第5話 初クエストへ出発
その後、友人にこのゲームのことを話した。
パーティーになろうとか、色々話してくれていたが、今回は友人作りをしたいと、もう少し一人でやってみるから後で遊ぼうと断ることにした。
しかし、今回の通話により、色々なことがわかった。
まず一つ、このゲームにはアシスト機能があること、
アシストというのは攻撃や生産など、行動全てにマシンによる補助を受けることを指す。
これによって剣を振り下ろすときにも、一直線に切れ、地面にぶつかることもなく誰でも簡単に剣士のような動きになるというのだ。
生産も本来ならかなり面倒である作業などをせずに、体が自由に動いてしまうのだ。
これを作りたいと思ってハンマーを振り下ろしたら剣ができるというわけだ。
しかし、このアシスト機能というのはあくまで補助の立ち位置であり、欠点も当然存在している。
まずはレシピ通りにしかできない。剣のスキルの一つにスラッシュというアーツがあるのだが、それをアシストオンにしたら斜め上から振り下ろすしかできない。
逆にアシストオフにしたら切り上げるようにスラッシュもできるのだ。この拡張性がまず一つ。
もう一つに、ダメージ数が下がるらしい。同じ行動をしていてもアシストをオフにしている方が加算ダメージがあるとのこと。これにより初心者を除き、大多数の人は訓練所で行動に慣れてからアシストオフで冒険に出るというのだ。
その子が言うには、項目ごとにアシストをオンオフにできるから、自分が楽しみたい項目のみオフにしたらいいと助言してくれた。
それにスキルはかなり強力であり、事あるごとに使ったほうがいいと言われた。あまり使わないと癖付かないからと。
その他にもいろいろな助言をされて、通話は終わった。その後にゲームはする気も起きずに、今日は家事と読書をしてから寝ることにした。
次の日も学校から帰ったら、早速ゲームにログインした。資料室で起きてから、早速設定をいろいろいじっておいた。
アシストは戦闘系と一部生産はアシストをオンにした。逆に料理はアシストをオフにして好きに作れるようにした。
ついでにステータスや装備、ちょっとしたものは鑑定したほうがいいと言われたのを思い出したので見てみることにした。
装備
武器:初心者の弓・矢筒
頭:なし
外套:なし
上下:布の服
手:なし
靴:布の靴
アクセサリー1:なし
アクセサリー2:なし
布の服は、村人のような服装で、靴もぺたんとした靴であり、実際に履いていたらクッションがなく、しんどいだろう。
背中には今の今まで忘れていたが、弓を背負っており、矢筒もあった。
カバンもあるため後ろ側は意外としっちゃかめっちゃかになっている。ゲームではこういう不快感を軽減してくれているのか、あまり重さや動き辛さはなかった。
矢筒には木と羽で出来た矢があり、数えてみると30本あった。
カバンも一応確認してみると、緑色の液体が入ったガラス瓶があり、鑑定をしたらポーションと書いてあった。
それが10個入っていた。
そしてこの世界での通貨はステータス画面10000Gと書いてあり、買い物は店員に伝えると購入しますかと出てくる。それをはいを押すと自動的に引き落とされるようだ。
逆にクエストなどクリアするとクエスト達成とともにお金が自動で入るようで、金銭のやり取りは自動的になっている。
簡単であり、間違いが起きない点でもウルにはありがたかった。
今日は資料を読むのもいいが、クエストを受けることにした。
クエストボードに近づくと、大きな画面が眼の前に現れた。
【討伐クエスト】【採取クエスト】【おつかいクエスト】
とでており、タッチするとさらに何個か出てきた。ギルドランクがアップすると更にクエストは増えるのだろう。ソートで更に自分がやりたいクエストを出すことも出来た。
まずは薬草のクエストを見たいとソートから採取、そして薬草と打ち込んだら
【薬草採取 10株一束 一束100G 無制限】
とでてきたので、それを選んだ。
次にこれからやるかもしれない討伐クエストを見てみることにした。
【ミニウルフ 五体討伐 1500G 20体まで】
【ゴブリン 五体討伐 500G 無制限】
ゴブリンのほうが安い理由は数が多すぎるのでウルフと違い数でたくさん稼ぐようだ。その上攻撃も突進とひっかかるしかなく、住民でも蹴り飛ばして持ってるものでタコ殴りをしたら倒せるほどでしかない。
ミニウルフは柴犬程度の大きさしかないが、小さくても動物、鼻の良さに吠えて仲間を呼ぶ、爪による住民の怪我も多いのだとか。
動物はお手伝いクエストの中にある、畑を襲うイノシシを倒せなどがあるが。イノシシは危ないと友人に言われているため、これも選ぶことはなかった。
ゴブリンのことを受付のアリアに説明を受けながら、一言資料室でログアウトはしないでくださいと言われた。夜間は鍵を閉めるため。人がいるとギルドの人へアラームが来てしまうというのだ。
すぐに謝罪をして、次はどこで寝ればいいか確認しておいた。宿屋かホームという家を借りたり買うことでそこで休むのもいいとのこと。
気にしないなら噴水の前とかが無料でいいと言われた。ちょっとギルドの資料室で寝ていることが恥ずかしくなり、宿屋かホームで寝ることを目標にした。
ウルは基本人見知りで、緊張で口下手になるが。安心できる相手だったり、子供など保護の対象にはしっかり話すことができる。
アリアはかなり優しく、色々な質問などにまったく嫌な顔をせずに答えてくれるのでウルは少し懐いていた。
ウルが一番緊張するのが男性で、しかも強そうな男が目の前にいると頭が真っ白になる。
