第16話

一方、颯は結との手合わせが終わり、道場の畳の上に座って冷たいお茶でのどを潤しているところだった。


「さすがねぇ、やっぱり。」

「いえ、結さんもさすがですね」

「ねぇそういえばあなたまだ22歳なんでしょう?25歳の縛りはないの?分家とかだと違うのかしらねぇ?」

結もごくりとお茶を飲む。


颯は天井を眺めながら答える。

「え?あぁ、うちは15歳で知らされましたね。それが普通かと……」


「まぁ、それは昔のやり方ね。もともとは15歳の決まりだったのよ。でも時の流れの中で、幼くして力や権力を手に入れるとよくないことが起こることもあったみたいで、25歳に変わったみたいだから……あなたとのことろは相当昔に分かれた家なのかもね」

ふーん、と颯はうなずく。


「よっこらしょっと!」

結が立ち上がって伸びをする。

「運動後のストレッチも大事よねッ」

そういいながらしばらく歩き、手足を伸ばし始めた。


「となると、颯君は相当先輩だわッ」

「あはは、そうですね」


颯は、しきたりの違いに思いを馳せる。

そもそも颯の家は途中から、真神家に入り込んだのだ。

子どもの頃からの違和感……颯は考え込み、そして、ふと、口にした。




「あの、本家の皆さんも禍術って習うんですか?」



「え?」



結が振り返る。その目には驚きが宿る。

「なに?」



颯は何か聞いてはいけないものを聞いてしまったようなばつの悪い気分に襲われた。



「い、いえ、なんでもないです!忘れてください!俺、シャワー浴びに先、戻りますね!」


そういいながら足早に道場から出て行った。


結はその後姿を怪訝そうに見送った。


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