第2話 ラノベのヒロインって性癖ですか?

 ■朝食後、リビングのソファーで寝ながら、ラノベを読んでいる雅紀


「朝ごはんを食べ終わったと思ったら、またすぐにソファーで横になるなんて」


 //横にはなっているけど、今はちょっと読書中と言い訳する雅紀


「寝ながらの読書もいいですが……午前中の方が脳の働きがいいですから、今のうちに宿題やった方がいいですよ」


 //宿題はそのうち……と濁す雅紀


「夏休みの終わりに宿題が終ってなくても写させてあげませんからね」


「ところで、読書って何を読んでいるんですか?」


 //とっさに読んでいる本を隠そうとする雅紀

 //SE 急いで本を閉じる音


「そうやって、隠そうとするってことは……まさかえっちな本ですか?」


 //首を横に振って否定する雅紀


「必死に否定するところが、ますます怪しいです」


「えっちな本じゃないなら私にも見せてください」


 //気は進まないがクロエに本を渡す雅紀


 //SE 本のページをめくる音


「タイトルは……『許嫁派遣しました~もふもふ銀髪キツネ娘との甘々生活~』」


「(棒読み)へー、雅紀君って、こういう女の子が好きなんですね」


 //これはあくまでフィクションだからと雅紀


「これ5巻ってことはこのシリーズずっと読んでいるんですよね」


「(小声で)……このコスプレなら、ド●キにあるかも」


「(小声で)それにヒロインの話し方は京言葉……よしっ」


(ここからクロエ京言葉ver)

「ね、ねえ、雅紀君。やっぱり、こないなお淑やかな子が好き?」


 //急に話し方が変わって戸惑う雅紀


(雅紀との距離を詰めるクロエ)

「ちゃんと、答えてくれへんと、わからんわぁ」


 //いつもと違うクロエにドキドキしてしまう雅紀


「ふふっ、そないに顔、赤くして。雅紀君可愛いなぁ」

(クロエ京言葉verここまで)


「……やっぱり、これに出てくるヒロインのこと好きですね」


 //これはあくまでフィクションと再び否定する雅紀


「本当ですか? でも、私がヒロインのマネをしたら急に顔を赤くして……」


 //それは急にクロエとの距離が近くなったからでと雅紀


「えっ!? わ、私と距離が近いからって」


「そ、そんなこと言っても誤魔化せませんよ」


「今度、このキャラのコスプレをするので、その時にもう一度確かめます」


「だから、その、今は……執行猶予だと思ってください」


 //無罪じゃないのかと肩を落とす雅紀


「それよりも、午前中のうちに宿題片付けちゃいます……ってあれ?」


 //クロエ雅紀の寝グセに気付く


「(雅紀の寝グセ部分をさわる)ここ、髪が跳ねてます。寝グセですね」


 //跳ねている場所を探す雅紀

 //SE 髪をさわる音


「えっと、もう少し前……」


「ああ、行きすぎです」


「あと、ちょっと後ろ」


 //なかなか寝グセの場所を特定できない雅紀


「ちょっと、そこで手を止めてください」


 //SE 雅紀の手を掴む音


「私が跳ねてるところまで誘導しますね」


「ここです。ほら、ここが跳ねてます」


 //雅紀の手を離した後も寝グセ撫で続けるクロエ

 //SE クロエが寝グセを撫でる音


「うーん、この寝グセ、なかなか直らないです」


 //夏休みだからこのままでいいと雅紀


「学校がないからそのままでいいって……」


「(クロエやや不機嫌そう)私とは一緒にいるんですけどー」


 //別にクロエさんになら家族だから見られてもかまわないと雅紀


「私は家族の前でも寝グセはちゃんと直してますよ」


「ちょっと、待っててください」


 //SE クロエがパタパタとリビングから出て行く音

 //SE 洗面所の水でクロエがタオルを濡らす音

 //SE クロエが洗面所からパタパタと戻ってくる音


「濡れタオルで押さえれば、きっと直ると思います」


 //のけ反るようにソファーの背もたれの方に逃げる雅紀

 //SE 雅紀が背もたれに身体をあずけるぼふっという音


「どうして、逃げようとするんですか? 寝グセを直すだけですよ」


 //逃げてるわけじゃないと否定する雅紀


「離れてるとやりにくいから、もう少しこっちに来てください」


 //近づこうとしない雅紀


「来ないなら、私の方から」


 //ソファーに座る雅紀の腿の上に跨るように座るクロエ

 //SE クロエがソファーに座る雅紀に跨る音


「さあ、もう逃げられませんよ。観念してください」


 //SE タオルで雅紀の髪を撫でる音


「やっぱり、濡れタオルでやるとすぐに直ります」


「寝グセを直すだけなのにどうして、逃げたんです?」


 //雅紀が逃げたのではなく、寝グセを触られるとクロエとの距離が近いからと答える。


「えっ!? (焦るクロエ)逃げたんじゃなくて、近いって」


「じゃあ、夏休みだから直さないでいいって言ったのも……」


 //雅紀の考えていたことを知って、一気に恥ずかしさがこみ上げてくるクロエ


「あっ、あう、それならそうと早く言ってくれれば……」


「(小さな声で)女の子として見られてないと思って、焦ったあれは何なんなの……」


 //どうかしたのか? と雅紀


「な、なんでもないです。雅紀君が相変わらずまったくということです」


 //SE 雅紀の頭を撫でる音(ここから)

 //寝グセが直っても雅紀の頭を撫で続けるクロエ


「まだ他にも寝グセがあるかもしれません。念入りに直しておきます」


 //寝グセがないところまで直そうとしなくてもと抗議する雅紀


「ダメです。夏休みだからって身支度の手を抜いてはいけません」


「……それにこのぐらいの距離でち、近いとか思っていちゃダメです」


「私たちは家族なんです。このくらい近くても何でもないようにしておかないと」


「(小声で)家族じゃなくてもいいけど……今はまだ……」


 //何かいった? と雅紀


「へっ!? はっ、な、何でもありません。とにかくもうしばらくは撫でさせてもらいます」


 //SE 雅紀の頭を撫でる音(ここまで)

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