詩人彗ちゃんの秋の夜会レシピ1〜彗ちゃんシリーズ2
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第1話 プロローグ
プロローグ
いとこの
背が高く、涼やかな瞳とシャープな輪郭。
白いシャツに黒のパンツ、モノトーンの装いはいつも完璧で、まるで現実の人間ではないかのように見える。
けれど、その完璧さの影には、少し子供っぽい無邪気さが隠れている。
哲学書をめくりながら、真剣な眼差しで呟く――
「シャインマスカットは秋の宇宙の宝石だよ」
思わず微笑んでしまう。その純粋さに、胸がふわりと揺れる。
右の小指で光る銀の指輪。
それを見るたび、誰か特別な人がいるのではないかと、胸の奥がざわめく。
嫉妬にも似た甘い高鳴り、言葉にできないときめき。
だが、それは彼自身が大切にしていた指輪で、私におそろいのものを贈る、と彼は言った。
その瞬間、呼吸が止まるほどの喜びが私を包む。
いつでも、いや、これまで以上に、私は密かに彼の仕草や言葉に心を奪われている。
気づかれないように、そっと、そっと。
今宵は、彗ちゃんのマンションで「秋のみのりづくしの夜会」。
シャインマスカットのパルフェ金木犀のシラップがけ、
グランマルニエとブランデーでフランベしたクレープシュゼット、
ドライいちじくとクリームチーズ、生ハムのバゲット、そしてワイン。
ベランダからそよぐ風が心地よく、夜空には星が瞬いているだろう。
きっと素敵な想い出になる…。
二人で過ごす、この夜のひととき――
どれだけ楽しみにしていたことだろう。
はじまり、はじまり―
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