第8話
魔王になってから4日目、わたしはスリマ様とともに魔王城を離れ、徒歩で遠く離れた王都にまでやってきました。道中歩き疲れてしまい動けなくなってしまったわたしをスリマ様は文句ひとつ言わずに背負いながら歩いてくれました。スリマ様の背中の温もりを頬で感じていると、思わず涙が出そうになっちゃいました。鼻水は垂れました。
ちなみに街道から王都へと入る際、門番さんに素性を尋ねられてしまいましたが「パンプキンバーグ家の者です」とスリマ様が言うとあっさり通ることができました。わたし達ってパンプキンバーグ家って名前だったのですかと尋ねると「たった今考えたものです。詳しく調べられる前に行きましょう」という返事が返ってきました。王都なのにこんなザル警備で良いのでしょうか。内心どうなってしまうのかしらとビビッていますが、スリマ様が迷わぬ足取りで前へと進み続けているので黙って後をついていっています。
「ひ、人が多いですね」
王都に入るとさっきまで歩いていた街道とは打って変わって、どこを見渡しても人、人、人と数えきれない人で覆い尽くされていました。
「この大陸で最も多くの人間が集まっている場所ですからね。くれぐれもはぐれないようにお願いいたします」
「はい……」
人の流れに流されないよう、スリマ様が着ているマントの端っこを掴みながら、スリマ様のすぐ後ろを歩き続けます。あ、このお店のお菓子美味しそう――いけませんいけません。危うく目的を見失うところでした。
「学校まではどれくらいかかりますか……?」
目的はこれでしたね。再認識しながらスリマ様に尋ねます。
「目的地のセントリーシュ学園はここから北西に約3km歩いた先にあります。さしずめ、およそ後30分といったところでしょうか」
「さ、さんじゅっぷん……」
「残念ですが、このスペースでは背負うことも魔法を使用することもできません。そのためどうか持ち堪えて頂きますようお願いいたします」
「は、はい……」
それからひたすら人混みの中を歩きましたが、結局学園に辿り着くまで50分も掛かってしまいました。
……途中でへばってしまってごめんなさい、スリマ様。
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