15 リュックの魔改造 上着を脱げなくなった剣奈 ブラは人に見せちゃダメ
剣奈はバス停から橋を渡って森の道を歩き出した。二回目なので慣れたものである。
巫っ子『川からすがすがしい空気が立ち上ってくるみたい』
古刀『じゃのう。霊脈気を感じるわ』
白蛇『妾は水の守護でもあるからのう。この空気は好きじゃ』
昨晩、剣奈と玉藻はリュックを魔改造していた。第一次ダンジョン探索時と異なり、白蛇は快適になった居場所でくつろいでいた。白蛇は始終上機嫌だった。
――昨晩、吉祥寺の自宅にて
剣奈の部屋にリュックが置かれていた。剣奈と玉藻はそのリュックを見ながら肩を寄せ合っていた。玉藻はお姉さん座り、剣奈は乙女座りである。肩を寄せ合う?ん?玉藻の身長は百六十五センチメートル。小柄な剣奈は身長百二十九センチ……剣奈の頭は玉藻のみぞおちあたりなのだが……肩を寄せ合う?……ま、まあ……それは良かろう。
「白ちゃが苦しくならないようにしないとね……」剣奈はハサミを手に取った。
「そうね、外が見えるようにしてあげないと白蛇ちゃんの首がなくなっちゃうかもしれないわね」玉藻が優しげに言った。
「冗談になっとらんわ!」白蛇が怯えたように玉藻の反対側、剣奈の右太ももの陰に隠れた。
「あら?白蛇ちゃんのために二人で頑張ろうとしてるのよ?ひどいわ」玉藻がさほど気にしないように言い返した。
「あ、いや、妾は……た、楽しみじゃぞ?」
「ええ、まかされましたわ?」
玉藻は微笑んでリュックの布地を軽くつまんだ。そしてリュックの背を軽くなでた。
スパッ
その瞬間である。リュックが見事に切り裂かれた。中指でさらりと撫でた分、およそ数センチ。
「うわぁ。きゅうちゃんすごい!ハサミなしでこんなにきれいに!」
剣奈がスパッと切られた断面を見て無邪気に叫んだ。白蛇は……冷や汗を流していた。
「よおし!ボクだって!」
シャキン!
剣奈は得意げに裁ちばさみでリュックの側面をカットした。
ジャグリ
「あ、あれ……?」
大きく斬り裂かれたリュックの側面を見て剣奈は涙ぐんだ。
――秋学期 図工の時間
「あはは。見て見て!剣奈ちゃん、また失敗してるよ」結衣がわざとらしく剣奈の方をチラ見しながら囁いた。
「ほんと!下手くっそ。顔と同じで歪んでんじゃね?」 真由がさも醜いものを見るような顔をして言った。
「まじ?女子のくせに不器用よね。さっすがボク、ボクいうだけあるわね。キッモー」七海が同調した。
「せっかく道具持たせてもゴミにしちゃうんだもんね。先生泣いてるんじゃない?」彩花がちらっと先生の方を見た。
「うわ!剣奈ちゃん、また泣きそう。泣けば男子助けてくれるもんね。うっざ。あれ、あざといっていうんでしょ?しかも養殖!」
「「「「あははははは」」」」
―――――
剣奈は学校の図工の時間を思い出して涙ぐんだ。玉藻は……涙ぐんだ剣奈をそっと抱きしめた。そして言った。
「あら?素敵な切り口。剣奈ちゃん上手ねぇ。ね?白蛇ちゃん?ここから出入りできそうね?よかったわねぇ。ね?
「お、おおお、おう!た、たしかにそのとおりじゃ!わ、妾が出入りできそうじゃのぉ。み、魅惑的なギザギザ穴じゃ!さ、さすが剣奈じゃのう!」白蛇が慌てて言った。
「そ、そう?え、えへへへへ。ボク、失敗しちゃったかと思ったけど……結果オーライってやつ?」
剣奈の涙が引っ込んだ。剣奈の顔が笑顔になった。いや、ドヤ顔になった!
