第18話 乱戦の渦 ―竜だらけの地獄絵図
戦況は、レオンたちだけで終わらなかった。
祭壇の封印が揺らぎ、黒塔の外に潜んでいた堕竜兵軍が一斉に暴走を始めたのだ。
黒雲を裂き、闇色の飛竜たちが群れをなして襲いかかる。
咆哮と炎で空が真っ赤に染まり、地響きが塔全体を震わせた。
「ちょ、ちょ、ちょっと待て!? 竜の大群とか聞いてないんですけど!?」
『聞いていなくてもやるしかあるまい』
「いや、心の準備があるかないかで全然違うからな!?」
紅蓮の竜槍を振り抜き、竜閃波を放つ。
空を裂く赤い閃光が、飛竜の群れをまとめて焼き払った。
「はぁ、はぁ……よし、一掃した!」
『主、左上から来るぞ』
「え、は!? もう!?」
左上から別の群れが突撃してくる。
さらに右からは二頭の飛竜が炎を吐き、真下では地竜が地面を破って飛び出した。
「上、下、右!? 三方向同時とかムリゲーすぎるんですけど!?」
『なに、あと四方向ある』
「増やすなぁぁぁぁッ!!!」
飛竜を焼き払い、地竜を吹き飛ばしても、次々と堕竜兵たちが押し寄せる。
大空も大地も竜で埋まり、敵味方の区別がつかなくなりそうなほどのカオス状態だ。
「これさ、絶対キリないよな!?」
『無限湧きかもしれん』
「ゲームだったら最悪なパターンじゃねぇかッ!」
そこへ――。
轟音とともに空が裂けた。
黒雲を切り裂き、銀白の翼を広げた純血竜たちが一斉に舞い降りる。
「おおおおおおおお!? 終わった……」
「……竜の増援が来た……!?」
『安心しろ。味方だ』
「いやいやいや、見た目じゃわかんねぇよ!? どっちも竜なんだから!?」
その最前列に立つのは――竜霊騎士アルヴェイン。
銀白の鎧をまとい、神槍を掲げながら声を響かせる。
「レオン、ヴァルザード! 我らも参戦する! シリウスを封じるぞ!」
「アルヴェイン! ナイスタイミング! いやマジで助かる!」
「同族と人間の共鳴……その真価、見せてもらおうか!」
純血竜たちが放つ銀白の竜炎が、堕竜兵軍を一掃していく。
敵竜が次々と燃え落ち、空がようやく見え始めた。
「おおおお、これぞ逆転劇!」
『調子に乗るな、主。敵はまだシリウスだ』
「わかってる! でもこういうときテンション上がるのは人間の性なんだよ!」
ヴァルが言うようように、安心するのは早かった。
黒塔全体が不気味な音を立ててひび割れ、壁から黒い瘴気が噴き出し始めたのだ。
「なんかヤバい音してない!?」
『主……祭壇を見ろ』
祭壇の鱗片が、脈動するように黒い光を放っている。
「……これ、封印が解けかけてるってこと?」
『ああ。このままでは“竜王ティアマト”が復活する』
「はぁぁぁ!? それ、もっと早く言って!?」
『今、言った』
「いやだから遅いんだよ!!!」
レオンは竜槍を握り直し、翼を広げる。
隣ではヴァルザードが竜炎を纏い、身体全体が焔のように燃えている。
「シリウスを止めるしかないってことだな!」
「フフ……来い、レオン。今度こそ貴様の魂を喰らい尽くす!」
「いや食うなよ!? 俺、人間食じゃないんだけど!?」
『主、ツッコむ暇があったら槍を構えろ』
「構えてるよ! ツッコミと攻撃は同時進行なんだよ!」
紅蓮の竜炎と漆黒の竜翼が再びぶつかり合う。
黒塔全体が揺れ、天井が崩れ、戦場は混沌の渦に飲み込まれていく。
「よーし、第二ラウンドだシリウス!」
「フハハハハ! 我こそが竜を超えし存在……竜魔王シリウスだ!」
「そんな中二ネームで勝てるかぁぁぁぁッ!!!」
――黒塔決戦、最終局面へ。
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