第31話 お菓子の部屋 肆

「なんだってこんなタイミングで君の顔を見なきゃいけないんだい」


 僕は初めて少年に意地悪な事を言った。


「君にしては珍しい事を言いますね」


 どうやら少年は機嫌が良いらしく、手元には山のような菓子が皿に盛られていた。


 いつ見ても思うが少年はいつこのカロリーを消費しているのかは謎であった。


「そんな事考えてるのかい?前にも言ったが僕の姿は仮の姿なんだからね。もし僕が女の子に見えていたら失礼だよ」


 また少年は僕の頭の中を読んだようだが、僕にとっては少年にしか見えないのだからどうしょうもない。


「それにしても今回はもう少し旅を続けたかったな」


「君がそう思った所で旅は終わりを迎える物なんだよ。だから、僕を責めてもしょうがないよ」


 少年はカヌレを口に放り込みながら喋っている。器用な物である。


「今回の旅で君は愛ってやつを知った。そのおかげで、預かっていたアイツが目を覚ましたよ」


 その知らせに僕は心からの安心感を感じた。僕を進むように急かしながらも離れられないと感じていたアイツが目覚めた。僕はキョロキョロ辺りを見渡した。


「どこにいるんだ?」


「ここだよ」


 そう言うと少年は小さな包をどこからか取り出し、僕の方に向かって、ゆっくり宙を滑らせてくれた。それは僕の腕の中でしっかりとした重みが感じられた。


 それは小さな赤子であった。


 僕を見上げ嬉しそうに笑う赤ちゃんである。あの虫のようなものが人間の赤ちゃんになるとは思わなかった。だが、その赤ちゃんから感じるのはアイツのそれであった。


 前と同じように僕に前に進めと望み続けていた。


「確かにアイツなのは分かるけど、こんなに変わるとは思わなかったよ」


 僕はその赤ちゃんを少年に見せながら聞いた。


「元々、その赤子は人間だったんだ。理由があってあの姿になっていたんだよ。驚いたろ」


「驚きましたが何かこの子には凄い愛着があります。どんな理由があるのか教えてください」


「今は教えることは出来ないよ。それを知ることもお前の旅の目的なんだよ」


「目的?それはそんなに大切なことなんですか?」


 僕の言葉に少年は大きく頷いた。頷いたがそれ以上は何も言わなかった。


「アレク、その赤子を大切にしなよ」


「はい」


「次からの旅にはその子を連れて行ってくれ」


「次の旅先はもう決まっているんですか?」


「君がこの旅の本当の目的を知るまで、旅は続きます。僕はその日が来るのを楽しみにしているからね」 

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