第23話 幕が落ちる

 王城の広間で自分の過去を知った僕は大きな衝撃を受けた。


 僕がそんな運命に巻き込まれていた事を知りながら、僕をいたぶり続けるミラの気持ちは理解できないがミラが姉弟であった事になぜか深い感情が湧いてきた。


 だか、ミラに対する思いと同じくらい位、父であるカインが許せなかった。僕の人生を狂わせた父を許せるはずがなかった。


 だが、僕の存在がなぜルイド王国の存亡に関わるか検討もつかなかった。


 その答えはレイア隊長が教えてくれた。


「アレク、君の存在を知った国民が王を許すと思うか?人の道を外れた王族をだれが許すものか!国民の怒りでクーデターが起こり、我々ノーマン帝国が決起した国民を救いに来たというわけだ」


 僕という存在が国を滅ぼしたのは確かかもしれないが、僕を責める権利が誰にある?僕こそ被害者だ。


 最も納得できないのは、国民が決起するのはいいとしても、まったく関係のないノーマン帝国がこの場を仕切っている方いうことである。


 そこには政治的な駆け引きがあるが、そんな事を僕が分かるはずがない。


 言いたい事は山のようにあるが話せない僕には思いを伝える方法がない。物凄く口惜しがそう思っても現実は変えようが無かった。


 それでもカイン王の悔しそうな顔は僕の比ではなかった。悔しさが溢れ、ついには被害者であるはずの僕を物凄い形相で睨んでいた。


「お父様、ご自分の行為を棚に上げてアレクを睨んでも取り返しのつかない事ですわ」


 ミラにたしなめられ、カイン王は悔しそうな顔をした。


 その様子がとても面白いのかレイアは、カイン王とアレクを見ながら声に出して笑った。


「愛おしい娘に責められて何も言えなくなるとは貴方は王失格ですね」


 その言葉にはレイアの部下も苦笑するしかなかった。それにはミラも耐えきれずに兵士達に睨みをきかせたが誰一人として意に介するものはいなかった。


「確かに父の行為は許されないことをしたのかもしれませんが、なぜノーマン帝国が動いたのですか?他国の事に口を出すのは間違ってもいます。」


「それは姫様が悪いのですよ。あなたがその狂った愛情を抑えられればこんなことにはならなかったはずです。しかもあんな小悪人に秘密を握られているのに、それを放置したあなたの甘さがこの結果になったとは思いませんか?」


 ことはを話せない僕は口を挟むことは出来ないが、置いてけぼりを食らい逆に冷静になってきた。いや、冷静というよりこの場の流れがなんとも他人事のように感じてしまっている。


「国の行く末は決まったようなものです。この先は親子水入らずで過ごされますか?それとも三人とも私の手ですべてを終わらせますか?好きな方を選ぶくらいの自由はあげますよ」


 レイアは先程から尊大な態度だがルイド王国の未来には興味がないようであった。


「おぬしに何の権限があっての振る舞いだ!」


 今まで黙っていたカイン王が遂に言葉を荒らげてレイアを睨みつけた。


「私にはその権利があるのです」


「・・・・・・・」


「わが一族は遥かな昔、このルイド王国を追われたのです。ゆえに私はこの国の末路を見る権利があるのです」


 それにはカイン王まミラも言葉が無かった。このレイアと言う人間の生い立ちに何があるのかは分からないが、ここにも運命に人生をもてあそばれた人間がいたのだった。

 だからレイアは必要にカイン王を責めているのだった。それについてはレイアも語るつもりはないらしい。


「もうこれ以上何かを抱え込むのは我慢ならん。ならばすべてに決着をつけたい。少し時間を貰えるか?」


「あまり時間はありませんが、私にも人を思う気持ちはあります。貴方方に少しですが話し合う事を許します。お早めに」


 レイアは寛大な処置を許した。


 ミラはその心遣いに感謝してアレクに近寄り、アレクの身体を力強く抱きしめた。アレクの汚れた姿など気にしていないようであった。


「アレク、可哀想な弟よ。あなたの両親の間違った行いがあなただけではなくこの国まで滅ぼしてしまった。私に出来ることはこうしてあなたを抱きしめるしか出来ない。許して」


 僕は言葉の代わりにミラ以上の力で抱きしめ返した。二人は静かに涙を流した。アレクの口から異音のような嗚咽が漏れた。


「私のこれまでの行いを許してくれる?」


「・・・・・・・」


 僕ば鼻水をすすりながら何度も頷いた。それに反応するかのようにカイン王も椅子から立ち上がり、こちらに歩み寄ってきた。


 こうなってはアレクも許すしかなかった。言葉では無く分かり合うことができると思った。


「ミラ、アレク、私が馬鹿であった」


 そう言うと、カインはアレクに覆いかぶさった。


「あぁ、」


 アレクはその場に崩れ落ちた。


 見るとアレクの腹部に大きな血の染みが広がり始めた。


 カインはどこに隠し持っていたナイフをアレクに突き立てていた。それをレイアは気がついていたようだが、止めることはしなかった。


「本当に自分勝手な男だ」


「お前に何が分かる?こんな汚らしいヤツのせいで私の国が途絶えたのだ。許せるわけがなかろう」


「お父様、あなたに父としての慈悲と後悔の念は無いのですか?」


 ミラはそう言うと、自らカインの持っナイフに自分から飛び込むと、死を選んだ。


 また、僕は正しい選択が出来なかった。それを悔やんでも遅かった。

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