第10話 発端 その十
トーブル隊長と部下の言葉を聞いたダン先生は、二人の顔をちらりと見た後は二人の事を無視する形でディアナとの会話に集中していく。
「先生、それはどのような方法なのですか?」
「……その前に確認だ、ディアナ。その方法を教えたら、お前はそれをやるのか?」
「やります」
「それがどんな方法でもか?」
「ええ、やります」
「その方法をやった結果、お前が死ぬ事になってもか?」
「それでここにいる皆が助かるなら、私は構いません」
このディアナの返答にダン先生は頭を抱える。
そして心の中で呟いた。
(……全て即答か……やれやれだな……)
ダン先生は再度大きな溜め息を吐くと、ディアナに告げる。
「……わかった。お前がそこまで言うなら始めていくぞ?」
「……え? あの、先生?」
ダン先生はこのようにディアナへ話すと、ディアナの目の前へしゃがみ込む。
そうして右手でディアナの顔に触れ、左手をディアナの耳のすぐ近くで止めていく。
続けてダン先生は困惑するディアナの目をまっすぐに見つめる。
「大丈夫。さあ、私の目を見て」
「……は、はい……」
「よし、今から三つ数えると貴女の記憶が戻ります。いきますよ? 三、二、一、はい!」
ダン先生はそう言ったと同時に、ディアナの耳のすぐ近くに止めていた左手の指を鳴らしていく。
その瞬間、ディアナは一度ビクッ! と体を震わせる。
だがその後は何も言わずに、一点を見つめたままピクリとも動かなくなった。
「……さて、催眠術は解けたかな?」
「さ、催眠術⁉」
「え⁉ なんで⁉」
ダン先生の発言を聞いたトーブル隊長と部下が大声を出していく。
そんなトーブル隊長と部下の絶叫も完全に無視したダン先生が、ディアナの様子を確かめていく。
そうして一度頷くと、ディアナに問い掛ける。
「……私の事がわかりますか? 『テイル』様?」
「……ええ、大丈夫です。全てわかります、ダン先生」
ダン先生の『テイル様』、という問い掛けに全てわかると返答していったディアナ。
そんなディアナにダン先生はこれ以上は無い、というほど申し訳なさそうな表情で言葉を続けていく。
「……申し訳ございません、姫様……」
「構いませんよ、ダン先生。むしろ感謝しているぐらいです」
テイルと呼ばれ、続けて姫様とも呼ばれたディアナが、平伏しながら謝るダン先生へ穏やかに語り掛ける。
するとこのやり取りを聞いていたトーブル隊長が、若干狼狽えながら二人の会話に口を挟む。
「ひ、姫様? 姫様って、まさかあの姫様ですか……?」
「……貴方の言う姫様が、どの姫様なのかがわからないので自己紹介をします。私の名前はテイル・フェリアシティです。以後、宜しくお願いいたします」
この自己紹介を聞いた瞬間、トーブル隊長の時間が止まった。
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