第8話 公爵領へ
「坊ちゃん! もうすぐ公爵領が見えるはずです」
少し寝てたようだ。さすがに・・馬車の旅も大変だ。
昨夜は馬車の給水場で野営だった。
エルザが、冒険者5人の分も一緒に用意してくれたので、みんなで同じものを食べた。
そういえば、伯爵領を出る日の朝から台所に入り浸って何かやっていたけど、それか?
いろいろ作ってくれたようだ。野菜とオーク肉のサンドイッチ、それにスープまで。スープは、なんと・・鍋ごと鞄に収納してたらしい。そういうこともできるんだな。
サンドイッチはたくさんあったから、冒険者のみなさんも一人2個で良かったらしい。スープも、器に2杯ずつはあったな。
僕やエルザはサンドイッチは一個で十分だった。
食後は、皆さんで自分の使った器などを水で綺麗に汚れを流して、温風乾燥させてからエルザに返却していた。
ここは水場だし、温風乾燥の魔法も使える人がいるし、問題は無かった。
朝もエルザの作り置きのものだったけど、今回はオークと野菜の炒めたもの、それが大鍋ごと鞄に入っていた。おかわりで3杯も食べてた人もいたくらい好評だった。
それで、お腹もふくれたせいか、少し眠っていたようだ。
向かいのエルザは、しっかり起きていたらしい。
「良かったです、料理が足りて、みなさん、たくさん食べるんですね」
「うん、美味しかったよ、ありがとう、エルザ」
「はい、私の仕事ですから・・・はい!」
「しかし、よく鍋ごと鞄に収納したよね?」
「ええ、時間も無かったし、鍋も持ってきてしまいましたが、叱られないですよね?」
「そうだね、必要なら後で返せば良いんじゃない?」
「ふふふ、そうしましょう!」
まだ公爵領の外壁は見えてこないけど、もうすぐ到着だ、今日中には着けるよ・・・
「坊ちゃん! ちょっと面倒ごとかもしれない、馬車から出ないでくださいよ~」
何だろうね? 馬車の速度が落ちて・・止まった。
出るな!って言われたし、窓から顔を出して覗いてみた。
前方に商人の荷馬車が道を逸れて止まっていて、そこに人が数人群がっている。
盗賊? 荷馬車が襲われてる?
走っていった4人が賊と対戦してるのが見える。
ばしばし斬り倒してるよ。
事態は収まったようで、こちらの馬車も動き出した。
近くで倒れている盗賊達を見てるけど・・・あれ? 斬られていたよな? 全然血が出ていない。
「ふふふ、坊ちゃん? こいつらまだ生きてるからね。気絶して寝てるだけだから」
「そうなんですね」
ミドリさんが不思議な顔をしてた僕に説明してくれた。
「そう、こんな奴らだけど、人間だからね、しっかり罰を受けてもらうのが筋ってものよね」
「皆さんはいつも?そうしてるんですか?」
「そうね、おおむねそうね。時にそうでないことも・・・無いか!~~」
「ふ~~ん」
「生かして捕まえれば、鉱山労働とかで働かせられるでしょ? ちゃんと罰を受けてもらうのよ」
「気絶って?」
「うん? 剣なら刃の付いてない方で打ち込んだり、魔法なら催眠なんてのもあるしね・・・」
「ふ~ん? 催眠って!良いですね~ ミドリさんは使えるの?」
「使えるよ、これよ、これ!」 ・・って、右手の中指の指輪を見せてくれてる。
「魔道具ですか?」
「そうよ、どこだったな、ダンジョンでお宝として出てきたものを使ってるのよ、便利だから」
「ふ~~ん」 ・・と僕があまりにも食い入るようにじっと見てたせいか・・
「なに、エリス様はこういうのにも興味があるの?」
「はい!」
「即答ね! 良いわよ、見せてあげる。でも、これは、あげませんからね」
「はい、取りません! 見せてください」
ミドリさんが、その指輪を外して僕に渡してくれた。
ああ~~これ凄い魔力を感じる、そうか!~ 今使ったばかりで残滓が残ってる?
<鑑定>では、
*催眠の指輪
・サイズ自動調整、ミスリル製
ありがとう。<創造>で、勝手に複製されてる。僕の新しい魔法になった。
ちゃんと、指輪をお返ししておきました。
「ありがとうございました!」
「本当に、こういうの好きなのね?~」
*魔法追加:催眠
そのあとは、皆さんで道をはずれてこけている荷馬車を道に戻して・・・こういうのはさすがに男仕事です。それに、身体強化や剛腕剛力だな。
リーダーのダービンさんが商人さんと話していたけど、商人さんはそのまま公爵領へ向かって走り去っていった。急いでいるんだな。商人だし・・・
倒れて眠ってる盗賊が6人。
既に後ろ手に縛られて武装も解除されてる。
「坊ちゃん、馬車の荷台に乗せても良いでしょうか?」
「うん、警備兵に引き渡すんだね?」
「ええ、そうしようと思って」
「僕はそれで良いけど、馬は? 大丈夫? 重いよ?」
「ええ、なので、少しゆっくり走らせますので・・・」
つまり入門が遅れるってことだよな。全然構いません。
内緒で馬にはヒールをかけてあげて、丸薬を一粒、口の中にいれてあげた。
苦くて蹴とばされる?って思ったけど、平気だった。餌の人参の中に丸薬を詰めたから。
僕らも馬車を進める。
しばらくして・・・遠くに公爵領の外を囲う石垣が見えてきた。
門をくぐって公爵領に入った。
<天竜の輝き>の皆さんが門のところにある警備隊詰所に入っていって手続きを済ませて出てきた。同時に警備隊が数名出てきて、馬車の荷台に縛り付けてきた6人をおろしている。
「では、<天竜の輝き>のみなさん、ご苦労様でした。護衛はここより我々が交代させてもらう。
君らへの報酬はこの依頼完了証明をもっていけば冒険者ギルドにて支払ってもらえる。
なお、盗賊の件も、追って冒険者ギルドに連絡をいれておく。」
「はい、ご丁寧に、どうも。こちらこそありがとうございました。馬車の中に挨拶をしたいのだが・・・良いか?」
「はい、どうぞ」
なんだろう、<天竜の輝き>のメンバーと、警備隊員、あれは女性だな、が一緒に僕のところへ向かってる。
「エリス坊ちゃま、俺らはここまでで護衛依頼を終わります、どうもお世話になりました。
エリス様も数年後かな? もし冒険者に興味がおありでしたら、冒険者ギルドで我々を呼びつけてください。我々はここ、公爵領を拠点にしてやっておりますので・・・」
「うん、こちらこそ、ありがとう。いろいろ良い経験になりました。ダービンさん、エドミンさん、サムイさん、ミドリさん、リビスさん、お世話になりました。ではまた、どこかで!」
「「はい」」「「ああ」」「「おう!」」
皆さんが後ろ姿になって遠ざかっていってしまった。
「エリス様ですね。私は、ブルーム公爵領警備隊副長のルーデンスと申します。ここからは我々がお供してエザベラ様のところまでご案内させていただきます」
「はい、エリスです、こちらは侍女のエルザです。ルーデンスさん、宜しくお願いします」
「はい、もちろんです!では行きましょう!」
*ルーデンス ブルーム公爵領警備隊副長
いつの間にか御者は警備隊の人に変わっていた。
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