第5話 焼き栗の屋台
//SE 市場の喧騒(人々の声、商人の掛け声)
//SE 栗が焼ける音(徐々に大きくなる)、足音(2人分、並んで歩いて店の前で止まる)
「どうだ? 近くに来ると香ばしい甘い匂いがするだろう?」//右側、嬉しそうに。
「なんでそんなに嬉しそうなのかって? それは……」//繋いだ手を見て、赤面。
(少し間を開けて、言葉を選ぶ)
「わ、私も栗が好きだからな!」//目線を逸らして。
「……なにを笑っている。嘘ではないからな」//正面、近距離、顔を覗き込んで睨みを利かすように。
「本当に好きだぞ? この店だって幼い頃から通っているくらいだ」//右側、言い聞かせる感じで。
「なんで好きなのかって? キミは……なかなかに疑り深いな……」//呆れたように。
「甘過ぎない味。あとは、そうだな……栗の花言葉も気に入っている」//凛とした感じで。
「どんな花言葉? フフッ、教えてほしいか……?」正面、近距離、焦らすようにいたずらっぽく微笑む。
(少し間を開けて)
「フッ、また今度だ」//優しい笑顔ではぐらかす。
「そんなことよりも、店の前まで来たんだ。商品を購入しないのは礼儀がなっていないのではないか?」
//SE 布が擦れる音、金属音(主人公がジャケットの内ポケットから、銀貨の入った袋を取り出そうとする)
「コラコラ、男だからって出そうとしなくていい!」//呆れるように。
「……ふむ。確かにキミの言う通りだ。このブリュタール地方に限らず、一般的な貴族社会では、そうするのが当たり前」
//SE 布が擦れる音(シャルロッテが主人公の手を強く握る)
「だからこそだ。私はキミと対等でいたい」//正面、凛々しく。
「キミの世界ではそういうものなのだろう?」//近距離、真っ直ぐに見つめる。
//SE 紙袋の音(店主が焼き栗をサービスで差し出す)
「えっ?! あ、いや! しかし――」//右側、戸惑う。
//SE 紙袋の音(主人公が代わりに受け取る)
「お、おい」
「人からの好意は受け取るのも貴族の務め?」//虚を突かれたように。
「ついこないだまで、貴族でもなかったキミがそれを言うのか……」//不貞腐れるように。
(小さく咳払い)
「まぁ……そうだな。間違ってはいない……本当に困った奴だ」//少し悔しそうに呟く。
(少し間を開けて)
「店主、ありがとう」//華が開くように優しく微笑む。
(しばらく間を開けて)
//SE 市場の喧騒(行き交う人々の声、商人の掛け声、馬車の車輪音、布の擦れる音)
//SE 足音(2人分、石畳を革靴。並んで歩く)
「その袋、一体、どれくらいの栗が入っているのだろうな……」//右側、苦笑い。
//SE 紙袋の音(主人公が中身を確認)
「なに? 30はくだらない? そんなにか!?」
//SE 紙袋の音(シャルロッテが確認)
「本当だな……ありがたいことだが、さすがにこれ全部は使わないしな……」//何かを考えるように。
//SE 足音(2人分、立ち止まる)
「いや、あ、あれだ! さすがの料理長もこんな量の栗は一度に消化できないという意味だ!」正面、誤魔化すように。
「ああ、そうだ! 火を通してしまったら足が早いしな」//少し早口で。
「じゃあ、ここで数を減らせばいい? いや、それはそうなんだが……うむ」
(考え込む間)
「……仕方ないな。じゃあ、あそこのベンチで少しだけ食べていくか」//ちょっと困ったように、市場から少し離れた噴水のある場所を指差す。
//SE 足音(2人分、石畳を革靴。並んで歩いていく)
//SE 市場の喧騒(徐々に遠ざかっていく)
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