第33話
※
三太君の肩を揺すりながら姉さんが叫ぶ。「三太っ! 三太っ!」
ぼくは三太君の腕を取り、脈をはかった。「麻凪! 脈が戻ったよ!」
「呼吸は?!」
手のひらを口元にあてる。「……してる!」
「よかった! 何か吐いたりしてる?!」
「さっき水を吐いた!」
「また吐くかもしれないから、すぐに横向きにしてあげて! あと、着ているものを全部脱がして、救急車が来るまで、バスタオルか何かで体を温めてあげるの!」
麻凪の指示通り、姉さんと一緒に三太君の体勢を横向きにした。姉さんは三太君の海水パンツをむしり取るようにして脱がし、自分の着ていたTシャツを脱いで三太君にかけると、下着姿のまま、まるで柔道の締め技でもかけるように後ろから抱きしめた。どうやらバスタオルは必要ないようだった。それは滑稽な格好だったけれど、ぼくにはどんな絵画よりも美しく見えた。携帯を拾い上げて耳にあてる。「やったな、麻凪」
「まだ安心しちゃだめだよ。もしかしたら、脳に障害が残るかもしれないし」
「そうなのか?」
「脅すわけじゃないけど、充分に考えられることだから」
「……そうか」
過ぎ去ったはずの悪い予感が戻ってくるのを感じつつそう言ったとき、サイレンの音が近づいて来ていることに気が付いた。道路の方を見ると、回転灯を回している救急車が小さく見えた。ぼくは居場所を知らせるために立ち上がり、片腕を大きく振りながら、救急車へと向かって走り出した。
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