第24話

 ※


 恐る恐る目を開けてみると、フロントガラスの向こう側に、老夫婦とてんなちゃんの足の裏が確認できた。夫婦は真ん中にいるてんなちゃんと手をつなぎ、正面の奥の方へと、遊泳するように遠ざかってゆく──と、旦那さんと奥さんが顔を見合わすように振り向いて、ぼくに向かってにっこりと微笑んだ。その後手を離したてんなちゃんがくるりとラッコのような体勢で振り向いて、ゆらりゆらりと交差するように両腕を大きく振った。ぼくは手を振り返そうと腕に力を込めたものの、遂に呼吸を我慢することができなくなって、ぶわっと息を吐いたあと、大量の海水を吸い込んだ。そこではっと目が覚めて、幻を見ていたことに気が付いた。

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