第9話 俺、悩める少女がもがいているのに何やってるんですか(前編)!?

彼女は、悩んでいた。


足元に転がるのはDPストーン。

あの不親切なアナウンスの直後、すぐ近くに落ちているのを偶然発見した。

普通に考えれば、これは望外のラッキー。だが、彼女は、悩んでいた。


『このDPストーンをどうするか』ということでは無い。それはとりあえず拾っておけばいい。彼女が悩んでいるのは、『ここ最近の自分自身について』であった。


いわく、『どうして、こんなに上手くいかないのか』


思わず、彼女は呟いてしまう。


入学当初は順調だった。クラス分けこそ成績順で、お世辞にもいい位置にいたとは言えない。しかし、そんな中でも自分は5割以上の勝率を保ち、大切な友人と過ごす日々に、確かな充実を感じていた。

友人は入学以来、ずっと何かに悩んでいる様子だった。だけど、そんな友人に寄り添い、自分にできることを模索する。そんな日々は、誇らしくさえ思えた。


そして、友人は再び輝きを取り戻した。そのキッカケは自分ではなかったが、それについては何の問題もなかった。別に、『自分こそが、あの人を救うのだ!』などと、思い上がったことを考えてたわけではない。結果として、大して友人の力になれなかった事は複雑だったが、それでも、あの人が元気を取り戻し、前向きになってくれた事が嬉しかった。


問題があるとすれば、むしろ自分の方だった。友人が何かを掴み、元気を取り戻すキッカケになった、クラス対抗の団体戦。あの頃から、今度は自分の歯車が狂いだした。あの団体戦で、自分は負けた。それ以来、自分の中の屋台骨が、ガタガタと音を立てて崩れ始めた。


最初は、ほんの小さな違和感。


『あれ……、また、私の負け……?』


勝率が、徐々に下がり始めた。だが、一時的な勝ち負けの浮き沈みなど誰にでもある事。最初はそう思っていた。

しかし、団体戦以降は快進撃を続ける友人。友人の勝率は、もうすぐ五割に復帰する。対して自分の勝率は、既に五割を切っている。


『負け、負け、また私の負け』


悩みを吹っ切り、勝利まで積み重ねるようになった友人とは対照的に、自分の心は少しずつ、暗くどんよりとした何かに浸食されていくようだった。こんな感情、自分は今まで知らなかった。

『あの人は、どんどん成長して行く』。傍から見ているだけでも、友人が日々進化しているのが分かる。あの『正直気に食わない、クラスで一番強い人』でさえ、最近は何か変わったようだった。あの人もまた、成長しているというのか。他のクラスメイト達だって、足踏みしているばかりでは無いだろう。きっと皆、それぞれの歩幅で、前に進んでいる。

対する自分はどうだ?前に進めている?いや、進めていない。


「私だけが、置いていかれる?」


ふとそんな考えが頭をよぎる。友人にも誰にも、悪気なんて無いのは分かっている。でも、自分だけが今、前に進むことが出来ていない。いや、後退すらしている。


「お願いだから、私を置いて行かないで……」


この場に誰がいるわけでもないのに、一体、自分は誰に向かって懇願しているというのか。馬鹿げている。でも、願わずにはいられない。


「その願い、叶えてあげるよ」


突如聞こえた声に、彼女は急いで顔を上げる。『こんな情けない姿を見られてしまった…』と思うと同時、別の疑問が浮かぶ。


いわく、『…あなたは一体誰なのか? どこから来たのか? 学園の関係者……なのか?』


少年はにやりと笑い、両手を広げながら、ゆっくりと彼女に歩み寄る。

「答えてあげるよ。まずは関係者…だっけ? そんな肩書き、僕にはないよ」

「どこから来たのか……。か。ごめん、これが一番難しい問いだよ。『すごく遠いところから』としか言えないな。そうとしか表現できないんだ」

「でも、最後の質問は簡単だよ。僕は一体誰なのか」

「僕は、君の味方だよ」


昨今のご時世、どんなお馬鹿な詐欺師でも、もう少し上手くやるだろう。こんな怪しい物言いはしない。

…はずなのに、その声には、なんというか――引き込まれるような不思議な力がある。言葉の端々に、甘くささやかれるような魅力が混じっていて、思わず視線が離せなくなる。


「な、なぜそんなことを……」


「だって、君が困っているのが手に取るように分かるからさ」

「誰かが困っているのって、心が痛いよね。助けてあげたいよね」


少年の瞳は、まるでこちらの心の奥まで透かして見ているかのように澄んでいる。

同時に、どこか、逃げ場のない圧力を感じる。


…彼女は気づいていない。先ほどの『なぜそんなことを』という発言。あの発言こそ、少年の言う『君の味方だ』などというあまりにも怪しい台詞を、心のどこかで信用してしまったからこそ出た発言なのだと言う事に。


