第2話 重役会議?

 これは重役会議なのか? 月奈つきなちゃん社長を含め、役員数名が集まる会議が開かれた。これは比較的珍しいことだ。全員の予定が揃い、集まることなどほとんどないのだ。女学生の社長は備品リストを見ている。私は、学生さんなのに偉いな〜っと思ってその様子を見ていのだ。この時間はとても癒しになる。基本的に役員・社員の皆さんと一緒に居れるのは至福の時間だ。ワーカーホリック? 知らない言葉ですね。これは、深奥の館では特に知らない言葉だ。


「オーマイガッ。備品が結構壊れてるじゃないですか」


 そう言って、テーブルの書類から企業リストを取り出すのが見える。私が置いたやつだ。単純に大手から中小の企業まで羅列したリストだ。読みにくくなければよいのだが。


「確かに、備品が想定以上の損耗です。次年度予算に影響が出るかもしれません」


 牡丹ぼたん副社長がそう答える。牡丹さんは声が良い。前に月奈社長と話たところ意見が合った。嬉しかった。


「牡丹さんはそう思いますか。鈴音すずねさん、どう思いますか〜?」


 社長は鈴音さんに意見を求めた。鈴音さんは我が社の社外取締役で、文化関連の人でもある。鈴音さんは少し悩むように手を顎にあてる。


硝子しょうこさんに買ってきてもらいましょうか」


 鈴音さんは、名案だと言わんばかりに、右手を左手にポンと叩き、私に視線を向ける。


「確かに硝子さんなら信頼できますね。ただ、取引条件は慎重に交渉してください」


 取締役のノーネームさんがそう答える。ノーネームさんは芸術関係の人でもある。ちなみに女性である。名前に違和感? そんなものはない。鈴音さんとノーネームさんの案を受け、社長は私に視線を移した。


「ということで、硝子さん、良さそうなところから買ってきてく〜ださい」


 これが社長室長の仕事だろうか……いや、きっとそうだ。


「わかりました。社長のお望みとあらば」


 これは総務係の仕事だろう。当然私の仕事だ。


「はい、お願いします。さすが硝子さ〜ん。明子あこ姉さんは何かありますか?」


 明子さんは我が社の取締役であり医療関係の人でもある。月奈ちゃん社長の言葉に少し考える素振りを見せるも、すぐに私に優しさのある視線を向ける。


「私はそうですねぇ……硝子さん、また大変なお役目を背負っちゃいましたねぇ」


 明子さんは医療関係の人でもある。とても大変で会議に出席する事は少ない。そんな明子さんとはゲームの趣味が合うのだ。よくその話題で盛り上がる。


「でも、硝子さんなら大丈夫。頑張ってください」


 正直、私は応援されると舞い上がってしまう。どんな立場の社員さんからでも応援・褒められると嬉しいのだ。調子に乗らないよう注意しなければならない。


「月奈ちゃんも偉い。まだ若いのに、ちゃんと社長として皆んなをまとめてるんだから」


 若いと言っても明子さんも十分若い部類だろうに。社会人と学生はやはり違うのだろうか。


「硝子さん、頑張ってください」


 よだかさん。前言を撤回しよう。応援・褒められると嬉しいのだが、この人? 黄昏よだかさんからは若干の違和感がある。というか、壁兼椅子係とは一体なんなのか。我が社の謎は深まるばかりである。


 *****

—本日出席者—

——社長    月奈

——副社長   牡丹

——社外取締役 鈴音

——取締役   ノーネーム

——取締役   明子

——壁兼椅子係 よだか

——社長室長  硝子

—※会議内容は議事録に残されません

———

—壊筆 硝子 朱印—

 *****

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