レベルを捧げし者、最強へと至る道
奈桐零-なきりれい
第零章【行動宣言】
第1話【始まりの日】
当時、俺は7歳だった。
父さんは元自衛隊で、自衛隊を辞めた後は警備会社に勤めていた。
父さんはいつも言っていた、家族は大事にしろって…。
母さんは元気で明るく厳しい人だ。
若くしてアパレル企業で副社長を務めるほど仕事熱心でありながら、家事も頑張っていつも沢山頑張っていた。
妹は、3歳でまだ遊びたい盛りで両親が居ない時は良く一緒に遊んだ。
いつも小さい妹の様子を見ていた事もあり俺は友達が少なかった。
けど、俺はそんな生活に満足していた。
満足していたんだ。
それは突然だった。
住んでいた地域でダンジョンブレイクが発生した。
母さんは仕事で遠出していて無事だとわかっていた。
でも、父さんがダンジョンブレイクしていた近くで働いている。
妹も保育所に居る。
学校で避難誘導がされる中ずっと心配だった。
学校が避難先だったので、俺避難してきた人達が待機している体育館の入り口で待った。
そうすると、妹の保育所の人達が来た。
妹は無事だった。
俺は妹と一緒に待った。
ずっと待った。
ダンジョンブレイクが治まり、遠出していた人達が避難した人を迎えに来たり、避難していた人が帰ったりするなか両親を待った。
でも、迎えに来たのは母さんだけだった。
そして知った。
父さんが死んだ事を。
妹の
でも、7歳になった俺はさすがに分かる。
俺達を迎えに来た母さんの目元は赤く、泣いたのがわかる。
女と子供は守れ、家族は大切にしろ。
それが父さんの口癖だった。
それなのに、母さんを泣かせたのか…。
不思議だった。
ダンジョンが父さんを殺した。
恨むならダンジョンのはずだ。
でも、俺はダンジョンよりも父さんが許せなかった。
弱かったから父さんは死んだ。
自衛隊を辞めたのもダンジョン攻略に懐疑的だったからというのが理由かもしれない。
父さんが自衛隊でダンジョン攻略して鍛えていれば…。
父さんが自衛隊のままなら…。
こんな事にはならなかったかもしれないのにって思ってしまった。
その時、俺の将来の夢が決まった。
家族を、大切な誰かを、守れるように強くなる。
母さんはあれ以来涙を見せていない。
いつも通り、いやいつも以上に笑顔で振舞って俺と唯の世話に仕事、家事と沢山頑張っている。
もちろん、手伝えることは手伝ったし俺も働いた。
しかし、小学生ではまともに働けるところはなくお手伝い程度、中学でバイトを始めたが給料は安かった。
学校を辞めようかとも考えたけど母さんにバイトを始める条件として成績の維持を言われていたので辞めることも出来なかった。
そして、8年経った今。
俺は今日で15歳になる。
「本当になるの?」
「うん。母さんと唯を守るために俺は強くなりたいし、お金も稼げるから」
母さんが心配そうに玄関で靴を履く俺を見てくる。
「お金なんて私が稼ぐから勇樹は気にしなくて良いのよ?」
「唯の分も含めて学費すごい必要だろ? 母さんこれ以上無理したら倒れちゃうし、俺がこれまで沢山頑張ってきた事知ってるだろ? それじゃあ、夜には帰ってくるから!」
「あっ!」
「行ってきます!」
後ろで母さんが何か言おうとしたのを聞かないように急いで外に出る。
心配してくれる母さんの気持ちはありがたいし、嬉しい。
でも、行かなきゃダメなんだ。
ここで行動しないと始まらない。
俺は走りながら目的地となる市役所へと向かった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
80年前、世界の7つの国に巨大な柱が出現した。
その柱は巨大な塔のようであり、7つの国の首都に突如生えるように出現したそれを国々は調査し始めた。
1階は何かの施設のようで何もなく。
2階以降には摩訶不思議なモンスターが闊歩しており、武装した軍人達が討伐したり、捕獲したりしながら登っていったが、階層が上がる毎にモンスターの強さが強くなり、6階に到着する頃には武装した軍人ですら手も足も出なくなった。
更に、塔はどのような技術を用いても破壊はもちろん、削る事さえ不可能だった。
そして、何の目途も経たぬまま1年程経った時、世界各地で塔の中に居たと思わしきモンスターが出現していることに気づいた。
最初は田舎や人がいない地域に出現しており、そこで繁殖したのか数を増やしていた。
気付くのが遅れた影響で大量のモンスターが街を襲い、軍隊が出動するも多くの犠牲者を出す事となった。
そんな時、後の探索者と呼ばれる者達が地上を闊歩するモンスター達を討伐し始めた。
最も早くそれに気付いたJ国は、国土面積が塔が出現した他の国よりも最も狭く、多様な文化を許容する国だった。
