第18話―雪解け―その2

 タコパの後片付けも終わり、咲夜を駅まで送ることにした。

 そうして、一緒に歩いているのだけど……、互いに変に憎しみあっていたことに対しての謝罪を終えたからかいつもよりも会話が弾む。


「輝明が金欠になったとき、私じゃなくて水谷さんにお金を借りたのを知ったとき、意外とショックだったのよね……。もしかして、私って輝明にだいぶ嫌われてるの? って」

「いや、咲夜にお金借りなかったのは告げ口が怖かったからで……」

「別にいいわよ気を使わなくても」

「……なんか咲夜に借りるのムカつくし嫌でした」

「そうよ。こうなんか言うのあれだけども、それがわりとショックだったのよね……。一応、輝明のことは弟みたいに思って気にかけてあげてたのに、そんな子が姉みたいな私じゃなくて、まさかただのクラスメイトの友達を頼ったのが……、私の中で色々とモヤモヤしてね……」


 姉として俺の面倒を見てきたつもりだった。

 けど、なのに金欠のときに相談されなかったというのが、咲夜にとっては意外と堪えるような出来事だったようだ。


「……だって、最近は本当に咲夜のこと嫌いだったし。俺が些細なミスをしたら、すぐに『のろま』だの『ゴミ』だの『阿保』だの罵ってきてただろ」

「ええ、今思うとよくなかったわ。あなたが叔母さまに体操服をださなかっただけで、『こんな小学生でもできるようなことすらできないゴミと従弟いとこだなんて恥ずかしいわ』なんて言ったのは普通に言い過ぎよね」

「まあ、俺も悪いことしたのに言い訳とかして、すぐに謝らなかったのが悪いよ。そのせいで、咲夜の口調もどんどん強気になったわけだし」


 二人して互いの過ちを認め合う。

 なんか恥ずかしくてムズムズが止まらない。

 俺はそれを払しょくすべく、話題をがらりと変えた。


「そ、そういえばさ、水谷さんと一緒にプールに行くことになったわけだけど、もちろん咲夜も一緒に来るよな?」

「……本当にまだ水谷さんのこと好きじゃないのね」

「ん?」

「好きだったら、私なんて誘わずに二人きりで行きたいってなるでしょ?」

「それもそうだな」


 なんて話していた時、ポケットのスマホからピコンと通知音が鳴る。

 歩きスマホはよくないけど、時間的に水谷さんからのメッセージな気がして俺はスマホを確認した。

 うん、やっぱりだ。

 歩きスマホは行儀が悪いわよ? と俺を見ていた咲夜に教えてあげた。


「水谷さんは無事に家に着いたってさ」

「そういえば、帰り際に心配だから着いたら連絡してってお願いしてたわね」

「何かあったら大変だからな」

「何気に最近は物騒な世の中よね……。無差別で女性が襲われたってのを、最近のニュースで見たもの」

「そうそう。俺もそれを見たから連絡くれ! って一応言ったんだよ。んで、安否を連絡してくれた水谷さんにどう返信したらいいと思う?」


 家に着いたよと教えてくれた水谷さんに対しての返信に悩んでいた。

 咲夜はというと悪い笑みを浮かべて、俺のスマホをひったくる。


「ちょっ、変なメッセージ送るなよ?」


 咲夜はスマホを操作して水谷さんに返信する。

 

『無事について安心した』


 うん、普通だな。

 咲夜にスマホを返して貰おうと手を伸ばすも、咲夜は返してくれない。


「まだ続きがあるから待ちなさい」


 咲夜はそう言ってスマホに文章を打ち込んだ。


『今日の水谷さんは可愛くてドキドキでだったよ。それじゃあ、お休み! 今日は本当に楽しかったよ!!!』


 おい、口説いてるかのようなメッセージを送るなよ。

 俺が水谷さんに本気になってきたと思われちゃうだろうが。


「そういうのやめてくれよ……。また、水谷さんに『輝明君って私のこと好きなのかな~?』ってからかわれちゃうだろ?」


 咲夜からスマホを奪い返す。

 手にスマホを取り返した後、メッセージの送信を取り消そうとした時だった。

 もうすでに遅かったようで、水谷さんから返信がきていた。



『んふふ~、いいよ? 私のこと好きになっちゃえば?』



 私を落とせるものなら落としてみなと言わんばかりな水谷さん。

 そんな大胆不敵さに俺はときめいてしまった。

 あまりにも水谷さんが可愛くてニヤニヤが止まらないでいたら……


「……いててて。なんで俺の脇腹をつねるんだよ」


 咲夜に脇腹をつねられた。


「なんかムカついたからよ」

「なるほど。俺が水谷さんにデレデレしてるのに嫉妬したわけだな」


 軽い冗談で言ったつもりだった。

 だけどもまぁ、咲夜はまるで恋する乙女かのようにボソッと呟く。



「……そうよ」



 咲夜の意味深な発言に俺はドキッとしてその場で立ち尽くしてしまう。

 すると、咲夜が俺のことを鼻で笑った。


「ふふっ、冗談に決まってるじゃない。あなたが他の女の子と仲良くしてるところを見て、私が嫉妬なんてするわけないでしょ?」


 そ、そうだよな。そんなわけないよな?

 俺はそう思いきれなくてモヤモヤする。


 だって、咲夜がボソッと呟いたときの表情が――

 どう見ても嫉妬してるようにしか思えなかったのだから。


 

 



 

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