第4話 スリランカカレー

 俺はたくたん! 今日はなんだかカレーになりたい気分だぜ。というわけで、早速材料集めをしていく!


「おっ、野生の爆弾」


 なんと草むらに時限爆弾が仕掛けてあった! うーん、どれどれ? 一時間後か。


 ならちょうど加熱に使えそうだな……持っておこう。


「スリランカカレーってどんなのだっけ〜? そう、ココナッツミルク」


 ココナッツミルクってどうやって取るんだ? 教えてMotchiy先生。


「ココナッツの裏側にある白いフニャフニャを絞ったら出てくるよ」


「なぁるほど」


 じゃあココナッツを探さないといけないな。最寄りでココナッツを栽培してるとこってどこだ? 全く分からん。


 もうネットで買えばいいかな。


 俺はnubia Z70 Ultraを取り出し、アマゾン本社に電話を掛けた。


「ココナッツみっつくらいくれ。値段はMotchiyにツケといて」


『872400円ですけどいいですか?』


 確か12%割引クーポンあったよな。そのくらいYouTubeで荒稼ぎしているヤツにとっては痛くない出費のはず、たぶんモーマンタイ!


 すぐヴィイイイインという音がして、ドローンがココナッツを持ってきてくれた。ふはは、技術はすげえ。


「えーっと――おい、フニャフニャねぇじゃねぇかおぉん?」


「お前の脳がフニャフニャしてるからじゃないかな」


「あっそっかぁ」


 つ、ま、り……俺の脳を絞ればココナッツミルク? ふっ、俺天才。


 でもこれすると俺が動けなくなるかもしれないんだよな。ミルク調達は後にするか。


「えーっと、じゃあスパイスか」


 そこら辺に生えてねーかなー。そう思ってあたりを見回してみたが、正直三つ葉と雑草しか見つからない。たまーに水色の草あるけどあれ明らかにヤベェやつだよな。


「オレンジ色の草はどうなんだこれ? おーいMotchiy」


「ん? まあ辛そうだしいいんじゃないかな」


「うし」


 何本かオレンジ色の草をちぎってスパイスは調達完了と! いやー順調だね。


 ついでにまあ、風味に豊かさを持たせるべく三つ葉と水色の草も摘んでこう。


 いい感じにパラパラと草をちぎり、口の中へ突っ込む。うおおおお! すげえ、めちゃくちゃゾクゾクした!!!


「もしかしてその草なんか麻薬的な作用とかあったりしない?」


「しないしないヽ(゚∀。)ノエキヒヒヒヒヒ」


「明らかにしてるね……」


 Motchiyもやってみないこれ? 青い草明らかにすげげだぜ?


「いらない」


「俺の草が食えねえってのかあぁ?」


「別にお前のじゃないでしょ……」


 はーっ、Motchiyよ死ね! この素晴らしさが分からんやつがいるなんて……あっピンク色のぞうさんだ! マグロとカジキが空を泳いでる! スリランカカレーの具材にちょうどいいし、狩猟しに行こうかなぁフィヘヘヘヘ。


「深く、深く、更に深く。三千の罪を負い、大いなる星の世を導き歩いた啼哭の緋月は今ここに昇る――『堕刹・穹帝弓マイ・セクエンス』」


 まるで黒く燃え上がる炎が魂を深遠へと誘うように。無数の夢を断ち切ってきたその一矢の前には正義も悪も無し。すべて、この眼前に貫かれた鮮血を捧ぐのみ――


「何をしてるのさ……」


「あでぇぅ!?」


 も、Motchiyこの野郎、ハリセンで叩きやがった。俺がせっかくカッコよくマグロを撃つために詠唱してると言うのに……あれ?


「ま、マグロドコ? 空に? いない?」


「幻覚じゃないかな……」


「そ……そんなばばば! 粉バナナ!」


 オーマイゴッド!!


