第4話 市場

 //SE 市場の喧騒(行き交う人々の声、商人の掛け声、馬車の車輪音、布の擦れる音)

 


 //SE 足音(主人公は石畳を革靴。シャルロッテは赤いハイヒール。並んで歩く)

 


「ふむ……活気があるな。ここはいつ来ても訓練場とは違う熱がある」//右側、少し誇らしげに。

 


「そうか、驚いたか? この市場は王都でも指折りの規模を誇るのだ。騎士団の補給も大半はここで賄っている」



「この甘い匂いは何か?」



 //SE 足音(2人分、ニ歩歩いたら止まる)



 (シャルロッテが匂いを嗅ぐ)



「ああ、これは栗だな。王都を含む、このブリュタール地方では、ああやって露店で焼いたものが売られているんだ」市場にある露店を指差す。



「フフッ、珍しいか? 賑わっていて聞こえづらいが、耳を澄ましてみろ。パチパチといった焼けた栗が弾ける音がするぞ?」//右側から、近づく。



「えっ、聞こえない? そんなはずはない! ここからでも充分聞こえるぞ?」



「いや、そのままでは聞こえないぞ?」//呆れるように。



「どうすればいいって……こうして手を耳に当ててみろ」//右側から、後ろ近距離。



 (右側、耳元からシャルロッテの息遣い)

 


 //SE 布が擦れる音(互いの衣服が触れる)

 


「こうだ」右側、耳元。



 (シャルロッテの息遣い)



 //SE 栗が弾ける音(パチパチ)数秒ほど



「だろう? パチパチと聞こえるのが、栗を焼いている音だ」//嬉しそうに。



 (少し間を開けて、お互いに栗の焼ける音に聞き入る)



 (密着したことで、主人公が感じたことを口にする)



 //SE 布が擦れる音(シャルロッテが主人公を突き放す)、足音(主人公がシャルロッテに押されてよろける)



「せ、積極的? 馬鹿か!?」//正面、大きめ正気を疑う感じ。

 


「か、勘違いするな! 私はただ、キ、キミがよく分からないことを言うから……教えてやっただけだ」//最初は大きめの声、あとから恥ずかしさが強くなり小声になる。



「わかればいいんだ。わかれば……」//内心ドキドキしている。



 (少し間を開けて)



「って、今度はなんだ? 変な顔をして」//正面、近距離、覗き込む。



「ああ、この格好か。あまり似合わんだろう?」//少し声が離れる。

 


 //SE 布が擦れる音(スカートの裾を僅かに上げる仕草)

 


「……しかし騎士爵とはいえ貴族の出だからな。ある程度は着飾らないといけないのだ」//自信なさそうに。

 


「このローブにドレス、ネックレスもそうだな。全く動きにくくてかなわなん」//嫌そうに。



 //SE 布が擦れる音、金属音(シャルロッテでローブに触れて、ネックレスを触る)

 


「なぜ赤くなる?」正面、近距離、覗き込む。



「綺麗の女性が……人前で裾を上げるのは良くない……?」//少し離れてピンときていない感じで。



 (シャルロッテが言葉を飲み込んで理解しようとする間)



「すまない……私は今何を言われたのだ?」//依然として把握できない感じ。



「い、い、いや! もういい! 何回もそのようなことを口にするな! 恥ずかしさでどうにかなりそうになる!」//顔を真っ赤にして視線を逸らす。



 (少しの間、シャルロッテが息を整える)



「……だから、そんなに見るな」//小声、この場から逃げたいような感じで。



「他意はない……って、キミはそんな言葉遣いしないだろう?」

 


 (仕切り直すような小さな咳払い)

 


「……まったく、もういい。まともに相手をしていたら、日が暮れそうだ」



「怒ってはいない。ただ、マイペースだな。とある意味で感心していただけだ」//少し嫌味な感じで。

 


「だったらいい……? はぁ、キミには嫌味が通じないのか……本当に色々と困った奴だ」//呆れつつも少しはにかむ。



「あ、そうだったな。帳簿から抜けていたの補給だったな。が、その前に――」

 


 //SE 布が擦れる音(シャルロッテが主人公の手を引く)



 //SE 足音(シャルロッテに引っ張られて主人公が少しバランスを崩す)



 //SE 布が擦れる音(シャルロッテが主人公を受け止める)



「フフッ、びっくりしただろ? やられっぱなしは性に合わんからな」//正面、近距離、得意げに。



 (シャルロッテが主人公の優しく手を離して、体を起こしてあげる)

 


「いや、一緒に栗でも食べようと思ってな……」//少し離れて照れを含む感じで。



「なんとなくなんだが……好きなんだろ? 栗」//様子を伺うように。



「ただ、栗という言葉を聞いた時のキミの顔がいつもと違った気がしただけだ」

 


「そういうことか、キミのいた世界にもあったのだな……」//何かを考え込むように。



 (少し間を開けて)



「――よし……なら、やはり行こう!」//近距離、何か決意したように。



 //SE 布が擦れる音(シャルロッテが主人公に手を伸ばす)



 //SE 布が擦れる音(手を繋ぐ)



「バカ、は、恥ずかしいに決まっているだろう! でも――」



 (息を深く吸う)



「恋仲の男女がこうするのが、キミの世界での当たり前なんだろ?」//伏せ目がちで照れを隠すように。

 


「今日はいいんだ。特別だからな。それに――」

 


 //SE 布が擦れる音(シャルロッテが主人公の手を握る)

 


「私もこうした方が楽しいからな」//正面、覗き込みいたずらっぽく微笑む。



 //SE 足音(2人分、並んで歩く)



 //SE 市場の喧騒(行き交う人々の声、商人の掛け声、馬車の車輪音、布の擦れる音などが徐々に大きくなる)

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