透明な骨

うらたきよひこ

第1話

時計より先に目覚めた朝の部屋昨日の気配がただよっている


電柱の上で光がうなずいて季節は今日から秋になるって


アスファルトに影を置き去り消えてゆくわたしの骨は透明らしい


文庫本をひらけばバスの二区間は知らない街の匂いがしてる


蟬がいっぱいしんでいる通学路エノコログサがころころと鳴く


拾うためしゃがみ込んだら背骨から小鳥の群れが飛び立ってゆく


待つともなく待つゆびさきがひんやりと郵便受けの底にさわった


缶コーヒー開けた瞬間ひびわれる宇宙の奥のやわらかな膜


喧騒にイヤホンを深く突っ込んで遠いどこかの夕立の音


カップ麺のふたが開いた瞬間に世界が一度終わった気配

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透明な骨 うらたきよひこ @urata-kiyohiko

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