第3話 深夜の再会は、お静かに



ガッシャ――!


爆風に吹き飛ばされたシャルクスの身体は、商館の前にそびえる大木へと一直線に飛び込む。枝と枝の間に突っ込んだ彼は、奇跡的に衝撃を緩和され、木の上でぷらぷらと揺れていた。



シャルクス:「……助かったぁ……」


と、安堵の息を漏らしたその瞬間――


シャルクス:「うわわわわ・・・・・」


ズササササササ


枝が悲鳴を上げるように次々と折れ、シャルクスは無様に落ちていき、最後に地面にずしんと尻もちをついて止まった。



シャルクス:「いたたた・・・んっ。」



顔をしかめ、腰をさすりながら立ち上がった彼の視界に、駆け寄ってくる人影が映る。



シャルクス:(まさか……嘘だろ。)



その顔を見た瞬間、シャルクスの瞳が大きく見開かれた。



シャルクス:「・・・・カミーア。」



近寄ってきた人影も驚いた様子で立ち止まる。



カミーア:「シャル・・・」



シャルクス:「・・・・・」



言葉にならない沈黙が、二人の間に流れる。


シャルクスは何かを言いかけたが――



シャルクス:(……ここでは、まずいか)



壊れた窓の向こうから、鋭い視線が突き刺さる。彼は反射的に踵を返し、カミ―アが止める間もなく、夜の闇へと走り去った。


カミ―ア:「・・・・」


ジャン:「姉さん。今の奴。」


遅れて駆け寄ってきたジャンが問いかけると、カミーアは静かにうなずいた。



カミ―ア:「シャルだよ。」



ジャン:「やっぱり。こんなとこで何やってたんだ?、シャルクスさん。」



カミ―ア:「さあね。」



ジャンが困惑する中、最後に現れたブルトスが肩をすくめながら言った。



ブルトス:「あいつとこんなとこで出くわすとはな。で、どうするんだ。」



カミーアは一瞬だけ空を見上げただけで、すぐさま決断する。



カミ―ア:「追うよ。」



ブルトス:ジャン:「へい。」


三人はシャルクスの後を追って駆け出した。



壊れた窓の縁に立ち、クリストファーは夜風に髪をなびかせながら、遠ざかるシャルクスたちの背をじっと見送っていた。



クリストファー:「さて、さて。この俺から逃げきれるかな。」


その口元には、どこか楽しげな笑みが浮かんでいる。


――が。



エリーゼ:「そんなことよりも。」




背後から冷ややかな声が飛んできた。



振り返ると、そこには弓を背負った女性――エリーゼが腕を組み、眉間にしわを寄せて立っていた。



エリーゼ:「ここの修理代、あなたの今月のお小遣いから差し引いておきますからね。よろしく。」



クリストファー:「なにぃー!そりゃねぇぜ、エリーゼ。ただでさえ、少ねぇてのによぉ…」



クリストファーは顔を引きつらせ、両手を天に掲げて必死の抗議を試みる。だが――



エリーゼ:「まだ終わってないわよ。」



抗議は聞き入れられず、エリーゼはくるりと踵かえし、さっさと部屋を出ていってしまった。



クリストファー:「ちぇ……わかりましたよ……」



肩を落としたクリストファーは、しぶしぶその後を追い、静かに保管室を後にする。



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