第3話 コロッケ弁当1

「コロッケ弁当1つ」

「まいどー」


毎回思う、この弁当屋のオーナーガタイ良すぎだろ!

肩幅どうなっているんだ!


コロッケ弁当。

俺の家の近所の弁当屋「べんとーを食べんとー」の看板メニュー。

じゃがいもコロッケとクリームコロッケが二つ入っており、申し訳程度のひじきとたくあんが入っている。

味は五段階評価すると三。

しかし、丁度500円で鼻からハンバーグからの投げ銭で食べられる!

500円が俺に投げられ、俺が弁当を買う、そして弁当屋のオーナが何かに使う。

金は天下の周りものだと思うと同時に、俺は日本経済を回している!!!


こんなくだらないことを考えながら公園のベンチで1人弁当を食う。

最高だ!

明日は、のり弁か。

だいぶ、「べんとーを食べんとー」の先発ローテーションも飽きてきたな。

まあ、このローテーションなら何年経ってもAクラスには入れない。

時間ある時でも、常勝軍団のような弁当屋でも探すか…。


はあ、食べた後は憂鬱だ。



ピンポーン。

俺は、勤務先の玄関チャイムを押して中から人が出てくるのを待った。


「あらー幸村さんの息子さんの智くん!」


半田さんの奥さんがいつものように出てくる。


「ご無沙汰しております」

「昨日はごめんねー。私勘違いしちゃって。ささ、中へどうぞ」


(ごめんねで済んだら警察はいらない!とか大人気ないこと言ってられないな)


「お邪魔します」


俺は、半田さんの奥さんにリビングへと通された。

そして座ってくださいと言わんばかりのソファーに腰を落ち着ける。


「智くん、お昼食べた?コロッケ弁当あるけど」


なぜ今そのチョイス!!!

フィクションだったらベストタイミング!

しかも5パックも山盛り!


「いや、食べたので大丈夫です」

「そおーじゃあ夕飯にでもみんなで食べて!昨日のお詫びということで。帰る時持って帰ってね」

「お気遣い感謝します」


そして、半田さんの奥さんは本題に入る。


「ごめんなさいね。花子、家族以外には人見知りで…心閉ざしてるのよ」

「なるほど」


んーどうアイスブレイクしようか。

「コロッケ弁当美味いぜ食べるか?」

とかか?

いやおかしいな。


「なので、今日の授業には私も同席させていただきます」


何故!?

まーでも誤解も生まれないしそれでもいいか…。


「わ、分かりました。では、娘さんのお部屋に案内していただけないでしょうか」



ふー。

このドアの前に来るのは2回目。

1回目は、嫌な記憶だったが…。

慎重になれ幸村智。

お前ならやれる。


「花子ー入るよー」

「お、お邪魔しまーす」


「あ、お母さん。このコロッケ弁当美味いね」


いや、昨日のJK がコロッケ弁当食ってる!

ナイスタイミング!


「家庭教師の先生がいらしてくれたわよ」


奥さんが一言喋る。


「初めまして、じゃなくてこんにちは幸村智です。今日も家庭教師に来ました」


めちゃくちゃ、睨まれている!


じっと俺を見つめる。

その視線はまるで「また来たよ…」とでも言いたげに鋭く、冷たい。いや、冷たいけど、ちょっと愛嬌がある…。

悪くない表情だ…。


「…」


「…」


睨むだけ!

無言!

気まづい!


「ほら、花子勉強始めるよ。智くんもどうぞ座ってください」

「し、失礼します」


俺はJKの部屋に腰を落ちつける。

そして横にも、半田さんの奥さん。


「…」


「…」


「…」


全員無言、気まづい!


て、あれこの弁当「べんとーを食べんとー」のコロッケ弁当じゃん。


「このコロッケ弁当、美味いけど五段階評価すると三ですよね…」


俺はそう呟いた。


「はい…」


JKは少し口元を緩ませて、そう返事をした。


このアイスブレイク通用するんかい。

人生って分からないな…。

ゴリマッチョ店主ありがとう…。

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