自称魔法使い×借金まみれ青年の同居生活【4-6】愛を刻む夜、支配と囁きのあいだで

「向こうが提示してきた価格、聞けよ!二十万円だぞ、二十万円!まだ、宿泊と食事が提供できることは伝えていないのにだ」


「嘘だろ」


「ほら、文面見てみろよ」


ツバサはスマートウオッチの小さなディスプレイをアレクセイの眼前に突き出す。


「純粋にアレクから料理を教わることに、九日間で二十万円だ。やった。アレクが認められたんだ。アレクの料理はネットの世界を通じてだって伝わるって俺、思ってた!」


GWに突入した初日の午前中。生徒は女性でマイ包丁を一式持ってアールハウスにやってきた。最寄り駅の茅野までは電車を使って。そこからは、タクシーで。


送迎のサービスはしない。

至れり尽くせりは、いずれツバサとアレクセイの首を絞めることになるからだ。

なんとかして自力でたどり着いてもらう。


到着初日は移動で疲れているだろうからレッスンは希望があればとしていたのだが、彼女はすぐにエプロンを出してきた。


夜は温泉に入り、翌朝からまた料理修行。

動画撮影隊としてレッスンに関わったツバサは、元々料理が出来た彼女が、さらに加速を増して上手くなっていくのを感じる。


能登もやってきて写真を撮ってくれた。

九日間のレッスンはあっという間。


彼女を送り出したアレクセイは少し疲れたようだが、満足そうだ。


「長時間のマンツーマンはすごいな。隣でメキメキ成長していく様子が手に取るようにわかる。ツバサ。こんな機会めったにない。ありがとう。感謝している」


「何、しんみりしているんだよ!こういう機会、俺、これから幾らでも作り出すよ!」


「頼もしい。東京での初めての夜が嘘みたいだ」


「それ無しで。でも、俺のこと、アレクセイが成長させてくれたんだよ。それと、奥蓼科のみんな。厳しいけれど豊かな自然も」


急にアレクセイがツバサの腕を掴んでくる。


「どうした?」


「その⋯⋯ツバサがどこかに行ってしまいそうな気がして」


「行かないよ。ここが俺の居場所だもの。心配ならしっかり捕まえておけよ」


「そうする」


アレクセイがツバサを抱きしめてくる。


「あらららら、お熱いこと」


ちょうど外出から帰ってきた大野が冷やかしてくる。


「なあ、アレクセイ。秋になったら狩り女子のジビエ料理修行なんてどうだ?獲った獣を上手に料理したいって需要、結構あんのよ」


「それいいな。二泊三日か三泊四日でどうだ」


「平日だって休みとってくるぜ、オレのファンは」


「大した自信だ。さすがバンビ先生!」


***


久しぶりに、アレクセイとした。

精神的に充実しているのと肉体的に疲れているせいで、行為は激減。


でも、二人のタイミングが一致したとき、その時間を集中して、心ゆくまで味わおうと思っている。


「だから、乳首止めろって」


ワイパーされて、身体をねじる。

筋肉がついた背中や腿を撫で回され、身体全体を敏感に仕上げられる。


農作業でできた日焼け。

うっすらと見える目元のシワ。


同じ分だけ年を経た、人によっては劣化といわれるものもツバサには愛しい。


「もうお漏らし」


アレクセイがツバサの雄を口淫でたっぷり可愛がった後、ゴムを装着してくる。


「してないって」


反抗している最中にひっくり返され、うつ伏せに。

腰を高く上げられる。


「いい眺めだ」


「そういう感想いらないから」


「最中は、もうちょっと、可愛げのあることを言え」


アレクセイは少し拗ねながら、すぼまりに口づけ。


器官を性器に変えるために舌と指での準備が始まる。

回数が減ったせいで、するときは堪らなく感じる。


挿入前に必ずするのは、指での前立腺いじめ。

もうここで、ツバサはツバサで無くなる。


声は甘ったるくなり、ロクに言い返せなくなる。

だって、トントンと、さわさわと、ぎゅっぎゅっ。


繰り返される甘い責め苦が大好きだから。


どれをされても、


「もっとおっ。もっとしてえっ」


と身体を震わせながら悶えてしまう。


その格好は様々で、アレクセイに向かって足を大きく広げ、気持ちがよくなりかけている穴を晒しながら。


もしくは、四つん這いになって腰を高く掲げ、アレクセイに穴が見えやすいように、そして、触りやすいようになりながら。


指が入ってきてお目当ての部分を触ってもらえると、


「好きっ、好きっ、それ、好きっ」


与えられる刺激に、素直な言葉を吐き、ツバサは涙を流して喜ぶ。

可愛がっていじめる場所と名付けたそこに、アレクセイが嫉妬を覚えるぐらい。


「ほら、尻の中は仕上げてやった。ツバサ、私の指を咥えて、前立腺をぎゅっぎゅっされながら尻いきしてみろ」


命令されて、今回、ツバサは四つん這いの恥ずかしい格好で「んああああっ」と背中をのけぞらせていく。


アレクセイは「上手だったな」と褒めてくれるが、前立腺に夢中になりすぎているツバサに今日は嫉妬を越えて少し怒っている。


「連続してぎゅっぎゅっしような」と普段しない宣言をされ、立て続けに尻いきさせられた。


