12 世の中をなめた女子三人組 吉祥寺路上、日常と逸脱 うちら最恐
――第一次ダンジョン探索の翌日、吉祥寺路上にて
「うちら学校で最強だし!大人なんて文句言うだけで何もできないしさ」
彩花がうそぶいた。春から妹の美緒は喜応幼稚舎に通うことになっていた。彩花の父勝彦は喜応大学卒業だった。亜希は教育熱心だった。そして近所や知り合いからの評価をとても気にする人だった。
母の亜希は小さいころから彩花に習いごとをさせた。まわりは彩花が喜応幼稚舎に通うだろうと思っていた。当然亜希もそう思っていた。ところが、彩花は受験に失敗してしまったのである。
勝彦も亜希も娘に受験は時の運だからと慰めた。また中学以降に入学を狙えばいいと励ました。彩花ももちろんそのつもりだった。
しかし……妹の美緒が喜応幼稚舎に合格したのである。その時から両親の意識は完全に妹に注がれるようになった。そしてこの春から妹が入学するのである。彩花の心は荒れていた。
彩花は友人の七海、真由と三人で春休みを楽しんでいた。七海は長いものに巻かれろ的な性格であった。強者に従いがちであり、また周りの空気に流されがちであった。
真由はおしゃれが大好きな女の子である。好奇心旺盛で流行や情報にも敏感なタイプだった。感情の上下が激しいタイプで気に入らないとすぐに癇癪を起こすところがあった。感情や雰囲気に流されやすく、流れで人を煽ってしまうこともしばしばあった。
実はこの三人、全員喜応幼稚舎のお受験に失敗している。父親は全員喜応大出身であり、家族ぐるみで交流していた。
そして……いじめリーダーの結衣のとりまき三人組であり、剣奈イジメの加害者たちである。
彩花はむしゃくしゃするやさぐれた鬱屈をはらすかのように歩道にしゃがみこんでおしゃべりを続けていた。七海と真由も彩花に同調するように歩道に座り込んでぺちゃくちゃおしゃべりを続けていた。
大人たちは少女らを苦々しく思っていた。ある会社員の男性が少女らに近づいてった。すると彩花がその男性を睨みつけて口を開いた。
「なあにおじさん。うちらになんか用?」
「君たちどこの小学校?春休みなのかな?」
「うわっ!個人情報盗み出そうとしてるよ、このおじ!」
真由がびっくりしたように目を見開いた。そして男性を汚物の様に見つめた。
「い、いや、そんなつもりは……」
「は?何その顔?うわっ、キモっ。だ、だれかぁ!」
いきなり弱者のそぶりを見せた三人である。小学生に絡む中年男性。警察沙汰になると下手をすると職を失う可能性を心に思い浮かべた。少女らは三人である。共謀して嘘をつかれた場合、潔白の立証が難しいかもしれない。それに個人情報を尋ねてしまったのは事実なのである。
男性は目をそらして足早に立ち去っていった。
「はっ!なにあれ!おじ連中うちらにビビって目を逸らしてやんの!マジ雑魚しかいなくてつまんね!」真由がバカにした声を上げた。
「ほんと。大人ってヨワヨワよね」七海が同調した。
それから三人はアーケードを練り歩いた。みんなで自販機で飲み物を買い、その空き缶を手にして真由が言った。調子に乗っていた。
「はーい。じゃあ当てっこするよ!命中した方が勝ちー!」
「いいじゃん!やろやろ!」むしゃくしゃしていた彩花が賛成した。
「そ、そうね。面白そうね」七海は空気を読んでみんなに合わせた。
「じゃあいくよ!せーの!」
ガシャーン
三人の投げた空き缶が文房具店に投げ込まれた。
「こらー!」
文房具店店員が怒って飛び出してきた。
「うわっ。キモおじ!逃げろー」真由が言った。
三人は嗤いながら走っていった。
「アハハハハハ。なにあれ。必死になっちゃってさ」彩花が笑いながら言った。
「ホントホント」七海が同調した。
「だっさださじゃね?」真由が馬鹿にしたように言った。
「ねえ、真由、七海、うちらに逆らえるヤツほんといなくね?」彩花がうそぶいた。
