第16話
学食に行くと皆の視線がある場所に向かっていることに気づいた。その視線の先には、真希や栞奈のグループが居た。確かに全員タイプは違うがキレイどころが集まっているのに違いないから目立つのだろう。
真希の表情からすると注目されるのがものすごく嫌なんだろうけど。栞奈やその友人たちは慣れているのかまったく意に介さない感じ。逆に乃木さんは見たことないくらいに縮こまっているご様子。
それ原因で変な軋轢とか出なきゃいいけど。
「(やっぱりあいつらは水と油みたいなもんだよな。間に何か挟まないと上手いこと混じらないんだろうな)」
それでも仲良くしようって意思さえあれば時間がかかったとしてもいい友人関係は結べるに違いないと思う。そうであってもらいたいって俺の希望もあるけどね。
「高嶋、オレあそこにまじりたい」
「は? 行きたけれアッシーだけで行ってくりゃいいだろ? 俺は一人で食うから」
「そんな事言うなよ? な? オレ、なんとなくだけどおまえの妹ちゃん苦手なんだよな。でもよっちちゃんとは仲良くしたいし……」
「……はぁ。メンドクサ」
真希のこと苦手とか言われるのは心外だけど、まああいつはとっつきにくい性格だと思うので仕方ないかとも思う。あいつらが何の話をしているかも気になるから交じるのも悪くないかな。
「よっ、ここ空いているか?」
「ああ、雅史か。いいよ、別に。となりどーぞ」
誰に声を掛けるかで一瞬迷ったけど、結局真希に声をかけた。真希の隣の席が空いていたのもちょうどよかったし。
「おじゃまします。えっと、乃木さんとは話すの初めてだよね。いつも真希がお世話になってます」
「あ、え。えっと、真希ちゃんには私のほうがお世話になってる感じなので、こちらこそお世話になってます、です」
「なに同級生同士でかたっくるしい挨拶しているの? 雅史も保護者みたいだしやめてよ」
「それもそっか。じゃ、えっと、優花さんよろしくな」
「はい、じゃなくて、うん。よろしくね、ま、まさしさん」
間に真希を挟んで乃木さんと挨拶したんだけど、堅苦しくするなっていうから彼女のこと名前で呼んでみたら、テーブルのしたで真希に太ももつねられたよ。もちろん顔には出していない。ポーカーフェイスは得意だぜ。
アッシーも真希と優花さんに挨拶していたけど、それもそこそこによっちちゃんと話すことに夢中なご様子。これが実るかどうか俺にはわからないから頑張れとしか言えないけどな。
栞奈は真希の眼の前に座ってカツ丼の大盛りを食らっている。
「毎度だけど、栞奈ってよく食うよな」
「悪い?」
「うんにゃ、美味しそうによく食う姿は好感持てるよ」
「あんがと」
栞奈はこれでもテニス部に所属している運動系女子なんだよな。うちの学校、あまり強豪って感じじゃないから部活動事態は緩いみたいなんだけど。
「一応、体力つけておかないとやる時に力が出ないからね」
「お、流石、部活にも力いれるんだ」
「半端も良くないからね。やるだけやってだめならスパッと諦めるのもいいかなって思っている」
「ふーん。頑張れよ」
栞奈はシングルスの選手。中学生のときは軟式テニスでいいところまで行ったなんて話は聞いたことある。高校に入ってから硬式になって伸び悩んでいるらしいなんて話もちらほら。
「マサシは何かやらないの? バスケ得意なんでしょ。鮫島センセが3X3の同好会立ち上げるなんて話を聞いたけど」
「あー、バスケはもういいや。本気でやるとまだ脚が痛むし。それよか俺は今月からバイトを始めるつもりなんだ」
「そーいや、脚が悪いって言っていたね。で、バイトって何やるつもりなの? カフェの店員さんとか?」
「まさか! 俺、接客とか無理だから。倉庫のピッキングとかやろうと思ってる。そこそこ力あるし、ただ歩き回るのは別に苦じゃないからな」
自宅から自転車で20分弱のところに倉庫街があって、そこの一つで学生バイトを募集しているのを見かけたんだよな。黙々と仕事するのって俺には合っていると思う。
「雅史がそこでバイトするならわたしもやろうかな?」
「真希もやるのか? すげー力はいらないみたいだけど、一応肉体労働っぽいぞ」
「わたしもそこまでひ弱じゃないし。雅史の面接の日わたしも行く」
「ま、おまえも接客とか無理そうだから多分合っているとは思うけどな。無理はすんなよ」
同じところでバイトなら真希が変なことに巻き込まれることもないだろうし、目の届かない場所に行くわけじゃないから俺としても安心なんだけどさ。
「おまえら仲いいな。確か去年辺りまではすげー仲悪かったんじゃないのか?」
「まあ、アッシーも知っての通りいろいろあったから蟠りもとれたっつーか」
「そっか。悪い、変なこと思い出させちゃったな」
「いや別に。そーゆーの俺たち乗り越えたし。まじヘーキだから気にしないでくれ」
100パー何も思わないことは無いなんてことはないけど、お義父さんのことは俺も真希も受け入れているのでいちいち凹んだりはしない。
「雅史、唐揚げ食べる? ちょっと多いから食べていいよ」
「まじで? もらう、もらう」
アッシーの話をぶった切るように真希が自分の昼食のおかずの唐揚げに話題を変えていった。これも真希の優しさの一つ。何の憂いもなくアッシーの失言は消えていった。
「はい、あーん」
「ん? あーん」
みんなが俺等を見てカチって固まった。
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