m9(^Д^)のち( ゚∀゚)o彡゜
黒歴史を作った後、僕はシエナを連れて屋敷に戻ろうとした。
しかしそこで気付いてしまったんだ。モブ枠とはいえ主人公PTのメインユニットであるシエナと悪堕ちした瑞希を会わせてしまって大丈夫なのかと。まあ悪堕ちしたのは僕のせいなんだけど。
それはともかく下手をすればその場で戦闘が始まってしまうのではと危惧した僕は、屋敷にシエナを連れて行くのは急遽取り止める事にした。
若草親子にさっさと出て行ってもらえるよう交渉してみる?
お金目当てなのはわかってるんだから、毎月のお小遣いを全て差し出すと提案すれば喜んで出て行くだろうけど、ただでさえもう手持ちが15万しかない現状でそれもキツイ。しかも今月分はもう使ってしまった後だ。
まずは金策。ともかく金さえあれば全て解決するんだ。
「ごめんね、ちょっとまだ屋敷の部屋が空いてなくてね。もうすぐ出て行く予定の人がいるから、それまではここで我慢してほしいんだ」
「心配せずともわらわも一国の姫。その手の機微はわきまえているつもりです」
きび? きびって何だろう。ダンゴぐらいしか思い浮かばない。人の入れ替わりの話からだから引っ越しぐらい手伝うよって言ってくれてるとか?
そうじゃないんだ。けど僕のお金目当ての悪女が住み着いてて出て行ってくれないんだなんて言えないよね。それこそシエナVS瑞希が発生してしまう。
もちろん現時点で戦えばシエナの圧勝なんだけど、ヒロインがやられるなんてヒーロー登場フラグ以外のなにものでもないよね。
「違うんだ。とにかく暫くすれば部屋は空くからさ、ね?」
「わかりました。世界がそう言うのであれば待ちましょう」
なんとか説得する事ができた。けど孤児院の部屋を借りるにあたって10万Gを袖下さんに差し出した。更に孤児院で目立たないよう角を隠す帽子も買い与えた為、ついに残金は2万を切った。本格的にまずい。
―――★
さすがに2万以下では回復薬すら碌に買えないし、シエナのドロップ判定を検証する前に最低限の用意ぐらいはしておかないと狩りにも行けない。
シエナ自身は余裕でも、彼女のレベル帯で余裕の狩場も僕にしてみれば超危険地帯。僕が安全な場所にまで落とすと今度はシエナにとっては敵が弱すぎて、この場合は例え主人公PTであってもドロップ判定がなくなる。
さすがの僕でも護衛の役割をお願いした相手に、ひとりで狩に行って何かドロップしたら僕に頂戴ねとは言えない。
だから僕は危険を顧みず決意したんだ。
今日帰ったらまた父親の金庫から宝石をくすねようってね。
あれからひと月も経ってないのに、あの時よりお金に困ってる。だけどその甲斐あって肉壁は手に入れた。大丈夫、状況は改善されてるはずだ。なんせ僕は原作知識という最強のチート持ちなんだから。
―――★
…………原作開始前に自宅が崩壊してたんですけど。
玄関を開くと見渡す限りの窓が割れ、床にはよくわからない液体が散乱し、とにかくもうめちゃくちゃだった。まるで野生動物が暴れまわった後のように荒れ果てていて、足の踏み場がないってセリフがこれほど似合う状況もないだろう。
「なにこれ……」
「あっ、世界さんお帰りなさい」
「お帰り世界くん」
箒とバケツを持った瑞希と緑さんがパタパタと奥から駆けてきた。
「これはいったい……なにごと?」
「それが……旦那様の妻を名乗る方が現れてね……奥様と話し合いを持たれたんだけど……」
話し合いに無理矢理同席させられた緑さんの話を要約すると、
そのうえ相手は若くて綺麗で、更にはとんでもない財を貢がれているらしく、どれだけ自分が愛されているかを語り、マウントを取ってきたらしい。そして最後にはこれからは愛妾として週1程度でなら関係を認めてやっても良いと上から目線で通告。
母親は怒り狂って掴みかかったらしいけど、片手で制圧されてその相手が帰るまでずっとそのまま押さえつけられていたらしい。相手は若くて美人で自分より愛されてて更には暴力に訴えても勝てないって、そりゃママンもぶち切れて物に当たるのも仕方ないね。
にしたって
居るんだよなぁ。上手くコントロールしてるつもりで実は全然できてない奴がさぁ……二度目の転生を思えば僕も人の事は言えないけど。
まあ僕自身の事であれば慌てふためく場面であっても、
けどブチ切れて暴れ散らかした母親は、その後に家中の金目の物をかき集めてから出て行ったらしい。