彼女はなおも、少年に問う。話を続けてしまう。

いわく、『…あなたは、私のことを、何も知らないハズだ』

いわく、『……それでも、分かるのか?』 ――と。


少年は肩をすくめるようにして、淡い笑みを浮かべた。

「知らなくても、感じるんだ。君が求めているもの、そして恐れているものも」

「君は今、『負けたくない』と思っている。…ううん、『みんなに置いていかれたくない』。『あの人に置いていかれたくない』かな」

「だけど、どうすればいいのか、まだ分からなくて悩んでいる…そうだろう?」


彼女の背筋にぞくりとしたものが走る。

確かに、そうだ――自分は今、何をやっても負け続き、上手くいかない、置いていかれなくない。ただただ、焦燥にかられていた。

それを、この少年はまるで見透かしているかのように言い当てた。


「……そんなこと、どうして分かるんです?」


少年は片方の眉をくいっと上げ、楽しげに笑う。


「分かるから分かるんだよ」

「君が願うなら、僕は手を貸す。…その願い、叶えてあげる」


言葉の響きが甘く、耳に残る。

けれど、その瞳の奥には――何か計り知れないものがあるようで、彼女は少しだけ怖さも感じていた。


「……でも、条件はあるんでしょう?」


彼女の問いに、少年はゆっくりと首を振り、微かに笑う。


「そんなもの無いよ。言っただろう? 僕は、君の味方だよ」

「君はただ、ほんの少しだけ僕に手助けをしてもらう。それだけさ」

「そうすれば、君は君自身で歩き出せる。走りだせるよ。 僕の力なんて、小さなものさ」


彼女は一瞬息を呑む。

この少年――誰なのか分からない。と言うか、何なのか分からない。

警戒しなければならい……はずなのに。けれど、何故だかは分からない。今の自分の状況を変えるかもしれない力を持っている。そう確信してしまう。


だから、彼女は言ってしまった。


「…わ、分かりました。お願いします……」

「力を、貸してください」


言葉にしてしまった瞬間、彼女の胸の奥で小さな何かが芽生える。

「今はただ、後悔しないように、全力で…この状況を乗り越えなければ……」


少年はにやりと笑い、背後の影の中にすっと消えた。でも、声だけは未だ聴こえている。

明らかに異常な状況。しかし、彼女は疑問に思わない。


「貸すだなんて、ケチな事は言わないよ。これはもう、君の力なんだ」

「さあ、始めよう。 君の物語は、ここから始まるんだ」


…もし、この状況を、誰か、傍から見ている人間がいたとすれば、彼女はただ一人で、ずっと虚空に向かって喋っているようにしか見えなかったであろう。

しかし、幸か不幸か、この時、彼女は一人であった。


ひとりぼっち。本心を理解して、寄り添ってくれる人間など誰もいない。だからこそ、闇の誘惑に、あっさりと屈してしまった。


僅かな時間の後、彼女は再び歩き出す。DPストーンは、結局道端に転がったままだ。今の彼女には、そんな事はもうどうでもいいのだ。


彼女は呟く。

いわく、『まずは、試運転が必要だ。 目立たず。かつ焦らず』

いわく、『事を成す者は、時を待ち、機を観る――。昔の人は、とてもためになる事を言うものだ』 ――と。


その表情には、憂いも迷いも無い。まるで、入学したての頃。これからの未来に沢山の希望がある事を信じて疑わない……、彼女は、そんな表情をしていた。


――――――――――


俺こと犬飼リョーマは、DPストーン奪取戦の真っただ中に居た。


「成程、DPストーンを手に入れると、イベント終了までの時間がデュエルガジェットに表示される。そういう仕組みか」

「ストーンを持っている人間が圧倒的に有利だな。そもそものルールとして、ストーン保持者がDPを獲得できるというルールだし……」

「逆に、DPストーンを持っていなければ、イベントの残り時間すら分からないまま彷徨う事になる」

「DPストーンを囮に戦っている奴相手ならともかく、ストーンを持って逃げ回っている相手に対して、『残り時間が分からない』っていうのは、この上なく不利だ」


更に言うなら、DPストーンを確保しなければ分からない事はまだある。『1度確保し、なおかつ誰かに奪われたDPストーンについて、同一のDPストーンを奪い返すことは出来ない』だとか、『夜8時以降は地図アプリにDPストーンの表示が消える』だとか。全く、アナウンスは説明不足過ぎてアンフェアここに極まれりだ。


「原作のイベントはもうちょいフェアだったと思うけど、まあ気にしても仕方ないか」


そもそも、俺がDPストーンを手に入れた経緯からして、既にストーンを確保していた他組の人間からデュエルで奪い取ったのだ。

奪い取られた側からすれば、原作を知る転生者と戦わされたのだ。これはフェアとはかけ離れている。俺については『フェアにやってくれ!』なんて言う権利は無いだろう。


時間は既に夜9時を回っている。いくつかのデュエルを終え、俺はようやく寮の自室に戻ることが出来た。


ドアを開けると、部屋の中、ドアのすぐ近くの地面に、見慣れない封筒が落ちていることに気付く。恐らく、ドアの下の僅かな隙間から部屋に入れたのだろう。


白い便箋を包むには少し大きめの封筒で、表には宛名だけが整った丸文字で書かれている。差出人の名前は、どこにもない。裏の糊付けは丁寧に押さえられているようで、どこか不器用に力が入りすぎたような跡が残っていた。


