私は、昔のゲーム作品『エメラルドドラゴン』が大好きで、いつか自分でも竜が主人公の物語を書きたいとずっと思っており、そんな背景もあって、なぎゃなぎ先生の作品で本作のタイトルに強く惹かれ、リアリティにこだわった空気感を参考にさせて頂きたいという気持ちで読み始めたのですが、やわらかな語り口からは想像もつかないほどのリアリティと深いテーマ性に圧倒されました。
表面的には「かわいい竜の女の子の成長物語」に見えるのに関わらず、その実、ネガティブで重厚なテーマを真正面から扱っており、純真な語り口がその重さを和らげるよりもむしろ、逆に読者の心に深く突き刺さる構造に感じました。
そして、そこを和らげるのは、文体よりも物語を貫く「太陽」というモチーフ。
最初の友だちであり、いつでも温もりをくれる存在であり、そして失った者たちが還る場所でもある。
主人公が太陽を見上げ、そこに大切な人の気配を感じられるようになるまでの過程には、子どもの死生観や心の回復が非常に繊細に織り込まれています。
「この世界は残酷で、理不尽で、時に絶望的である。しかし同時に、無条件の愛や、真の友情や、温かな絆も存在する。失うことは避けられないが、その記憶は永遠に残り、新しい出会いは必ずやってくる。だから、太陽を見上げて、前を向いて生きていこう」
そんな強いメッセージ性を竜の子という題材を通して、私は受け取りました。
全体として、温かな語り口と重厚なテーマが見事に共存した物語であり、自分にとっても特別な読書体験となりました。