4.アプデのお知らせが来てるよ!

(洞窟の中、声が少し反響している)


 //SE 雨の音


(ちょっと暇そうな声)

「洞窟があったのはいいけど……しばらく止まなそうだね、雨」


「スタミナの減りも早くなるし……視界も限られるし……クエスト終わった帰りで良かったぁ」


「そろそろアップデートだし、出来れば街に戻っておきたかったけど……」


(少しだけ楽しそうに)

「でも、変わったところで見るアップデート情報も、遠足みたいでいいかもね!」


(返事が薄いので少し不満げ)

「……プレイヤーさーん、何も感じてない頷きやめてー」


「いや、わかるよ? だって今回のアップデート情報、多分妖精周りの修正だもんね」


「プレイヤーさんには全然関係ない部分だし」


 //SE 手を叩く音


「でも、それは縛りプレイをしているあなたが悪いのでっ! 私は普段とおなじテンションで読むから、覚悟しておいてね!」


(右耳に移動)

「と、言うわけで、右肩失礼するよー」


「お知らせ通知が来るまでは、のんびり雨の音でも聞いてよっか」


「濡れるのはあんまり得意じゃないけれど、雨の音自体は好きだなぁ」


「プレイヤーさんはどう? 好き?」


(ちょっと上機嫌に)

「そっかぁ……ふふっ」


「初心者卒業してからも、結構時間が経ったけど……まだ、プレイヤーさんのことあんまり知ってる訳じゃないから」


(はにかんだ様子で)

「何を思ってたか知れるのって、結構嬉しいかも!」


「……な、なんか今私、結構恥ずかしいこと言わなかった?」


「まあ、いっか。他にも色々聞いてみていい? 好きな食べ物とか」


「私は前食べたあの……ちょっと辛めで、スタミナの上限が一時的に増えるヤツ……名前、なんだっけ?」


「むぅ……思い出せない……まあとにかく、あの料理が好きかな! ちゃんと食べた料理のレシピは纏めてあるから、後で作ってあげるね!」


「それでプレイヤーさんは──」


 //SE メールの通知音


(被せ気味に)

「わっ」


「運営からのメールかな? 早速開いてみようよ! というか私が開くんだけど」


 //SE メニューのタップ音

 //SE メッセージの表示音


「ふむふむ……アップデートのお知らせ! 妖精のステータス周りに対する上方修正! だって!」


(ちょっと呆れた声)

「……反応が薄いなぁ、せっかく私が読み上げてるのに」


「わっ、急にシャキッとした……こほん、続きを読むね」


「前は中級妖精のスキルに関するアップデートだったけど、今回はどうかな……って」


「プレイヤーさん! ここ!」


「チュートリアル妖精に対する能力値の上方修正って書いてるよ!」


(少し慌てた、嬉しそうな声)

「ざっくり読みあげるね! えっと……まず能力値、全体的には低めのままだけど、得意分野に関しては下級妖精の得意分野と同じぐらいのステータスになるって!」


「それと、中級妖精みたいにスキルが1個付与されるみたい! 何がつくかは選べないけど、特別に妖精強化の時に引き継がれるんだって!」


「うん、うん……うーん……なるほど、えーっと……」


「個人的な感想で、纏めてもいい?」


(頷かれ、正面へ)

「こほん、んんっ」


(楽しそうに)

「チュートリアル妖精としては、満点の強化だと思う! 序盤の戦闘である程度戦いやすくなるし、スキルが引き継がれるから。中級妖精を仲間にする時も、システムが増えて混乱する、とか無くなるよね!」


(間を置いて、励ますような口調)

「まあ問題は、プレイヤーさんがチュートリアル以外で私を使ってることなんだけども……」


「えっと、まあつまり……そんなに変わらないかなーって……引き続き、冒険の相棒には不向きな性能です! まあ、それが普通なんだけど!」


 //SE プレイヤーのアバターが崩れ落ちる音


「そ、そんなに落ち込まなくても!?」


「……いや、気持ちはわかるかな……上げて落とされる方がこう……心に来るよね……」


 //SE 雨音が強くなる


「……わあ、雨も泣いてる……」


「プ、プレイヤーさーん……? 立ち直れそうですかー……?」


(呟き)

「うーん、どうしよう……可哀想だし、励ましてあげた方がいいよね……よし」


(耳元、囁くように)

「……プレイヤーさんっ」


「確かに、あんまり大きな強化が来なかったのは残念だけど……それでも、これは立派な一歩だよ!」


「ほら、例えば付くスキル……距離が近いと自動回復とかなら、ステータスは気にならないし……近くで冒険しやすいし……」


「今まで以上に頑張るから、元気だして!」


「それに、その……そんなに落ち込むほど、私のことを好きでいてくれるのは……やっぱりちょっと、嬉しいなー、なんて」


「私もまあ、その」


(小さな声で)

「プレイヤーさんのことは、好きだから……」


 //SE ピピッという通知音


(ちょっと離れた慌てた様子)

「あっ、心拍数が! 強制ログアウトの数値に!」


「えっと、まだアップデートで上方修正が来ることもあるだろうから、あんまり気を落とさないでね!」


「じゃあ、その! また明日!」


 //SE ログアウトの音

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