主人公は「父を憎む」「母を救えなかったことを悔やむ」という強烈に自分の感情だけに従った行動原理で動いています。
ですから、とても冷たく、かつ、客観的に見ればとても自分勝手で、他人を巻き込むだいぶ厄介な存在です。
ただ、その「自分勝手さ」には読者が共感しうる部分が多分に潜んでいます。おそらくこの辺は、読者はそのように感じるであろうとの計算で潜ませたものと思われます。
おそらく、誰かを失った痛みや、どうにもならない現実を前に「もしも過去を変えられるなら」と思う気持ちは、多くの人が心の奥で抱く衝動です。そこに、作者は上手にアプローチしたと思うんです。
つまり彼の自己中心性は、決して「異常な人物の狂気」だけではなく、「人間なら誰でも抱く弱さの極限形」として描かれている、そのように思いました。
また、もう1つ。
彼の行動は破滅的だと読者は、頭では分かっていても、心のどこかで「そうしたくなる気持ち」を否定できないから、この物語を読み込んでしまう。そこも狙い通りなのではないでしょうか。
そこにこの物語の怖さと切なさがあると思うんです。
既にたくさんの方に、たくさん書かれているテーマですが、それでも、読んでしまいました。
文章は正直、稚拙なところもあると思います。
でもすごく伸びしろしか感じられません。