第3部-第22章 同窓会の通知

ある冬の夜、スマホの画面に一通のメッセージが届いた。

 差出人は、高校時代の同級生、クラスのグループLINEの管理者だ。

「来月、同窓会やります! 駅前の居酒屋で18時から」

 そこには日時と店の名前、そして参加予定者のリストが添えられていた。


 スクロールすると、懐かしい名前がずらりと並んでいる。

 サッカー部のエースだった森田、文化祭で一緒に装飾を作った佐伯……。

 その横には「参加」の文字がついていた。


 画面を見つめるうちに、胸の奥がざわつく。

 ――もし行ったら、俺は何を話せばいい?

 職歴なし、彼女なし、趣味はネットとゲーム。

 同じ十年を過ごしてきたはずなのに、彼らと自分の間には埋められない差がある。


 「参加」にチェックを入れれば、あっという間にみんなに通知される。

 だが、浩一はスマホを机に置き、こたつに潜り込んだ。

 通知は既読にならず、未読のまま時間だけが過ぎた。


 翌日、母が「同窓会、行かないの?」と聞いてきた。

「別に……興味ないし」

 口ではそう言いながらも、心の中では別の声が響いていた。

 本当は会いたい。でも、会った瞬間、自分の現状が全部露わになるのが怖かった。


 同窓会当日、夜の駅前はネオンで眩しく、人の笑い声があふれていた。

 浩一はその光景を、スーパーへの買い物帰りに遠くから見ただけで通り過ぎた。

 ビルの三階にある居酒屋の窓から、森田や佐伯らしき影が笑っているのが見えた。

 胸の奥がぎゅっと縮む。

 ――俺には、もうあそこは似合わない。


 家に帰ると、パソコンを立ち上げた。

 ネットの中では、今夜も誰かが待っている。

 現実の居酒屋の席よりも、こちらの椅子の方がずっと安心できた。

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