玉藻はギザギザにカットされた穴に薄く透明なビニールシートを縫い込んだ。側面の一部に透明な窓がはめ込まれたのである。しかも外から見えないように内側に黒いたれ布を縫い込む丁寧さであった。
極貧のあばら家で養母の手伝いをしていた
完成したリュックは……内部はクッション性の布が敷き詰められていた。爬虫類の白蛇が快適に過ごせるよう、保温と柔らかさが両立されていた。快適で居心地が良さそうである。
剣奈が別のところに不器用に開けてしまった穴……、そこは通気口に加工され、新鮮な空気がいつでも取り込めるようになっていた。
切りすぎた側面には収納ポケットが増設された。剣奈のお菓子やペットボトルが入れられる構造になった。白蛇は剣奈の開けた秘密通路を通って、その増設ポケットにも行きたい放題である。
魔改造されたリュックは白蛇にとってまさに「秘密基地」となったのである。
――再び「神明水」への山道
巫っ子『はぁ。すがすがしいねぇ』
白蛇『じゃのう。神聖な空気がリュックに入り込んで妾もすがすがしいわ』
巫っ子『うふふふ。リュック、秘密基地にしてよかったね!』
白蛇『ま、まっことそうじゃ!』
白蛇が破れかぶれに叫んだ。玉藻は……そっと白蛇に視線を送っていた……
剣奈たちは谷川から冷たい気配を感じた。ふと見ると「神明水」の看板が掲げられていた。剣奈はワクワクして階段を駆け下った。
階段を下りた先の水場は澄み渡っていた。剣奈はそっと水に触れた。その瞬間、冷たい水が手だけでなく、心まで清く染みわたっていった。
巫っ子『わぁ!素敵!すっごく心が澄みわたるよ』
白蛇は剣奈から伝わる気を感じた。そして驚き目を見開いた。剣奈、まさかの新たなご加護獲得である。
続いて訪れた「万寿の水」は「命を溜め込む」ような気配を湛えていた。その水に触れた時、ここでも剣奈の周りにふわりと風が吹いた。そして剣奈を包み込んだ。剣奈はうっとりと気持ちよさそうに瞳を閉じた。
―――やや遠方 内調監視バディ
「あの娘、ときどきほんと侵しがたいような、神聖な感じになるわね」中川がつぶやいた。
「今の「シラユキ」、まるで別人みたいだ。あんな雰囲気、普通の子に出せるもんじゃないぞ」風見が目を見開いて応えた。
「ええ。……まるで、ホントに神さまに選ばれてるみたいね。薄い黄色味を帯びた白い神々しい光に包まれてるように見えるわ?太陽の反射なんでしょうけど……ときどき変な反射するのよね……」
「不思議な反射だよな」風見が言った。
「でも、あの娘……風邪ひかないかしら?無邪気に身体中にお水浴びちゃって……」中川が言った。
「まあ、すぐ後でタオルで拭いてるからいいだろ?しかし……小さくてもブラしてるんだな」
バコン
風見の頭頂部に中川の肘打ちが見事に沈められていた……
――――
古刀『禊をするのはいいのじゃが、前みたいに上半身をさらさぬようになったのじゃな?』
来国光がしみじみつぶやいた。すると剣奈が悲しそうな顔をしてうつむいた。
巫っ子『ボク、ボク、もう服を脱いじゃいけないんだ……はしたないって陰口叩かれるから……』
剣奈が涙ぐみながらうつむいた。
巫っ子『ボクね、ちょっと前から胸の先がぷっくりしてきたんだ。動くと揺れて痛くて。それでお母さんに相談したんだ。そしたらお母さん、ファーストブラ?っていうのつけなさいって言ったんだ。それで……。運動するときの胸の痛みはなくなったんだ。だけど……ブラは人に見られたらダメなんだって……。だからボク……現実世界ではもう……服……脱げなくなったんだ……。ちょっとでもブラ見えたら……はしたないって言われるから』
――学校 体育前の教室での着替え
「うわ、剣奈、ブラつけてるの見せつけてんですけど?マジ無理っ」結衣が汚いものを見るかのように剣奈を見た。
「うわっ、はしたなーい。堂々とブラだけになってるよ。あれ、男子に見せつけたいんじゃね?あざと剣奈だしー」真由が汚物を見る目をした。
「男子、剣奈にドン引きしてるっていつも噂してるよねー」七海が眉をひそめて男子の座っていた机を見て言った。
「きっとお家で、一日中鏡の前であのあざといポーズ研究してんだよ。やばっ、うわキッモ!」結衣が眉をひそめて言った。
「だれか剣奈に「女の子ってそういうの隠すモノ」ってこと教えてあげたら?」彩花がニヤニヤしながら言った。
「「「「あははははは」」」」」
剣奈はうつむいて泣き出した。玉藻はそんな剣奈をそっと抱きしめたのであった。
――――――
「玉藻の幼少時代」:『千年たっても愛してる』「8 忍ぶ恋 知らず舞ふ袖 風に裂かれぬ 平安時代」
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