第2話  モグラ逃げる

「へ?」


目の前には少し変わった家が並ぶ街が広がっており。


私は賑やかなモンスターの街を目にしながらそんな声を漏らした。



――――――――――――――――――――――――――


「あばばばばばばばば。」

 あばばばばばばばば。


なっなんでへんてこ都市に!?


城塞都市じょうさいとしユーニス……基本的にプレイヤーがゲームを始めるとこの場所から始まる。規模としては大よりの中規模程度の大きさだが、リワイルドでは珍しく基本全ての種族の出入りを許可している。

プレイヤーからは、初見の印象でドン引きされたことから、


・へんてこ都市・魔界・地獄の動物園・蠱毒こどく・あたおか城etc


とよばれ掲示板で大人気()になっている。





なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!?


本来ドラゴン系統を選んだら街の外から始まるはずなのだが、なぜかユーニスに飛ばされた私はいきなりのことに冷静になることができなくなってしまった。


「ヒッ…は…は…は…」


頭が真っ白になり私の意識は恐怖に支配されてしまった。普通の人ならそんなことにはならないはずだが。

「アッアッアッ」

私が今いる広間は大きな噴水が中央にありそこから円形状に広がっている。問題なのは、プレイヤーの開始地点とリスポーンを兼任していることだろうか。

「ウッ…ァ」

現在このゲームは、発売してから1週間程の時間が経過しているが、多くのプレイヤーは新しい身体の使い方に四苦八苦しくはっくしており殆どはまだ別の街に行くことすらできていない。

「a…a…」

私のように新しくゲームを始める人も少なくない。

結果この広場にはありえないほど多くのプレイヤーモンスターが集まっていた。


サーバーを分けて人を分散させているにも関わらずこんなにも多くの人がいるのは、いかにこのゲームが話題になっているか分かるがそれはともかく。


結果としては。


「ひぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」


私は逃走という選択肢をとった。


もちろん周りにいるのは、全てがモンスターだ。

人間とは似ても似つかない姿のものばかり、人形でもゴブリンやオークなどが数匹いるだけだ。


だが1度冷静な判断を失ったら取り戻すのは簡単ではない。


「やだ…」


「確か攻略では東の森に最初は」


「やだ……」


「まだうちらじゃ西は難しかったなとりあえず」


「やだ………」


「あの城まだ誰も入れていないんだっけ?入ると捕ま」


「やだ…………………」


聞こえてくる声は焦りと焦燥を積み重ね私の心に重りを乗せていく。



お前は―――嘘つき嘘つき嘘簡単つき

「違う…」

最低だよ―――嘘つき嘘つき嘘つき

「違う」

嘘つきメ嘘つき嘘つき嘘つき――――嘘つき嘘つき嘘つき

「違う!違う!違うッ!!!」


《警告⚠。精神に多大な負荷がかかっています。ログアウトを推奨します。》

「だまれ!!!!」


嘘つき…嘘つき…ひそひそと聴こえてくる声と同時にそんな声が頭に響く。


もはや存在しない声に囚われていた私は警告の音声ごとその声を振り払う。


「うぅ…はっ…はっ」


まさしく穴があったら入りたい状況だった。言葉の意味は間違っているが実際1人になりたかった。


ログアウトすればいいだけだがもうそんな判断はできない、だから走った。


異様に足が遅く感じたがその分早く足を動かした。

実際モグラとしては当然だが、しっかり4足で走れているし今の状況では頑張っている方だろう。


広場を飛び出して目的地もなくただ迷走していると大きな門が現れた。その下には甲冑をつけ腰に剣を刺したスケルトン2匹が周りを警戒している様子だった。


そしてまっすぐに突っ込んでくる1匹のモンスターに気づいた…そうヒズハだ。


「おい!そこのお前!止まれ!」

「ここから先は立ち入り禁止だ!止まらなければ直ちに攻撃する!」


「はっ…はっ…嫌っ!」


確かにモグラは耳がいいらしいが遠くの話し声すら聞こえてしまうので私は幻聴ごと本当の声も無視していたためスケルトン達も素通りしようとするが…


「低級モンスターが!」

 

1匹が腰に刺した剣を抜いてこちらに振りかぶる。剣はボロボロでまるで整備されてはいなさそうだが当たったら今のレベル1.では大ダメージになるだろう。

私はその剣にギリギリで気づき反射的に


「っ!」


思いっきり爪で叩いた。その爪は半円を描いて剣の横腹に突き刺さると。


「なに!?」

「えっ!?」

剣がガラスのように砕けてしまった


あまりにボロボロだったにせよこのような砕け方をして私は冷静さを取り戻しながら疑問に戻って気づく。


(もしかしたらこの爪にはちょっとだけ破壊効果があるのかも)


・破壊効果…建物や地形や武具等に効果があり大きく損傷させて破壊することができる。地面を掘るように特化したモグラの爪には低い硬度なら何でも破壊出来特に地形に効果の高い

地形破壊効果,中 破壊効果.小

が付いている。また建物のみ、武具のみと特定の物にのみ破壊効果が乗るものも存在する。



「…てッあ!?」

「貴様アアア!!!」



私が考えていたら剣を砕かれて頭蓋骨を真っ赤にしたスケルトンが柄だけの剣で殴りかかってきた。

私はそれを走って逃げる。


「ぴぃ!」

「まてええええ!」


さっきと比べたら冷静にはなったが考える暇もなくスケルトンが追いかけてくる。

さっき暴走してしまったことはしっかり分かっているが、自分が今どこにいるかすら分からない。


たださっき何かの門を通ったことはわかったので辺りを見回してみると、目の前に小さいが城のようなものが見えた。


「何か変なとこ来ちゃったぁぁァァ……」

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ゲームでも引きこもりな暴走もぐら!人外VRMMO ヲタク将軍 @otaku1412

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