 ……いやでも逆に考えるんだ! 魚肉がなくなれば、カレーの具で俺が占める割合が増えるってことじゃん。


 フハハハハハ! さっきの幻覚は食えずとも、俺に重大な気づきをもたらしてくれた! やったね。


 そんじゃあ次の材料は何かな〜。塩と水とトマト、米と油とタマネギね、おけおけ。


「塩と水はちょうど海水使えばいいだろ、あとトマトか」


 トマトはどこかに植えてないかなー。ちょうどこんな都合よく家庭菜園でトマトが育ててあったり……


「したじゃーん! オゥイェー!」


 なんかそこの民家にトマトの鉢植えあるんですが! 最&高。


 とはいえ盗みに入るのはちょっと良心痛いし、交渉しようかな。


「今更良心とか何いってんだか……」


 なんだァ? てめぇ……。


 俺はとりあえず民家のインターホンをピンポーン!


 すぐに足音がして扉が開く――なんかちっこいガキが出てきたぞ、こいつぁふんだくれそうだな。世間知らずな己を恨むんだぜベイビーが。


 ちょっとかわいいけども、俺には既に嫁も妻も娘もいるから浮気はしない。しないったらしないぞ。


「おうおう、トマト買わせろやおう!」


 まずは高圧的に出る。相手は萎縮する。……いや全くしてねえな、なんだこいつ!? 俺の最新心理術が効かないなんて……。


「ん〜? そうだね〜、お兄さんかっこいいし、二百ドルでいいよ〜。ふふ」


「よっし交渉成立だな」


 そうして俺はトマトを一袋もらい、かわりに二百ドルの札束を渡してMotchiyと合流した。


「おいなんだその顔。かわいい子と話せた俺を妬んでるのか?」


「知ってる? トマトの相場」


「二百ドルだろ」


「せいぜい一、二ドルなんだよねぇ……」


 ふっかけられるの俺だった――。


「ウグアァアアアあのメスガキィ! 騙しやがったな!!」


「ついでに言っとくとあのカルティくんは男だよ」


「いや愛に性別は関係ない」


「急に賢者になるなし……」


 はぁ、まあ買っちゃったものは仕方ない。えーっと後は……お、あのシルエットはまさか!


「キュー」


「アライグマだ!」


 ちょうど小川で石を洗っていたようだ。……いやあれ石じゃねえな!? 普通にギンギラギンのダイヤモンドなんですけど!?


「キュイ」


 なんか名刺寄越してきたんだけど……ん?


 ……んんん???


 んんんんん?????


「お前貴金属店やってんのかよおい!?!?!?」


「キュキュー」


 あ、ありえん。これも幻覚かな? アライグマがさあ、世界的に有名な貴金属業の顧問務めてるって何? 俺よりアライグマが出世してるって何?


 あのう、あのう……ちょっと媚び売って出世を助けてもらうべきかな。


「アライグマ様、こちらに全財産がござりますれば何卒私めのようなものをどうかぜひご丁重にお扱いなさりますりくださると幸いにございまする」


「お前、もはや敬語じゃないでしょそれ」


「キュイッキュ」


「ははぁ! えーっと、此度は米と油とタマネギをご頂戴いたしたく参り馳せ参じ存じ上げございまする」


「キュッキュッ」


 う、うおおおおお!!!


 目の前にピラミッドになった米俵と油のボトルとタマネギが召喚された!!


 代償として今持ってた二千円札を持ってかれたけど、全然コスパバグだろこれ。


「さあ材料は揃っ」


「あっ」


 そして俺が最後に聞こえたのは、カチッという機械的な音だった――。


「……偶然にも料理っぽい見た目にはなったね?」


「キュイッキュ」


 たくたん、なんて天文学的な確率を引き当てたんだ!


 なんと自分とアライグマの目の前には、ちょうどよく加熱された……カレーっぽいものが、ちょうどよく大きな一枚葉の上に乗っていた。ルーが水色と赤色の入り混じった気持ち悪い色合いなのを除けばだけど……。


 モノクロで撮影すれば美味しそうには見えるかな?


「キュキュイ……ミッ――」


「ああっ!」


 アライグマがひとくち食べて昏倒してしまった。


 ……いやどうしよこれ、触る気すらおきないんだけど……?

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