第6話
……はい。ここで時計を現在に戻します。
どうしてわたしが魔王になってしまったのか。これがその理由です。ちなみにそこから今までの3日間は、ひたすらゴキブリを拾い集めては宝箱に閉じ込めて、ちょうど良さそうなところに設置するといった作業をやっていました。なんせ人手が2人しかいないので、めちゃくちゃ大変でした。
それにしても、魔王城ってこんなに広かったんですね。どこになにがあるのか、どんな部屋があるのか、勇者ご一行が来るまでに全く覚えられそうにありません。こんな魔王果たして今まで存在していたのでしょうか。もしも存在しているのだとしたら、是非ともお友達になって欲しいところです。
「なんで魔王様は、仲間同士で殺し合いなんてさせちゃったんですか!? こんなことになっちゃうって、わからなかったんですか!?」
心の器に積もり積もったものを適度に放出させるべく、未だに座りなれない玉座に座ってわたしは叫びました。虚しくなるほど広々とした最深部に、わたしの情けない声が響きます。
「あのおじさん、強者同士が全力で戦う光景を見るのが好きなのですよ。その欲望をどうしても抑えきれなかったのでしょうね」
わたしの隣で強そうな武器を宝箱に詰める作業をしているスリマ様がため息をつきながら答えてくれました。せっかくだしわたしもなんか武器持ちたいなと思って試しにひとつ持ってみましたが、重くて全く振り回せなかったです。というよりもです。
「お、おじさんって……」
確かにおじさんではありましたけど。
「今の魔王様はロベリア様ですし、魔王でなくなったあの方など、ただのおじさんです。優雅にバカンスに行った、知性の無いバカなおじさんです」
「そ、そこまで言わなくても……」
「良いのですよ。現在私が仕えておりますのは、ロベリア様なのですから」
「そういうものなんですね……」
「そういうものなのですよ」
そういうものみたいです。
あのおじさん、今どこでどういう風に過ごしているんでしょうか。腰が痛いって言っていたし、湿布でも買って海辺で寝てたりしているんでしょうか。出来れば戻ってきて欲しいところなのですけれど……。
「あのおじさんは当てになりませんので、私達でどうにかいたしましょう」
人望、あんまりなかったんですね……。
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