第17話 極悪令嬢

 その部屋は広さはかなりあるはずなのに色々な物が溢れていて、そのどれもが人の汚物の匂いが染み付いていた。


「まったく、いつ嗅いでもこの匂いには参りますわ」


 そう言いながらもミラの瞳は欲情に輝いていた。


 ミラは赤髪を緩くカールさせており、お忍び用のワンピースでさえ高級な品なのは誰の目にも明らかであった。


 ミラは僕の手首の鎖を引いて、貼り付け用の器具に僕を縛り付けた。


 いつものことだがこの瞬間の屈辱感には耐えられない。相手が誰であってもそれが変わることはなかった。


 僕が相手をするのはミラのような若い女性ばかりではなく、男や老人であるが、時には僕より年下の子供の事もある。


 ミラは僕の表情が気に入らなかったのか、頬を張ると、顔に唾を吐きかけてきた。


 僕が嫌がる顔をすると、ミラはトロンとした目をした。生粋のサドである。


 それがとても恐ろしかった。


 ミラが普段どんな生活をしているかは分からないが、多分高貴な世界で暮らしているのだろう。だが、こんな姿は人には見せられないが、今のミラは自分の行動に自分で狂ってしまっている。


 ミラはテーブルの上においてあった。薔薇を編んだ禍々しい鞭をてにして、それを大きく振りかぶり、僕を打った。


「うっ」


 僕は呻きを上げた。元々声が出せないのだから呻くしか出来ない。もし、言葉を発することが出来ても僕は言葉を噛み殺しただろう。


『こんな奴に屈するものか』そう思って耐えた。ミラはその表情を見抜き、更に興奮したようだ。


 ミラの一撃一撃受けるごとに皮膚が裂け、血が滲み出していた。


 気持ちは折れてはいないが、体は正直であった。ズボンは失禁した尿で汚れ部屋にツンとした匂いが充満した。


「相変わらず情けない男ですわ。こんな恥ずかしい姿をみられてどうなんですか?」


 ミラは鞭の柄の部分で僕の股間をグリグリしてきた。

 痛みで呻きと涙が止まらなかった。それが更にミラを興奮させた。


 テーブルの上から細い針を取り出すと、指の爪の間にねじ込むと、針を捻った。


 鋭い痛みが脳を焼いたが唇を噛んで堪えた。ミラはそれが気に入らなかったのか、針を更にねじ込んできた。


『止めてよ』心のなかで泣き叫んだ。

 僕は声にならない声で許しを願ったが、その顔が面白いのかミラがやっと針を抜いてくれた。


 痛みから解放された僕はヨダレをたらしミラに感謝の気持ちを伝えた。


 僕の中のタガが外れた。


 苦痛が快楽に変わり、僕の中のマゾの血が騒ぎ、股間が反応してしまった。屈辱だが毎回、こうなってしまう。


「本当にアレクはド変態なんだから、嫌そうな顔をしても反応するなんてね」


 また涙を流してしまったが先程の涙とは違う涙であるのは隠しようにない。


「これ、どうして欲しいの?」


 そう言いながもミラは僕には触れてはくれなかった。それが更に僕を貶め続けるのだった。


 それから時間が来るまで僕はイケないまま弄ばれ続けた。


「今日も良く頑張ったわね。これはご褒美よ」

 そう言うと、なめしていない革の手袋でキツくにぎられ、僕は果ててしまった。


「私以外でイッたら許さないから」


 そう言うと、ミラは僕を解放すると何事もなかったように出ていってしまった。


 残された僕はその場にへたり込み、また泣いてしまった。


 こんな自分が大嫌いだが、ここから抜け出せないのだから耐えるしかなかった。

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