息つく間もなく、ローションまみれで湿った音がするそこを、くちゅくちゅとされ、短くも強烈な快楽を与えられる。


それが終わったかと思ったら、今度は「ゆっくりとしたトントンな」と焦らされる。


トン、トン、トン、トン。


唇を塞がれて舌の蹂躙を受けながら、尻穴の方も優しくじっくり。


じわじわと腰骨のあたりから快感がやってきて、


「俺っ、駄目になっちゃう、これっ」


とアレクセイに完敗を告げる。


それでも、柔らかい責めをアレクセイは止めることなく、ツバサを最後には泣き叫ばさせる。


「ああああああああああっっっ。もう許してっ。許してっ」


こんなにも乞うているのに、ただの雄と化してしまった魔法使いは無慈悲だ。


「いや、また最初に戻るだけだぞ?今度は、ぎゅっぎゅっ、さわさわ、トントンの逆再生だ」


とさらに追い込んでくる。


本当にそれは何度も繰り返されて、ぎゅっぎゅっは、ぎゅうっ、ぎゅうっに、トントンはさらにゆっくりしたものに変わっていく。

さわさわはどこかに消え去ってしまった。


ツバサは自分の内部がうねりまくっているのがよく分かった。

これはとてつもないのがくる。


そのことを、アレクセイに報告する。

ここまで気持ちよくしてもらっているのに、勝手にイッてしまうのが申し訳ないからだ。


雄としての支配欲がセックスのときにダダ漏れてしまうアレクセイにちゃんと伝えると、彼が機嫌がよくなることもツバサは分かっている。

そして、もっと気持ちよくしてもらえることも。


彼の指が、ツバサがよすぎて泣いてしまうところをじっくり探っている。


ぎゅうっ。

「あっ」


ぎゅっうっ。

「ああっ」


ぎゅっううううっ。


強く押されたそこから快楽が溢れ出す。


「ひいいいいっ」


と情けない声を上げて、ツバサは大波のような尻いきを迎える。


何度も中で痙攣し、その度に、アレクセイの指を咥えていることを感じた。


ゆっくりと指が引き抜かれてようやく、前立腺いじめが終わる。

そして、ここからがようやく本番。


腰骨を掴まれたら、もう逃げられない。


「そろそろ、私も楽しませてくれるか?」


と聞かれ、アレクセイの開いた足の間に潜り込んでまず口淫。


涙と鼻水が交じるぐらい、自分の喉奥にあてて、アレクセイの雄を楽しませる。


「⋯⋯ああ、いいぞ。ツバサ、上手だ」


臨戦態勢に入ったアレクセイが、ツバサを布団に寝かせて大きく足を開かせる。


穴を指で開いて、ツバサはアレクセイを誘う。

彼の鼻息が荒くなる。


コンドームを付けていない、熱くて堅い先端があてがわれて、ツバサの内部をかき分けるようにゆっくりと入ってくる。


「あ、⋯⋯あ~っ」


特別な異物感に喉奥で叫んでいると、


「シーッ。静かにな」


アレクセイがツバサの背中に上半身をピッタリ付けて体重で押しつぶしてくる。


布団の端を掴む手に手を重ねられ拘束され、


「今度は私が満足するまで、この中、擦っていじめていいか?」


と耳元で聞かれる。


小柄な方のツバサは、大柄なアレクセイの下になるとどうやっても逃げ切れない。


少しでも逃走の素振りを見せると、体重をかけてツバサの小柄な身体を容赦なく潰してくる。


普段、彼が眠らせている独占欲と束縛が丸出しになるこの瞬間が好きだ。


だから、アレクセイの下で彼に押し潰されながら、


「うん。して。思いっきり。俺が嫌がってもして」


と恥ずかしいセリフも言えてしまう。


前立腺いじめで何度もいって、受け入れる状態万全の尻穴の奥をアレクセイが激しく突いてくれるからだ。


身体を重ね始めたばかりの頃は少なかった体位のレパートリーは今では少し増え、座位がお気に入りになった。


アレクセイがピストンしすぎて息が上がってくると、ツバサは彼のあぐらに対面でまたがり、騎乗位みたいに自分主導ですぼまりに埋めていく。


アレクセイのそれをしっかり収めるまでには時間がかかる。


痛みや緊張を散らすため、彼がツバサの乳首をカリカリと猫みたいに刺激を与えてちょっかいを出してくる。


「それ、止めろよ」


と言う割には乱れてしまうツバサのことを知っているので、アレクセイのいたずらはもっと過激になる。

例えば乳首を軽く引っ張ったり押しつぶしたり。


すぼまりの方は、ようやく最奥までたどり着く。


キスを繰り返す余裕ができてくると、尻たぶをがっちり掴んで身体を揺らして欲しくてたまらなくなる。


最初はゆらゆらと。

徐々に、突き上げるように。


分かっているアレクセイはツバサを抱えて壁と壁の角の部分に。

そこに座ってツバサの逃げ場を無くす。


「駄目だって。それ、さすがに」


顎を上げて乱れると、アレクセイが喜んで、もっと激しくしてくるのは分かっていた。


「⋯⋯お願い。アレク」


「うん?もっとか」


彼の肩に額をつけ、声を出さずに頷く。

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