは互いに魔王討伐のために正しき世界のために走り出している
ギガスのハンマーから水飛沫が飛び出しギガスの身体が泡に包まれていく
アラスの剣のに広がる魔法陣からは細く鋭くなった水流が飛び出していく
泡と水流が混ざり合い弾け飛んでいく大量の水と水は廊下を膝下まで浸水させていく
そして互いの武器の先端がが微かに当たると
派手に吹き飛んだのはアラスの方だった
次々と生み出された泡の追撃に弾かれて鎧は砕け散って転がり倒れる
床の水は壁の隙間から何処かに流れていく
ギガスは近づくと倒れたアラスに話しかける
「トードの提案とは何だ?」
「貴様に教えて何になる...あの人や同士達は止まらないぞ...直ぐに女神達の居る天界や闇の魔王の住む魔界へと攻撃を仕掛ける...全てのシステムを終わらせるために...」
「魔王それ自体を生み出す存在と魔王の力を必要とした女神を消すつもりか...」
「トード国王と大魔王ザイラスの圧倒的な力なら可能なんだよ...伝説の勇者と魔王が合わさった究極の王の力で敵を焼き滅ぼしていくんだ...」
ギガスは屈むとアラスの頭を軽くハンマーで殴る
「あのな?敵を作るのは簡単なんだよ...問題は作る側を消すんじゃなくて何で産まれたのかを知ることじゃないのか?理解もせずに焼き滅ぼす?
無知や無理解から生み出される暴力の方が酷い結果を生むことだってある...その割を一番に喰うのはオマエらではなく何も知らない人々だよ」
「そんなの...言い訳だ...」
「俺の好きだった女は矛盾だの二律背反だの堕落だの...人々の...どうしようもない部分を好きになって抱えて死んで行った...それを見て思ったんだよ...
この世にとっての不必要は何だ?退屈か?魔王か?勇者か?無理なSF設定か?違うんだよ...
無い方が良いと決めつけて調べもせずに消してしまおうとする横暴...これが一番...不必要に近いね」
ギガスは己の心であるハンマーを見て話す
「俺のハンマーだって誰かにとって必要になるかもしれない...その一心で生み出された武器...工具だ」
砕けた鎧を脱いだアラスは立ち上がると考える
(ギガス...コイツはタダの魔王なのかクズなのか...だとしても此処で殺すのは何か騎士道に反する気がしてならない...これは私のエゴなのか...)
アラスは鞘にセントカリバーを仕舞う
「ならオマエの正しさを見せてみろ...私が仲間になってオマエの盾となり...見定めてみせる」
《アラスが仲間になった!》
2人は何か良い感じに纏まったので熱い握手をした
新たなる能力に覚醒...ギガスの冒険は続く...
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