第22話 木こりの真似事

「さて。いよいよ、神龍の里だね」

「ああ。といってもかなり遠いからいろいろ寄り道することになるぞ」

「そうだよね。どこに寄るか決めてるの?」

「いや。とりあえず街道を進んで、そうだな、ハイエルフの里にでも行ってみるか?」

「お。いいね。ユークの郷だろ? どんなところなんだ?」

「どこにでもある自然豊かな田舎町さ。まぁ、飯はちょいと美味いが、それ以外にたいしたものはない」

「そうなの? 伝説の世界樹があるんじゃなかったっけ?」

「ふっ。あれはただの大木だ」

「そうなんだ!? なんだか残念だね」

「ああ。なんとも残念な町さ」

と最後は少し自虐的なことをいってさっそく幌馬車に乗り込む。

そして、私たちはまたのんびりした歩調でとりあえずハイエルフの里を目指し始めた。

進むこと二日。

適当な村に立ち寄り、宿をとる。

どうやらそこは獣人が中心になって作っている村らしく、筋骨隆々とした熊の獣人や可愛らしい猫の獣人など多種多様な獣人をが生き生きと生活していた。

「やっぱこっちの大陸は亜人種が多いのな」

「ああ。奥地にいけばけっこう珍しいのもいるらしいぞ」

「へぇ。ってことはまた魔族さんにもあえるのかな?」

「ああ。おそらくな」

「おい。魔族とはなんじゃ?」

「ん? ああ。その昔っていってもかなり大昔だが、魔物に属するんじゃないかっていう偏見があって人間と対立していた種族のことを通称魔族って呼んでるんだよ。まぁ、現在ではそんな偏見もなくて呼び名だけが残ってるかんじだな。まぁ、人間とは生活環境が違うからあまり交わることはないのは今も昔も変わらんが、会ってみればなかなかいいやつらだぞ?」

「ほう。そんな奴らがおるのか」

「ああ。有名なところだと翼人族とかアラクネ族とかだな。独自の魔法を使うからけっこう興味深い存在だぞ」

「なるほど。あれは人間には区別されとらんというわけか」

「うーん。今では同じ人間だっていう感じの扱いを受けているが、昔は違ったってことだな。なにせ、見た目がけっこう違うからな」

「ふっ。人間とは浅はかなものよのう」

「ああ。そうかもしれんな」

と話してながら商店街を歩き、適当な酒場に入る。

そこにもけっこうな数の獣人たちがいて、ワイワイと楽しそうに酒を酌み交わしていた。

「こっちに来たらとりあえずエールを飲んでおくべきだろう。ミリエラも飲むか?」

「ええ。いただきますわ」

「よし。おーい。とりあえずエールを四つくれ!」

「はーい」

と、まずは酒を注文し適当に品書きを見る。

海からそう離れていないということもあって、魚介系もけっこう充実していたが、私たちは久しぶりに肉が食いたい気分だったので、ハンバーグやラザニアなんかのありきたりなものを注文することにした。

やがて酒が来て乾杯する。

「「ぷっはぁ!」」

と豪快に息を漏らすアレンとエレナをミリエラが微笑ましそうに見つめるといういつもの感じを経て楽しい食事が始まった。

「ん? このハンバーグ意外と美味いぞ。肉が粗びきだからけっこう肉々しい感じで食い応えがある」

「いいなぁ。あ、こっちのラザニアも美味しいよ。お肉ごろごろ」

「うふふ。久しぶりに鶏肉を食べたからかしら、普通の照り焼きがかなり美味しく感じますわ」

「そうだな。私のトンカツも妙に美味く感じる」

「よし。俺トンカツも頼もう」

「あ、じゃあ私ハンバーグ!」

と追加注文をしつつ、ガツガツ食べ、ゴクゴクとエールを飲み干していく。

やがてお腹がいっぱいになったところで酒場を出て宿に戻っていった。

「なんとも素朴じゃがいい村のようじゃのう」

「ああ。こういう平穏なな日常が繰り返されているのが一番の幸せなのかもしれん」

「明日はさっそく発つのか?」

「ああ。ギルドで軽く路銀を稼いだら発つ予定だ」

「そうか。それならよい」

「ん? なんならもう少しゆっくりしていくか?」

「いや。お主が今の状況を忘れておらんか心配しただけじゃ」

「ふっ。安心しろ、一応覚えているさ」

と話し、いつものようにゆっくり床に就く。

そして翌日。

私たちは村の小さなギルドで小銭を稼ぐとさっそく旅に戻っていった。

またのんびり進むこと三日。

適当なところで街道を逸れ、田舎道に入っていく。

ハイエルフの里へ行くにはこちらの方が近い。

最初に見つけた村で宿をとり、いつものようにギルドに行くと、そこにはけっこうな数の冒険者がいた。

「へぇ。けっこうにぎわってるな」

「なにかあったんじゃないの?」

「一応受付で聞いてみるか」

と軽い気持ちで興味を持ち、さっそく受付に聞きにいく。

すると、ここ最近森にトレントが出没するようになってしまったとのことだった。

みんなにその情報を伝えるが、

「へぇ。一般の冒険者にとってはいい稼ぎになるかもね」

「ああ。村も潤うだろうし、俺らが手出ししちゃいかんだろうな」

「ええ。ここは任せておいた方がよろしいかとおもいましてよ」

と意外にも先を急ごうということを言ってくる。

(ほう。なかなか大人になったじゃないか……)