それを聞くまでは父親のアホさ加減を笑っていた僕は震える足で書斎に向かった。
「僕の貯金箱が……」
空っぽになった金庫の前で後悔の念が押し寄せる。
「こんな事になるんなら、あの時根こそぎ頂いておけばよかった……」
これは由々しき事態だ。安心安全確実な金策、唯一のリスクは父親バレだけで、例えバレても命が取られるような心配は皆無だったイージークエストが、こんな突然サ終だなんて……。
父親のフラグ管理が失敗して家庭崩壊したのはいい。
母親がブチ切れて出て行ったのもいい。
ただし僕の貯金箱のサ終。テメーはだめだ。
「金が必要なんだ、僕には金が……」
そうだ、灯台下暗し。もう父親や母親に気を使う必要もないじゃないか。母親同様に家の中にある金目の物をかき集めて売ればいい。大物は残っていないだろうけど、小物であれば母親の取りこぼしがあるだろう。今の僕には10万クラスの物でもありがたいんだ。
そう考えて色々な部屋を物色してみたけど、本当に大した物が残っていない。くそっ、強欲ババアめ。いくらなんでも根こそぎ持っていきすぎだろ……。
一見金になりそうなのは母親のドレス類ぐらいで、貴金属の類は何一つ残っていなかった。クローゼットに残っていた高価そうなドレスを全て引っ張り出してみる。全部で20着はある。ただこれ全部売ったところでどうせ二束三文だろうなぁ……。
本来ならそれなりに価値はありそうなんだけど、結局このゲームって宝石と換金用アイテム以外はゴミ値しか付かないんだよね。逆に貴重すぎるアイテムはそもそも買い取ってくれないし、その辺はゲームって感じだよね。
換金用アイテムの当てもあるにはあるんだけど、そこを攻略する為にも回復薬等の用意は必須だし、その為のお金がない。
そんな事を考えながら母親の部屋でぽけーっとこれからの金策を考えていたんだ。
そしたらね、急に瑞希にキスされたんだよね。
うん、脈絡がなさ過ぎて何を言ってるのかわからないと思うけど、実際僕も何をされてるのか意味がわからなかった。確かにあの孤児院遭遇以降、やたらと絡まれるようにはなってた。
僕にお金を無駄使いさせないように弁当まで持たされるようになったし、若草親子のお金に対する執着心は理解していたつもりだった。
ただそれが何故今このタイミングでいきなりキスに繋がるのかがまったく理解できない。
いや、この際もう理解はいい。問題はだよ?
こういったゲームでのヒロインの処女性は極めて重要って事なんだよ。
処女やキス未経験なんて当たり前すぎて議論にもならない。過激派であれば幼少期に仲の良い男の子と手を繋いでいた回想だけでもアウト判定だ。
ではここで問題です。
あなたは主人公として箱舟をプレイしています。
幼馴染のヒロインと出会いましたが、そのヒロインがなんと雑魚中ボスのナル男とちゅっちゅしていました。
Q あなたならどうしますか?
A 1、ナル男を殺す。
2,ヒロイン共々ナル男を殺す。
3、いいぞ、もっとやれ(脳が破壊されて気持ちいい)
考えられる選択肢はこれくらいだろう。つまり僕は三分の二で主人公に殺される。
主人公は主人公だけあって馬鹿みたいに強いので、僕がラスボスであればワンチャンあったかもしれないけれど、レベルキャップ付きのナル男である以上は勝てる確率はゼロだ。
僕はこれまで死なないように必死にフラグをへし折ってきた。
けれどそんな僕を嘲笑うかのように、またしても新たなる死亡フラグを再構築してくるだなんて、どうやっても強制力君には勝てないのだろうか?
もうどうしようもないんじゃないかとの不安からか自然と涙が零れてくる。
「大丈夫。私が居るから! 私はずっと傍に居るから!」
けどさ、おっぱいって凄いよね。
正直何を言ってるのかよくわからない瑞希だけど、その豊満な胸に僕の顔を
あー、まあいっか。なるようになるでしょって気になってくる。
しかも逆説的に考えれば今のままでも三分の一で僕は生き残るわけでしょ?
それならこれまで二連続で刺殺されてきた僕なわけだし、確率の収束を考えれば次は生存を引いて然るべきじゃない?
なんかいけるような気がしてきた。
大事な事だからもう一度言おう。やっぱりおっぱいは凄い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます