自称魔法使い×借金まみれ青年の同居生活【2-4】アレクセイの丁寧すぎる夜の暮らし

でも、条件反射みたいに、自動的に差し出していた。


面白いほどツバサの舌は唾液たっぷりで、それは舌を食べるように含んできたアレクセイに吸い取られていく。


「うう、んっ」


感じすぎて、身体に力が入る。


「ツバサ。この後どうしよう」


「続け、て」


「何を」


腰を振って伝えたが、無視された。


「トントン、もっと、して⋯⋯」


掠れる声は甘い。死にたい。


「ツバサ。ここ、才能あるぞ」


「才能って。ふざけんな」


もっとしてなんて、うっかり甘えてねだってしまい、自称魔法使いの顔が見られない。

だから、肩に額を当てて毒づいた。


内側でぷっくり膨らんだ部分への指の腹での蹂躙は続いていて、悶えさせるツバサの声をどんどん大きくさせる。


「ああん」だの「いあっ」だの、お前、どっからそんな声と自分に問いたい種類のが連発。アレクセイを楽しませているようで悔しい。


その度に、周りに漏れないようアレクセイの唇で塞がれた。


「ツバサ。お前のここ、ずっと、可愛がらせて欲しい」


「あ、っんはっ」


耳元で言うな、そんなことをと言い返したい。

だって、ジンジンする。


耳朶やうなじ、それに、指を入れられている穴が、全部同時に。


もっと、太いのが欲しいかもとうっかり言いたくなってしまうのだ。


「表現を変えて、いじめさせて欲しいの方がいいか」


「どっちでもっ。両方っ。あ、あ、あっ。好きだ。それ、好きいっ」


ツバサの声に応えるように、くるくるとそこを指で回された。


「とにかく、尻でされるのが好きか?じゃあ、ここ、可愛がっていじめる場所、って名前つけよう。ツバサが可愛がっていじめる場所を指でしてって言ってくれたら、間違いなく可愛がっていじめてやれる」


「前立腺で、いいだろうがっ」


「情緒がない。ほら、もう少し強めのどうだ?」


「ひ、い」


「そんな切なげな声、漏らすな」


そう言うくせに、今度は指の腹でトントントントン、トントントントン、トントントントン。


やめろ。気が狂う。


ツバサは片腰を押さえられたまま、アレクセイの腕の中で身体をもぞもぞ動かし続ける。


やがて、足を布団の中で大きく開かされた。


「あっ」


そのせいで、指がすぼまりの中にさらに入っていったのが分かった。


「ツバサは咥え上手だ。今度は私のを咥えさせたいな」


「く、咥える。咥えるからあっ」


目尻からは涙。

自称魔法使いがそこにキスしながら吸ってくれた。


「アレクセイが可愛がっていじめてくれる場所、いいっ」


恥ずかしいのに言ってしまった。

アレクセイがそれを喜んで、前立腺への刺激を強くしてくれるのが予想が付いたから。


「いい、すごく、いいっ。いっぱいされたい」


「うん。そうだな。ツバサは、私に可愛がっていじめる場所をこうやってトントントントンされるのが大好きなんだ」


さっきから似たようなセリフを繰り返しているような気がする。

二人とも馬鹿になってしまったんだ、きっと。


予想外だったのは、ふんわり笑うアレクセイと目があって、自分の身体なのに、勝手に尻穴が絞まり、尿意に似た何かがせり上がってきたこと。


「何、これ?」


「うん?この様子、尻いきしそうな感じだな。射精の方はもう、いいか」


「やだ、怖いっ」


「あの晩は上手に何度もいけたぞ?」


「知らねえし。アレクセイ、俺の中」


「小刻みに震えている。尻いきしたくて、しょうがないって言っている」


「知ら⋯⋯」


「意地を張るな。さあ、少し身体の力を抜いて、気持ちよく尻いきしろ。導いてやるから」


「導くって、何、んあっ。あっ、あっ、あっ」


「すごい収縮だ。あの晩以上だぞ、ツバサ。尻穴が成長したんだな。上手にできている」


尻の中での指の蹂躙が激しくなってきた。


「ツバサ。約束しろ。今度から、私に尻いきを手伝わせるかわりに、交換条件で私のも咥えると」


「く、わえるっ」


トンッと今までで一番強い刺激が中であった。


「どこで咥えてくれるんだ?」


「ああああああっん。中、俺の尻の中」


「口の方もお願いしたい」


「両方する。するから、俺の尻、なんとかしてっ」


「今回は、ツバサの尻いきの手伝いに専念することにしよう。尻の解放、これで、できそうか?」


高速で気持ちのいい場所を押される。


「あーーーーーーーっ!アレクセイ。お願い。いきたいっ」


すると、アレクセイがうなじを舐め上げた後、耳たぶをはんできた。


「そんな願い方するな。わざわざ願わなくとも、尻いきはさせてやる。」


結果、三回いかされた。


***


アールハウスで過ごすようになって数日。


心の方はまだ不安定だが、身体の方は急速に回復している。


まず、東京で寝込んでいた頃より遥かに早い時間に起きられるようになった。

倦怠感が減って、調子がいいなと思える日が増えた。


セラピーみたいな、アレクセイ曰く、まぐわいなるものは二日に一回ほどあって、ツバサは彼の唇と指に世話になり続けている。


今度はと言ったくせに、挿入はまだ無い。やっぱり、ひとつ屋根の下にシェアハウスしている面々がいるのが気になっているらしい。ツバサだってそうだ。


不安定になって彼を頼ると、一人でしてきたのとは比べ物にならないほど、彼はよくしてくれる。

そして、翌朝にはしれっとした顔で、朝食を出してくれる。


部屋の隅には、先日、茅野のイオンで買ってきたクッキー缶が、二山になって積まれっぱなしになっているが見ないふり。


シェアハウスの住人のサイクルにも慣れてきた。


まず、高校生の鳥越。

彼は六時にアレクの弁当を三つ持ってアールハウスを出ていく。


高校まで自転車で飛ばして四十分。そこから、ロードバイク部の朝練をこなし、授業。

放課後にまた部活をして、自転車に乗って十九時すぎに戻って来る。三つの弁当はその合間に食べるらしい。


大野は役所の依頼があると害獣駆除のために山に入って、獲物を仕留めて下山、ときには空振りで返ってくる。


その場で捌かれた獣肉はアレクセイへと献上され、皮は大野がなめして自分の仕事用に使う。まったくコンスタントには売れないらしいが、鹿の皮で作った敷物には、五万円の価格を付けているそうだ。


プログラマーの大野は基本、仕事があるときは部屋にこもりきりになる。締切が近いときは食事にも現れない。


無職っぽい小湊は部屋で何をしているのか不明。アレクセイへの封筒投げつけ事件以来、ツバサとは活動時間帯が違うようで会うことがない。


絵描きの篠は、住人の中で一番アクティブで、外に出ていくことが多い。

何日も帰ってこないこともある。茅野のバーに行ったり、もっと北にある諏訪や松本辺りでも遊んでいるらしい。


かと思えば、急に帰ってきて黙々と絵を描き始めたり。オンオフのスイッチが激しい人だ。


もう一人の住人は実はいなかった。


といっても空き部屋は予約で押さえられており、近日、やってくるらしい。


その情報を知って、

「そいつがやってくるまで、そっちの部屋に行こうか?」

とアレクセイに申し出たのだが、普通に「何が不満なのだ?」と機嫌を悪くされてしまった。


自分のせいでアレクセイは寝不足っぽいのだ。気を使おうと思ったのだが。


シェアハウスの管理人は、やることが膨大にあり、朝は誰よりも早く起きる。

五時にはもう活動を始めているんじゃないだろうか。


トイレに起きたときに姿を何度か眺めた程度だから全部は把握しきれていないけれど、飼っているヤギたちを裏山に放し、鶏舎で卵を採取。


夜に仕込んだおかずを鳥越など弁当が必要な人たちに詰めてやり、ほかほかに炊き上げたごはんをプラス。


そうこうしているうちに朝早い人たちが起き出して、朝ご飯の給仕。

彼らが出ていくと、廊下や居間の掃除。


二つあるシャワーブースや風呂場を綺麗に洗う。

トイレットペーパーなどの消耗品を確認し、足りなければ補充。


ゴミ置き場に溜まったゴミを分別チェックしたうえで収集日に出し、これで、午前中の半分が終わる。


そこから、敷地内にあるサッカー場ほどのバカでかい畑で収穫作業。


今の時期は、カブ、小松菜、ルッコラ、ラディッシュが穫れるらしい。

根菜系はピクルスになり、綺麗に瓶詰めされて宝石みたいな輝きで冷蔵庫に詰まっている。抜群に色彩感覚がいいようだ。


その後、天気が良ければ洗濯。住人には部屋番号の札がついた洗濯ネットが三枚渡されていて、そこに突っ込んで洗濯場に置いておいてくれれば、アレクセイが洗って干して畳んで戻してくれる。


シェアハウスというより、寮。


六部屋全部埋まれば、月の収益は、三十万円。

無収入のツバサからしたら羨ましいぐらいの額だが、よく考えてみればそこから、電気ガス水道などの光熱費を引かれ、食材費が引かれ、税金だって払わなければならないはず。


月幾らの返済なのか知らないがリフォームローンもあるらしいからそれも引くと、アレクセイの手残りはいくらだ?


軽く二十万円は切りそう。

もしかしたら、月の収益の半額以下?


シェアハウスの管理人ってブラック企業以下の給料なんじゃないだろうか?


彼は家賃はかからない。食費や光熱費は徴収された他の住民の家賃から出ている。支出は携帯代、雑費ぐらい。


でも、忙しく働いている割には、心もとない稼ぎだ。だから、事あるごとに、現金収入、現金収入と言うのだろう。


そして、残念ながらツバサがアレクセイの手伝いをしても、シェアハウス管理人としてのアレクセイの収入は増えない。ツバサの借金四十一万円も本当は減りはしないのだ。


午後は少しアレクセイに自由時間ができるらしく、キッチンに立つ。


料理はシェアハウスの住人の胃袋を満たすためのものであり、道の駅などで販売して現金収入を得るものでもあり、趣味でもあるらしい。


アレクセイの料理をする姿は綺麗だ。

所作が美しく、茶道や華道をする人みたいに、全身に気を張り巡らしている。


そんな姿のアレクセイを見るのが、ツバサは好きだったりする。


使い込んだ南部鉄器のフライパンで朝採れの卵が焼かれ、将棋盤にもなる堅い本榧(ほんかや)のまな板で畑の野菜が刻まれる。


動画でしか見たことがない、丁寧な暮らしというものが目の前にある。

といっても、ゆっくりではなく多少慌ただしい暮らしだが。


アレクセイから細々とした雑務を受けるには居間にいるのが一番よく、ツバサはなるべくそこにいるようにしているが、彼が料理を始めてしまうと大抵は声がかからない。


そうすると、部屋から出てきた大野が「バッサー。暇?」と聞いてくる。


最近、地味なストレスだ。

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