「なに?今通ったジジイも目逸らしてんじゃん。うちらの威圧感やばすぎじゃね?パンピーカワイソ」真由が調子に乗ってあざ笑いながら言った。
アーケードを出た三人はサラリーマンや文房具店員の真似をしてはげらげら笑いながら歩いていた。三人は無敵であった。彩花のむしゃくしゃした心もいつしか晴れていった。
「あっ!カモ発見!」真由が言った。
真由は前方にガラの悪い男性三人組を見つけた。そして睨みつけた。小学生女子のガンつけである。なんの威圧感もない。一般の大人たちであれば関わり合いになりたくないので目をそらして距離をとるであろう。しかしこの男性三人組は日々けんかに明け暮れる連中だった。舐められた負けとの感覚が彼らの信条だった。隼人は短気だった。いきなりのメンチ切りについ反応してしまった。
「あっ?なんじゃ?このガキ」隼人がすごんだ。
「うっわあ。大人が子供相手にメンチ切ってきたけどぉ?アハハハハh。顔面鬼!怖すぎて逆に笑える。うけるぅ」真由が揶揄った。
「社会的負け組ってなんてかわいそうなのかしら」彩花が調子に乗った。
「あ゛?舐めてんじゃねぇぞ?このガキが」隼人が声を低くした。
一般の小学生であればこれだけで泣き出すであろう。いや、そもそも怖そうな男性三人組にちょっかいなどかけないか。しかし。
「出たぁ自称裏社会?顔も服も昭和っ!えー、おじさん、そんなのどこで買うの?こんな遺物メンズまじ始めて見たわ!」負けず嫌いの真由が言い返した。
「ねえ、怖いフリだけで全力のつもり?そのチンピラ笑顔、ママのお弁当と同レベルでぬるいんですけどー」七海が同調した。
「その金ピカのネックレス、まさか本物にみられてると思ってる?ガチャででたアクセにした見えないんだけどぉ」彩花も調子に乗った。
「はっ。三人で固まって歩かないと何もできない?ひとりじゃ出かけられない?ビビりがイキってどうすんの?」真由が煽った。
真由と彩花がわざと道をふさいだ。そして男性たちの顔をがん見した。
「ねえ、おじたちヤバくね?ほかに友だちぜったいいないっしょ?仲間外れ同士つるんじゃってカワイ」真由がさらに煽った。
「こっち子どもだけど、正直こっちのが絶対強いし。あんたら、何人来ても形だけで中身スカスカ!」彩花が言った。
真由が剛志に近づいた。筋肉質でタトゥーやゴールドチェーンをしていた。
「その刺青、シール?お風呂で消えちゃわないように気をつけてねー。あ、お風呂入れないんだったっけ?」真由が言った。
「ねぇ、怖い顔して声出してよ?たぶん負け犬の鳴き声ってやつ?」彩花が馬鹿にした。
「くっさ!大人の汗ってゴミ箱より雑菌だし、うわっ、汚物」真由が言った。
「新作の靴?泥だらけじゃん。マジ似合ってなね。ABCセール?」彩花が言った。
「ほら、何か一発芸やってみてよ?“吉祥寺の自称アウトローパフォーマンス講座。Tiktokバズりそ」真由が言った。
三人は世の中を舐め切っていた。怖いものなど何もなかった。明らかに危なそうな男性三人組に対して公衆の面前で侮辱、嘲笑を叩きつけた。彼女らの全感覚を使って男性のプライドを執拗に踏みにじった。
周りの大人たちは関わり合いになりたくなくて遠巻きに、そして足早に去っていった。
プチリ
ナニカが切れる音がした。そんな気がした。
――――――
「イジメ三人組」:今回の主役(?)の三人組詳細プロフィールです。彼女らには彼女らの理由があります。でもイキってみんなに迷惑をかけていい理由にはなりません。イジメもだめです。正当化されません。
『夏風の刀剣ドタバタ日記』「🔥衝撃!『はるだん』裏テーマ「いじめ問題」 リアルなイジメの理由・背景・動機 真剣に考えてみた! 」
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