星空商店街復活大作戦!
「星空商店街」。わたしの住む町にある、みんなの憩いの場だ。立ち並ぶ店たちは、壁にヒビが入ってたり看板の色があせていたりする。そこが逆にエモいと思う。
でも活気がないのは問題みたいで、集会ではいつもそれが議題に上がっているんだそうだ。
「ミイカはなにかないかね。高校生の考えも聞いてみたい」
じいちゃんはおにぎりをラップから取り出しながら、わたしに尋ねてきた。
「ん〜。わふぁんない」
おにぎりをほおばりながら答える。ごくん。
「ていうか、この具おいしい〜! 梅としそと、チーズ? 合う〜!」
梅の酸っぱさをチーズのまろやかさが中和し、後味はしその香りですっきりとしている。いつも通り、お米も粒だっている。
「よかった。こんど店で出そうと思っているんだよ。若者にも気に入ってもらえるかもしれないと思ってね」
じいちゃんはすごい。昔からある軽食屋さんだけど、こうしてわたしたちの世代にウケるものがなにか、がんばって探っているんだ。商店街のにぎわいを取り戻したいから。
「よし。決めた」
「うん?」
「わたし、星空商店街のために一肌脱ぐよ!」
大口を叩いたものの、なんも思いつかない。
「レイミ〜、なんかないかな。優等生の意見も聞いてみたい」
「ミイカが自分で考えなきゃだめでしょ」
放課後。クーラーは切られたけど、まだ涼しい教室。レイミは読んでいる本から目を離さずに言った。もう。冷たいんだから。
「ていうか、なんの本呼んでるの?」
「宇宙開発基地の本。小学生向けだけど。こういう子どものためのもの、分かりやすい文章や構成を考えるのに役立つんだよね」
そんなの分析しながら読んでるのか。すごいな。
本の表紙に目をやる。真っ暗な宇宙。光る星。浮かぶ基地。そして宇宙服に身を包んだ宇宙飛行士。
「……そうだ! ひらめいたっ!」
「わっ。びっくりした。脅かさないでよね」
「ねね、レイミ。聞きたい? 聞きたいよね〜? 私の大発明!」
「はいはい。聞きたい聞きたい」
「ズバリ! 『宇宙大作戦』だよ〜!」
「はぁ……。なんかバカっぽそうなんだけど」
「え〜、ひっど〜い! まあまあ、聞いてみてくださいよ?」
「……粗が多すぎる」
「え〜」
「まず、資金源はどうするの」
「ん〜。わたしの貯金?」
「足りないよ。それに商店街のおじいちゃんおばあちゃんが、あんたの個人的な資産を切り詰めることを良しとするわけがないでしょう」
「む〜。良い案だと思ったのに」
「うん。アイデアはおもしろい」
レイミの眼鏡の奥の目が、笑った。
「こういうの私には難しいから。そこは尊敬してるよ。ミイカ」
「ちょっ! 急にデレられると照れる〜!」
自分のほほをおさえる。ちょっと熱い。
「でも、お金はほんとうにどーしよ?」
「募金しようか。この学校にはあの商店街に愛着のある子も少なくない。けっこう集まると思うよ」
「思ってたより大きい金額になったね……」
「う、うん……。良いことだけど……」
「でもま〜、これで憂いはなくなった! そうだよね?」
「そうね。次の段階に進もう」
「手芸屋のおばちゃんの進捗は?」
「再来週までに完成予定!」
「写真館のおじちゃんとの日程調整は?」
「済みました!」
「協力してくれるお店への説明は?」
「バッチリ!」
「そのほか、道具や材料の調達、パンフレットの作成……も、終わったよ」
「やった〜! 準備完了! 楽しみだね」
「うん。来月、がんばろう」
迎えたイベント当日!
「……めちゃくちゃ不安になってきた」
「あんたって昔からそうだよね。本番に弱いというか」
「だってぇ〜! レイミと違ってバカだから、わたしなんかのアイデアが上手くいくのかなって思うんだもん!」
コツン。おでこ同士が当たる。
「バカ。……ミイカの発想力は本物だよ。それに、私がその計画を密にした。ふたりで、足でもネットでも根回しした。インプレッションは多数」
手を握られる。指が絡む。
「大丈夫。成功は約束されてる」
「うん……」
「あの〜。ネットで見ておもしろそうだったんで来たんですけど。星空商店街ってここですか? この案内プランをお願いしたいんですが」
「はい! ご案内するピポパポ〜〜」
タコ型宇宙人の衣装のミイカは、来てくれたお客さんとともに特設テントから出ていった。……シュールだ。
星空商店街の名にちなみ、宇宙っぽい衣装でこの商店街の魅力を紹介する。望むお客さんには衣装も貸し出して、最後は写真館で記念撮影。
我が友ながら、なんて企画なんだ。スマホを確認。ローカルトレンド5位。かなり良い滑り出し。
ただ、これを一過性のバズにせず、商店街の活気を真に取り戻すためには、まだ次々と企画を立てなければ。それは大変な道のりだろう。でも、きっと大丈夫。
私とミイカ。ふたりは宇宙一のコンビだから。
……なんて、グレイ型宇宙人の姿で思っても格好つかないけれどね。
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