第9話 発端 その九
トーブル隊長と部下の話し合いを隣で聞いていたダン先生は、部下の心が折れたと判断していく。
その後でダン先生はディアナにほんの一瞬だけ目を向けると、すぐにディアナから目を離し、一人で静かに何かを考え始める。
(……絶望的な状況か……確かにそうだ。だが私はこの状況を打開する方法を知っている……しかし、その方法を使ってしまっても良い物なのか……)
ダン先生はここまで考えると、出来る限りディアナに気付かれないようにディアナへ目を向けていく。
そうして再びディアナを一瞬だけ見たダン先生は、また考えに集中していった。
(……あの方なら、今の状況ならば一切迷う事無くこの場の全員を救う為の決断を下すだろう。しかしそれは、平穏無事な生活をしている今のディアナの幸せを奪い去ってしまう、という事だ……簡単には決められん……だがもう残された時間も少ない……どうする、ダン・ジャムロック……どのような決断を下せばいい……⁉)
こうしてダン先生が迷いを深めていく中、ダン先生の視線に気付いていたディアナが、ダン先生の手を取りながら口を開く。
「……ダン先生」
「……うん? ディアナ? どうしたんだ、ディアナ? 怖いのか?」
「いいえ、違います。ダン先生、何か私に話したい事があるのではないですか?」
「……へ?」
「違いますか?」
「……いや、ディアナに話したい事は、今は無いぞ」
「……そうですか……ですがダン先生」
「……何だ?」
「もう、時間が無いかもしれないのですよ?」
「……」
「お願いします、ダン先生。何か、今のこの状況をなんとかする方法があるのなら、その方法を教えてください」
「……え?」
「……なに?」
ディアナとダン先生のやり取りが耳に入っていたトーブル隊長と部下が、同時に変な声を上げていく。
そんなトーブル隊長と部下の反応を無視して、ディアナとダン先生は話を続けていった。
「……ディアナ……」
「先生お願いします。このままでは皆死んでしまいます。死んでしまったら全てが終わってしまいます。ですから、ダン先生!」
このディアナの言葉を聞いたダン先生は、大きな溜め息を一回だけ吐くと、観念したように口を開いていく。
「……一つだけ……たった一つだけだが、今のこの状況を打開する方法がある」
「……え?」
「い、いや、冗談でしょう? 誰がどんな事をしてもこの状況をどうにかするのは不可能……」
ダン先生がディアナへ伝えた言葉に、ディアナよりも先にトーブル隊長と部下が反応していった。
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