第15話
昨日は小さいカップなのに店で一番高いというアイスクリームを献上することで真希には機嫌を直してもらった。ただ「許したわけじゃないからね」とは付け加えられたけどさ。
今朝の通学はいつも以上に真希が俺にピッタリとくっついての登校となっている。電車の中ではつり革に掴まらないで俺の腕にずっと掴まっていたくらい。いつもより今日は車内が混んでいたからかも知れないが。
「なあ、いつまで掴まえてるつもりなんだ?」
「いいじゃない。嫌なの?」
真希は電車を降りても俺の腕を取ったまま離そうとしない。兄妹で仲良しアピールすれば真希に変なムシは付かないで済むかも知れないがこれはこれでやや恥ずかしい。
「ブラコンだと思われてしまうかもしれんぞ?」
「何がだめなの」
うーむ。話にならないし、俺としても恥ずかしいのと歩きにくいのが少しあるだけなので真希の好きにさせるのもありっちゃありかも知れないと思う。甘えたい時期にお父さんにも甘えられなかったからその反動かも知れないと感じたんだ。
学校までもう少しというところで顔見知りに会ってしまう。まあ、同じ学校に向かっているのだから会ってしまうのも仕方ないんだけどさ。
「おはよう、マサシ」
「よ、栞奈」
「妹ちゃんもおはよう」
「……」
真希は栞奈のことをじっと睨むだけで何も挨拶しない。人見知りかよ? 人見知りだったかもしれんな。栞奈も気にしていないようなのでスルーすることに決めた。トラブル回避の鉄則だよな?
「マサシ、右空いているでしょ? ウチがもらっておくよ」
「うわっ、栞奈。なにするんだよ!?」
栞奈は真希が掴んでいる左腕ではなくて空いていた右腕に真希以上に掴んで、むしろ抱きついて来た。栞奈はある方ではないがない方でもないので柔らかいアレがアレしてしまい驚いた。
「同じ学級委員なんだからこれくらいは常識じゃない?」
「お前の常識どうなってんだよ? おい、真希! なんでお前まで抱きついてくるんだよ? 歩けないだろっ」
さっきまで左腕を軽く掴んでいただけの真希までも抱きついてきた。つっか抱きつく必要性とかその意味とかあるの? え? 俺からかわれているの? いぢめられているの?
「その女だけずるい」
「妹ちゃんこそずるい」
「イミフ……。もういいからいっせーのせっで二人とも離れてくれ。さすがにこれじゃ歩けないし、マジ暑苦しい。終いにゃ俺も怒るよ?」
学校の眼の前でこんなことされてはいい笑い者になってしまう。俺は有名人になりたいとは思っていないし、残りの高校生活も平穏無事に過ごしたいんだよ。
二人も俺が本気だって分かってくれたようで、二人声を合わせ「いっせーのせっ」で俺のことを開放してくれた。
「よーし、スッキリした。お前らさ、二人とも客観的に見て美少女の部類なんだからそこら辺は認識しておけよな? 俺みたいなのと変な噂とか立てられたらダメージだぞ。もう二度とこんなことしないようにな」
「……」
「……」
二人とも少しモジモジしながら頬を赤らめている。
「ん? 何か変なこと言ったか?」
「ううん、雅史だもんね」
「あーあーマサシだよなぁ」
何故か突然に息の合う真希と栞奈。二人して顔を見合わせたらいきなり笑いあって二人で校門の方に歩いていってしまう。俺のことは放おって置いてね。一人残された俺は周囲からの奇異の目を一身に背負って慌てて校門を抜けていく。
「なんなんだよ。朝っぱらから意味わかんねーな」
昼休みになると真希のもとに栞奈とその友だち――よっちとミキりん――が寄っていって何か話し込んでいる。どうやら一緒に学食に向かうようだ。そこには真希ともともと仲の良い乃木優花も一緒のよう。
真希と乃木さんは似たような大人しげな雰囲気だが、栞奈と愉快な仲間たちはちょっと陽キャな雰囲気なのでどうにも異質に見えてしまう。まあ、真希の見聞を広めるのにはちょうどいいのかも知れないけど。
「それにしても今朝までは何かを張り合うように仲が悪そうだったのに、一体何きっかけで仲良くなったんだか……。まったく女ってやつはよくわからん」
「新島にも妹ちゃんにもフラれたか?」
「? 何の話だ。アッシーも学食だろ?」
「ああ。よっちちゃんを誘おうと思ったら逃げられたからおまえで我慢しておく」
「なにそれ、気持ち悪い。そういうの俺は間に合っているから」
ちな、堺町はいつも部活の連中と一緒に昼をとってそのまま昼練を毎日飽きもせずにやっているので一緒じゃない。
部活っていいよな。なんか青春してるって感じがヒシヒシあるもんな。たまに高校でも部活を続ければ良かったなんて思うこともあるが、中坊の頃怪我もしているし気にしてもしょうがないなとは思ってる。
ついでに俺はついこの間までカテイノジジョウが複雑だったので部活とかどうせ無理だったし。なんで、以前にも考えていたがなんかいろいろと安定したら予定通りアルバイトとかやってみたいと思っている。
想定外に今のところぜんぜん安定する気がしないけどよ……。
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