第19話
※
店に帰り着いたのは、閉店する一時間ほど前だった。ドアを開けると、南子姉さんが気風のいい声を上げた。「はいいらっしゃい! ってなーんだ、あんたらか。おかえりー」
おー、おかえりー、と調理場の奥でみよこ伯母さんが言った。
「ただいま」とぼくは言った。「なんだよみっちゃん、ずいぶんさまになってるじゃん」
「やろうが?」姉さんはしゃがんで三太君の帽子を取ると、頭をくしゃくしゃになでた。お客さんはたまたま誰もいなかった。「楽しかったですかー? 三太ちん」
三太君はぎゅっと唇に力を入れた。すっごくたのしかったよ! とてんなちゃんが言った。
姉さんは三太君の方を向いたまま、にっこりと微笑んだ。「さ、ご飯の前にお風呂に入ろうかね。竺、あんたは先にご飯でよかよね?」
「いいよ。鶏飯ある?」
「ごめん売り切れよ。でも母さん特製の軟骨煮あるから。それでよかよね?」
「もちろんいいよ」
「あと悪いけど、のれん内側に掛け直してくれる? 今日はもう閉めるから」
「わかった」
軟骨定食一丁、と姉さんが声を張り上げた。
ぼくは姉さんに連れられて調理場の奥に向かう三太君と、そのあとをてくてくとついて歩くてんなちゃんの背中をそれとなく見送りながら、のれんを店内に掛け直すと、一番奥側のカウンター席に着き、みよこ伯母さんがお盆に載せて出してくれた、夕飯を食べた。おかずは豚軟骨の煮付けとゴーヤーチャンプルと、あおさの酢の物と、オクラのみそ汁だった。
食べ終わってしばらくすると、子供たちを風呂に入れ終えたらしい南子姉さんが戻ってきて、店の戸締まりをしながらぼくに訊ねる。
「どうね竺、これから軽く、飲みにでも行かん?」
「いいねー。三太君たちは?」
「二人は留守番よー」
と見ると、調理場の陰から子猫のようにじっとこっちを窺っている、肌着姿の三太君と、てんなちゃんが見えた。
「……なんか、行きたがってるみたいだけど?」
姉さんが振り返った。「何、もしかして一緒に行きとうと?」
二人は深々と頷いた。
「だって。この子も連れてっていいかな」
「もちろん」ぼくは言った。「伯母さんも一緒に行きませんか?」
「あー?」
「母さん、これから三太も連れて、みんなでゆみいなんとこ飲みに行くけど、一緒に行く?」
うんにゃあたしはよかで、三人で楽しんでくればよかが、と伯母さんは言った。三人? と思ったけれど、ぼくは別枠にされてるんだろうと思い、特に気にしなかった。
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