と妙なところで感心しつつも、私は、

「いや。一応奥に異常がないかだけでも確認しにいこう。なにせ、ローズのことがある。なにがあるかわかったもんじゃないからな」

と言い、

「ああ、そうだったな」

「ははは。すっかり忘れてたよ」

と言うアレンとエレナに少し苦笑いしつつ、とりあえず森に入って様子を見てみることを決めた。

翌日。

さっそく森に入っていく。

いつものようにサクサクと進み、オークやゴブリンといったどこにでも湧いてくるやつらを適当に相手しながら進んでいると、たしかにトレントがたくさんいることに気が付いた。

「あまり他の冒険者の獲物を取らないようにうまく避けていこう」

と話し、さくさく進んでいく。

すると、奥に進めば進むほどトレントの数がどんどん増えていった。

「おいおい。そろそろ避けられねぇぜ」

「うん。やっちゃおうか?」

「ああ。でも最低限道を作る程度にしておいてくれよ」

「「了解」」

という感じでさっそく戦闘態勢に入る。

トレントは積極的に攻撃してくる魔物じゃない。

しかし、うかつに近寄れば遠慮なく枝を絡ませ締め付けてくるから、気配を察知したら徹底的に叩くのが基本だ。

そんな基本を思い出しつつも、私たちは自分たちの行く手をふさぐように立っているトレントだけを狙い、さっさと叩き割っては回収して進むという作業に取り掛かった。

「どっせい!」

「おりゃぁ!」

と嬉々としてトレントを狩るアレンとエレナの後を一応用心しながら追っていく。

時折、二人が見逃したトレントに魔法を食らわせたりしながら、私たちはまっすぐ森の奥を目指していった。

やがて、トレントの数が増え、これまでただの作業だったものがちゃんとした戦闘になっていく。

「そっちにもいるぞ!」

「おう!」

「デバフお願い!」

「はい!」

と連携しながらトレントを狩っていくがなかなか数が減らない。

そこで私は業を煮やし、

「デカいので道を作る。いったん私を守ってくれ」

と言うと集中して巨大な魔法陣を目の前に展開した。

「ノティリア!」

という叫び声と共に竜巻を横倒しにしたような強烈な風魔法が放たれる。

魔法はトレントもそうでない普通の木も巻き込みながら、森に長い一本道を作り出した。

「よし、一気に行くぞ!」

と声を掛け出来たばかりの道を駆けていく。

すると、しばらくして、いかにも親玉らしい巨大なトレントが姿を現した。

「なっ! エルダーじゃん!」

「久しぶりだな」

「ははは。暴れるにはいい相手がいたもんじゃないか」

「うん! アレン、いくよ!」

「おう!」

と言ってアレンとエレナがエルダートレントに突っ込んでいく。

エルダートレントはその太い枝を鞭のようにしならせたり、根を隆起させたりして攻撃してきたが、アレンとエレナはその超人的な身体能力でそれを次々と削っていった。

「ミリエラ。そろそろ頼む」

「はい! デポーリア!」

とミリエラがデバフを放ち、エルダートレントが野太い悲鳴を上げる。

すると、アレンとエレナはますます勢いづき、ものすごい勢いでエルダートレントの幹に強烈な一撃をかまし始めた。

「よっしゃ、これで終わりだ!」

「どっせい!」

と叫んで最後の一撃をかます。

すると、今度こそエルダートレントが断末魔の叫びを上げ、「ドドドドド……」と音を立てながらゆっくりと地面に横倒しになった。

「お疲れ。とりあえず回収するから適当に切り刻んでくれ」

と言い、軽くハイタッチを交わしたあと、伐採作業に取り掛かる。

ものすごい数の枝を落とし、幹を十メートル程度の長さで適当に切りそろえてもらうと、私はがそれを次々に収納していった。

「いやぁ、これ売れるかな?」

「……あの村のギルドじゃ無理だろうな」

「だよねー」

と言いつつその日はその場で野営にする。

ちなみにエルダートレントの枝はいい感じに火持ちがするので、その日は焼肉にした。

「なんかバーベキューみたいで楽しいね」

「そうだな。妙に米が進む」

「うふふ。たくさん食べてくださいね、勇者様」

「おう!」

といつもの食卓のように呑気な会話をしながら飯を楽しむみんなを見て、心和ませながらワインをちびりとやる。

そんな私の横でローズはチーズをかじりながら、

「お主らのう……」

といつものジト目を向けていた。

そして翌日。

私たちは何事も無かったかのように村に戻り、再び旅の空に戻る。

(さて。久しぶりの実家はどうなっているだろうか?)

と思いつつ、馬にゆっくり前進の合図を出すと、私たちはいつもの調子でワイワイやりながら、田舎道を進み始めた。

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