そんなJ国は探索者と名付け、探索者育成に乗り出す。
探索者は塔にある機会によってステータスとジョブを得る事が出来、その力によってモンスターを軽々と屠る事が出来たのだ。
J国はこの事を世界に発信し、強大な力を持つ探索者を管理する機関、探索者協会を立ち上げ、塔がある国に協力を求めた。
同盟国であるA国は国土が広く、多くの被害が出ておりすぐに乗った。
C国とR国は協力を拒否し、自国で探索者の管理を行うと言った。
U国は塔が無い国にも探索者を派遣する事を条件に協力し、F国とG国も賛同した。
その結果、瞬く間に探索者という存在は世界中に広まり、世界各地に現れたモンスターの討伐を成功させた。
そして、各国はモンスター発生の原因究明を行った。
そこで、ダンジョンという異空間が至る所に精製されている事実が分かった。
ダンジョンは一定期間間引きを行わないとダンジョンからモンスターが溢れる、ダンジョンブレイクが起こるという事が分かった。
また、ダンジョンを破壊するにはダンジョンの最深層にあるコアを破壊しないとどうやってもダンジョンを無くすことは出来ないという事も判明した。
ダンジョン内ではモンスターが無限に生成され、尚且つダンジョン内は生成されるモンスター達が生息しやすい環境であり、地の利も数もモンスターが優位な状態でのダンジョン攻略は非常に危険な行為だ。
それでも、ダンジョン攻略しないといけない理由が人類にはあった。
それは、ダンジョンブレイクしていないダンジョンがあった事だ。
ダンジョンブレイクが起きていないダンジョンはどれも難易度が高く、強力なモンスターが居るダンジョンだ。
その事から高名な学者はこう結論付けた。
強力なダンジョン程、ダンジョンブレイクまでの猶予期間はあるが、ダンジョンブレイクした際の被害は最低でも今の10倍と…。
これにより、各国は探索者の育成と取り込みに必死になった。
ダンジョンの破壊を行うために優秀な探索者は多く必要だ。
ただ、人はそんな簡単に育たない。
なら、居るところから手に入れようと考えた国々はより良い対価で釣る。
そんな環境でせめてダンジョンの有効活用方法がないかと考えられ、素材の解析が行われた。
すると、モンスターの素材は既存の物よりも優れた物が多い事が分かった。
第2の心臓と思わしき魔石は石炭や石油等の化石燃料の代わりになり、牙や爪は既存の金属よりも加工しやすくモンスターに攻撃するのに有効で、毛皮は既存の布よりも頑丈で通気性が良く、可食部位は非常に美味で、金属は既存の金属以上の性能を誇った。
これにより、モンスター素地が高値で取引され、探索者はお金を持つようになる。
お金が稼げるとわかれば命がけだとしても探索者を目指すものが増えるが、数が増えたことにより教育が間に合わず質が低下した。
それはモンスターによる犠牲者や、犯罪者が出て治安の低下等多くの問題を誘発する。
そして、世界各地で起こった様々な問題を解決し今の世界を築き上げたのが、伝説の5人の探索者だ。
【爆雷の魔女】久世 稔(くぜ みのり)
【勇者】星野 巧(ほしの たくみ)
【一騎当千】ケイブ・オルックス
【竜殺し】ミハイル・セルゲーエヴィチ・ドラゴフ
【騎士王】トーマス・エドワード・グレイ
お金になると国と癒着し暴利を貪った探索者協会を国から独立させ、R国、C国等の探索者協会非参加国さえ無視して民のために各国を救った。
探索者にはランクがあり、下から下級、中級、上級、最上級、特級となる。
彼らは特級で、特級は現在世界に12人しかいない。
特級は誰もが最上級の探索者よりも数段上の実力を持っていると言われ、特級のほとんどが固有スキル持ちだ。
固有スキルが無くても強い者はいるが、特級で固有スキルがない人は居らず、上級以上の探索者は大抵が固有スキル持ちの為、固有スキルを持っていれば成功者になると言われる程希少な物だ。
強いダンジョンでは攻略した際に後天的に固有スキルを授かると言われるが、眉唾な話だな。
それが事実だとするなら特級が独占する事だろう。
今は大抵の探索者協会支部でスキル判別が出来るが、昔は自己申告制だった為、虚偽申告等も多かった。
そういった眉唾の話はその時からずっと流れている都市伝説的な物だ。
ちなみに、虚偽申告は犯罪だからするなよ?
キンコンカーンコーン、キンコンカーンコーン。
おっ、もうそんな時間か。
今日の授業はここまで、もうすぐ受験だからお前ら探索者の歴史は忘れるなよ。
今の世の中、探索者が居なければどんな職業になっても成り立たないからな。
「はぁ…」
「
「
「あぁ、今日だったね。まぁ、幼馴染の彼を信じようよ」
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