アリアにアイテムボックスのスキルがないことがバレている。ギルドカードをカバンにしまい込んでいるのを見られてしまったのだ。
アイテムボックススキルがないと冒険に行くときにかなり苦労するのだ。
アイテムボックスは999個×999ストックがあり、たくさんアイテムをいれられるのだ。
今のままではカバンに入る分だけしか入らない。これではこれから先気になったアイテムを入れることが不可能になるかもしれない。
そう、ウルはぶるぶる考え込んでいると、アリアが下から小さな袋を渡してきた。
この袋はアイテム袋といい、99個を9スタック入れられる魔法の袋だというのだ。アイテム袋をどちらかの手で持ち。入れたいものに触れながら、入れと念じると入るのだ。大きさはなんでも入るというのだからゲームはすごいとウルは思った
なんでも初心者のうちに支給されるもので。Eランクになったら返すのが絶対だという。一応道具屋には高いが、売っているので、そちらのものを購入するのが一般的だとか。
「返すのを忘れた場合は?」
「ギルドの人が返してくださいと何度かいうので、その時に返してくれたらいいです。しかしずっと無視を続けていくと。私を含めた誰かが奪いに行きます。勝てませんよ?私には。」
「は。はい。」
「ウルさんはそんなことをしないですから。わかっていますよ」
ちょっとアリアさんの恐ろしさを知ったウルは、ギルドから出て道具屋に向かった。
薬草を採取できるように道具と、生産に使えるキットを買っておきたかったのだ。
あまり使えるお金がないため、じーっと値段を見て計算をした。
【採取ハサミ】・・・草を傷つけずに切れるハサミ
【袋】×5・・・取ったものを入れる袋
【初心者調合キット】・・・初歩的な調合に使用する道具類
【初心者木工キット】・・・初歩的な木工に使用する道具類
【初心者細工キット】・・・初歩的な細工に使用する道具類
合計で7000Gで買えた。初心者用のものは揃えられるようにしているのだろう。
次に少し武器の取り扱いに不安があったため、武器屋で矢を追加で30個購入した。
ついでに屋台などを見ていたら、美味しそうな肉串があり、つい購入してしまった。
1000Gしかなく、これでは宿屋に泊まったら何もできなくなると少し自身の衝動にびっくりしたが、仕方ないと思うことにした。最悪の場合には噴水で休むことも視野に入れておく。
今回は動物の多い北の林に向かうが、ぜったい戦わないと心に決めている。ばれる事がなく、採取をしたいのだ。
気配察知でモンスターや動物を発見して、気配遮断でそれを避ける。どちらもアシストをオンにすることで自動的に使われる。消音行動すべてがレベルに応じて聞こえないスキルのため、忍び足をしたらウルですらほとんど音がでなかった。
北門付近でスキルの軽い確認を遂げたら、林の中に入って行く。
馬車が通る道を歩いていくと、目の前に生い茂った草と木が見える。この先が林だぞと伝えてくれるようだった。
等間隔に並ぶ木は管理はされているが、あまり伐採はしていないのだろう。かなり大きな木がたくさんあり、地面は草がかなり生えており、木のせいで林全体が軽く薄暗い。
ハサミを持ち、ゆっくり木の間を抜けていく。ときどき鹿がいるため、息をひそめてしゃがみ込む。しゃがみ歩きで先へ歩くと鹿はまったく気づかないのだろう。今のところ誰とも敵対せずに進めている。
ちなみにしゃがみ歩きをしながら落ちている石や木の枝。葉をハサミで切り、雑草とツルを手に入れた。
それぞれ使い道があり、それこそツルなどは罠スキルを使うことで動物の足を吊り上げる括り罠を作ることができるのだ。
枝や石は加工して矢にもできる。雑草は何か使えるだろうとどんどんアイテム袋に入れていく。
そうしていると、薬草辞典で見た葉が見えた。採取のアシストのせいで雑草などとは違い、葉の上に花が生えていた。
(これってわかりやすいようにだよね。でもわかりやすいのはいいかもしれない。)
と頭の中で考えながらハサミで切り、薬草を摘んでいく。
ついでに鑑定すると結果が
【薬草】品質:それなり
ポーションで使う葉。そのまま食べても回復は可能だが、苦みアリ。
かなり簡素であるが、鑑定のレベルが低いのか、それとも持っている情報がなさすぎるのか。
それからも薬草はあり、どんどん摘んでいく。
薬草が取れ、落ち着いてきたのか、今度は罠スキルが気になったウル。スキルを使用したら材料があればその場で作れるのだ。
たくさんのツルを持ち、近くの木に括り罠を付けた。
罠スキルで作られる罠は二種類があり、プレイヤー罠とモンスター罠だ
その名の通り、プレイヤー罠はプレイヤーに対して効果を発動する罠であり、モンスターにも使えるのだ。
逆にモンスター罠はモンスターにのみ使えるため。プレイヤーには一切効果が発揮しない上に、設置主以外のプレイヤーには見えないのだ。
これはPKとそうじゃない人を区別するために作られたようであり、罠をかけたい猟師のRPがPKだと思われない措置である。
罠にかかったら猟師と言われてもPKすればいいので、ほかのプレイヤーもわかりやすい。
これのおかげもあり、ウルも罠をかけられるのだ。
しかしアシストを使用してその場で作られた罠は通常に作る罠とは違い、最低品質で作られるため、壊されやすいという欠点もある。
しかしお試しということで、かけてみている。明日にはわかるだろう。
ウルは先へ行くことにした。
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