第22話 夜の散歩、到着
割り切れない思いを抱きながら、夏姫は真絢を追う。
「夏姫さんっ!」まだ真絢が夢に導かれ口を開いた。
「それは蝉よ、食べてはいけないわ」
「…………」
「ああもう、夏姫さんたら、そんなに口元を汚して……子羊の食べ過ぎよ、食いしん坊なんだから」
「………………」
「夏姫さん、早く宿題を写して、先生に叱られるわ」
「……………………」
「夏姫さん、そんなに泥だらけになって、泥んこ遊びは幼稚園までよ。いくら幼児体型だからって無茶しすぎよ。でもスモックはよく似合うわ、うふふ」
「………………………」
「夏姫さん! 犬の上に乗ってはダメよ! でもシーズーに乗れるのは幼児体型の夏姫さんだけね!」
「……こいつ」
よりにもよって、夏姫が怖気を振るうくらい嫌いな犬と仲良くしている夢のようだ。
夏姫は真絢を蹴り飛ばして、外に叩き出したい欲求を必死に押さえる。親友だが殺意を覚えた。
すーはーすーはーと大きく呼吸をし怒りを沈める。
──真絢さんは友達、真絢さんは親友。悪気はない、悪気はない……しかし……。
どうも真絢の中の夏姫は、とんでもないキャラとして認知されているらしい。
起きた後、一度とっくり話し合う必要があるようだ。
ぺたんぺたん、と真絢はその後彼女が起きている間によく行く、図書館にたどり着き、書架の前でしばしゆらゆらすると、不意に踵を返して元来た道を戻り始めた。
連絡通路の扉まで引き返すと、ご丁寧に扉の鍵をかけ直す。後は一直線に寮の自分の部屋へと入り、ベッドに横たわる。
「ふうう」夏姫とどっと疲れた。
そもそも寝入りばなだった。なのに真絢と余計な散歩をしてしまった。
夏姫は反射的に羽織った上着を脱ぐと、自分のベッドへ潜る。
「……はあ」夏姫を寝直すために縫いぐるみのゆっこを強く抱きしめた。本当は起きている真絢を抱きしめたいところだが……。
と、埒もなく考えると、折角寝られるようになったのにどうしてか目が冴えた。
──軽い運動でもしよう。
間が抜けている事に、お腹がグーと鳴る、酷く喉が渇いていた。
「おやつが必要かしら」
だが流石にそれはシスター達も、無理だろう。自分で用意しなければならない。
夏姫は一人がっくり頭を垂れた。
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