湯けむり英雄の異世界スローライフ〜異世界で温泉を掘り当てた俺、若返りと「魔力強化」の効能で気がつけば最強ハーレムができていた件〜

駄作ハル

プロローグ

第1話 スコップと女神様

 ――気がつけば真っ白な空間に立っていた。


 四方八方何もない。天井も床も曖昧で、自分が浮いているのか立っているのかもわからない。


「……あれ、俺……確か、会社で徹夜して、気づいたら倒れて……」


 胸の奥に残る重い疲労感はブラック企業の過酷な日々を思い出させる。

 毎日上司に怒鳴られ、理不尽なノルマに追われ、残業代も出ない。


 そんな生活の果てに、遂に俺は死んだのだろうか。


「ふふふ、そうでーす!」


 唐突に明るい声が響いた。


 目の前に金髪のツインテールを揺らす可愛い女の子が現れる。

 十代後半くらいのアニメから飛び出してきたような女神然とした姿をしていた。


「よっ、目を覚ましたね! えーっと、東雲賢しののめけんだっけ? 君、過労死でぽっくりいっちゃったの。ブラックすぎる社畜ライフ、お疲れ様でした!」


「軽っ!?」


 あまりに軽いノリに俺は思わず突っ込む。


「でも安心して? 私、異世界転生を司る女神ちゃんなの。君を特別に新しい世界へ送りまーす!」


 ぱぁっと両手を広げ、まぶしい光を散らす自称女神。その無駄に神秘的な光景に、彼女の言葉の信憑性も高まる。


「い、異世界転生……マジでラノベみたいな展開だな……」


「そうそう、チート能力とか期待してるでしょ?」


 女神がにやにや笑い、俺はごくりと唾を飲む。

 この展開、もしかして俺にも勇者の剣とか、最強魔法とか……?


「じゃんっ!」


 女神が手を振ると、俺の目の前に現れたのは──


「……ス、スコップ?」


 それはどこからどう見てもただの古びたスコップだった。


「はい! あなたのチート武器でーす!」


「いやいやいや、待て! これ、どう見ても工事現場のアレだろ!? 剣とか、魔法とか、そういうのは!?」


「そんなテンプレ、もう飽き飽きでしょ? だからスコップ! 斬新でしょ!」


 満面の笑みでたわわな胸を張る女神。いや、いくらなんでも斬新すぎる。


「……マジかよ……。俺、異世界で農業でもやれってのか……?」


「ノンノン。見くびっちゃーいけない。これ、ただのスコップじゃないんだよ」


 女神が指を鳴らすと、スコップがふわりと光る。


「このスコップはね、掘れないものが存在しない伝説の聖具なの! 岩だろうと鋼鉄だろうと、モンスターだろうと、全部まとめて掘れちゃうんだよ!」


「魔物も掘れるのかよ!?」


「そう! ズバッと掘って、ボンッて埋めちゃえば無敵! ね、無双できそうでしょ?」


 女神は胸を張りながらドヤ顔をする。


「……いや、なんか聞けば聞くほど土木作業員っぽいんだけど」


「そんなことない! スコップは万能! 戦場でもスコップは優秀な武器なのだ! しかも──」


 女神が俺の耳元で小声で囁く。


「掘り当てたものには、特別な力が宿るの」


「特別な力?」


「例えば……泉を掘り当てたら、それはただの水じゃなくて奇跡の泉になる。宝石を掘ったら、それは魔力を秘めた宝石。つまり君は、この世界のどこを掘ってもお宝ザックザク! 夢いっぱいのスローライフが待ってるのだー!」


 ぱちぱちと自分で拍手をする女神。


 ……正直、いまだに半信半疑だ。


 けれど、俺は現世で何も残せなかった。ならば今度こそ、スコップだろうとなんだろうと、与えられたチャンスを掴んでみるのもいいかもしれない。


「……わかった。そのスコップと一緒に、もう一度、生きてみるよ」


「おっけー! その意気だ!」


 女神はにっこりと笑い、俺の背中を軽く押した。


「では心躍る剣と魔法の世界へ、行ってらっしゃーい! 素敵な異世界ライフを!」


 次の瞬間、俺の視界は光に包まれ、意識は闇に溶けていった。

 こうして、ブラック企業で擦り切れた社畜の俺は、聖なるスコップとやらを手に、異世界へと放り出されたのである。



◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 

あとがき


皆様初めまして、あるいはお久しぶりです!駄作ハルと申します!

ハーレム、無双、スローライフを詰め込んだ王道ファンタジーが幕を開けました!

本作はGAウェブ小説コンテストに応募しております。完結まで毎日投稿実施中!

ぜひ感想や評価での応援をよろしくお願いします!

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