2.8 神奇的生物集団
「舐めやがって! まだSK商会の連中は捕まんねえのか! あ?」
中国語の怒声が準備中の中華料理店に響く。
サングラスの男にスマホを投げつけられた部下は首をひっこめ嵐が去るのを待つ。
「クソが! 俺ら
サングラスの男は虚勢を張るが、誰よりも恐怖しているのは男自身だった。
中国を拠点に規模を拡大する神奇にとって、進出先でメンツを潰されるのは組織の沽券に関わる。
日本での営業展開を任された現地責任者のサングラスの男は、組織に唾を吐いた下手人共をいちはやく突き止めて見せしめにしなければならない。
さもないと本国のボスから、「使えない部下の末路」の見せしめにされてしまう。
だというのに、SK商会の人間は牛舎炎上事件以降、京都から忽然と姿を消してしまっていた。
商品の品質をめぐる諍いの末に抗争し、本郷の介入によって両勢力が壊滅したという事件の真相など露知らず、サングラスの男は「金を持ち逃げした」と目するSKの残党を追っていた。
「クソっ、早くどうにかしねえと、俺がボスに解体されちまう……」
仕える大悪魔の姿を思い浮かべ、男を後悔の念が襲う。
なかなかお目にかかれない甲二種禍具『
手に入れば本土で高値で売り捌ける。
その功績でもっと高い地位にのぼれるかもしれない。
そう考えていた。
相場よりも格段に安値で種を売ろうとするSKをもっと警戒しとくべきだった。
これまで何度か取引をしてきたから、さすがにここまでコケにした真似をするとは思ってもみなかった。「派遣したはぐれ悪魔たちなら、何かあっても鎮圧できると踏んでたのに。ああクソ、もっと護衛を増やしとくんだった!」。
そう悔やんでもあとのまつりである。
しかしこうして男が右往左往する間にも通常業務は継続する。
本国に送る商品を買い揃え、輸送する仕事にも滞りがあってはならない。
男は魔法生物と禍具の取引リストに目を通す。
各地の業者が売りに出す合法・非合法の商品をチェックし指示を出すのも、日本支部の責任者としての仕事だった。
ふと、男の目に見慣れた商品名が映る。
『
ディーラーは京都。
ここにきて何の偶然だ?
こんな希少性のある商品が同じ場所でなぜ?
まったく繋がりがないなんてことがあり得るか?
もはややぶれかぶれだった。
手がかりなら何でもいい。
どんな些細なものでも下手人につながるなら。
そして男は、指示を待つ部下へヒステリックに叫ぶ。
「種に関わってる連中を一人残らず調べろ! SKにつながるなら何でもいい! 手荒な真似しても構わん、邪魔する奴には神奇の恐ろしさを理解させろ!」
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