手に取ると、ほのかに甘いインクの匂いがする。開封口には小さなシール――赤いハートの形が貼られていた。市販のものだろうが、この一枚があるだけで、何だかラブレターみたいな雰囲気を醸し出している。


中の便箋は折り目正しく三つに畳まれており、広げると淡い花模様の透かしが入っている。文面は、震えたような筆跡で、それでも一生懸命に書き並べられていた。


『明日の午前10時 中庭の池で待っています』


いよいよ本格的にラブレターみたいだが、「違う」と俺は知っている。むしろ、「来たか!」の心境だ。


この世界は、いわば『アルカナ&モンスターズ』の『壊れてしまった原作の世界』と言える。負けるはずの無かったカオリが負け、竜崎レオンは竜崎レオナになっており、存在しないハズのイベントが執り行われたり。


だが、ある意味では『原作をなぞった世界』とも言える。竜崎レオナについては、『ライバル出現』という意味ではタイミングまで含めて原作通りだし、DPストーン奪取戦についても、『予選の最中にイベントが発生する』と言う意味では原作通りだ。

カオリの敗北についてだけは…分からないが。


ここで重要なのは、『この世界が原作をなぞった世界ならば、次に何が起こるか』だ。結論から言おう。『犬飼リョーマは闇に堕ちる』。


原作の第1話でツバサに敗れたリョーマは、その後も連戦連敗を重ね、まさにかませ犬だった。そして精神的に弱り切ったところを、超常の闇の力を持つ組織に目を付けられ、闇に堕ちてしまう。


たしか流れはこうだ。

心が折れたリョーマの前に『闇の使者』が現れ、闇の力を宿したカードを渡す。

ちなみにリョーマはそのカードを使い、ツバサに再戦を挑むが、結局は敗北する。…哀れすぎる話だ。


今回大事なのは二つ。

ひとつ、リョーマのもとに闇の使者が現れるタイミングは『新入生歓迎デュエル大会の予選の最中』、つまりまさに今この時期だということ。

そしてもうひとつ、『原作でも闇の使者の人相は明かされていない』ということだ。


正体の分からない敵――正直、かなり警戒していた。だが、こうも分かりやすく接触してくれるなら、むしろ好都合かもしれない。


原作では別のタイミングで、ツバサも闇からの誘惑を受けたが、彼は強い心でそれをはね退けた。ならば、俺もそうでなければならない。

闇に堕ちた先にあるのは、どう考えてもバッドエンドだ。そんな未来、まっぴらごめんだ。


そんな風に思いながら、今日の所は眠りにつく。

明日はきっと激闘になる。犬養リョーマを狙う、闇の使者との闘い。俺の精神が試される激闘になる。激闘に勝利するために、まずは英気を養わなければ。


………


翌日、午前10時前。


約束の時間の少し前に、俺は呼び出しの場所、恐らくは俺の精神を試される場所、中庭の池に向かっていた。

全くの余談だが、朝起きてすぐにDPのランキングを確認したところ、竜崎レオナのDPが増えていた。あの女、夜も戦ってたのか。いつ寝てるんだよ……。


そんなどうでも良くも答えの出ない疑問を抱きつつ、俺は呼び出しの場所に到着する。

そこには、既に一人の少女の姿があった。


「来たわね」


この少女には見覚えがある。

深い青みを帯びた黒のショートヘア。瞳は澄んだ藍色で、静けさと芯の強さを感じさせる、そんな少女。

水瀬リナ。先の団体戦でツバサ相手に負けた、1年C組の女子生徒だ。

団体戦以降、水瀬リナがどうしていたかは……、全く分からない。


だがそうか。この女が闇の使者……。正直、納得した。

原作アニメを見た段階では、『ポッと出のモブにしては、キャラデザに気合が入り過ぎているし、ちゃんと名前もクレジットされてるなんて珍しいな』なんて思っていたが、闇の使者だというなら納得だ。

恐らく、原作『アルカナ&モンスターズ』の設定資料集とかには、『実は水瀬リナは闇の使者で、犬飼リョーマを闇に堕とした張本人』とか書かれているんだろう。

可愛い顔して恐ろしい女だ。


「急に呼び出してごめんなさい。正直、来てくれないかもと思ってた」


「…つまらない前置きはやめよう。 お前、闇のカードを持っているな?」


俺の質問に、彼女は一瞬『きょとん』とした表情を見せる。『俺の勘違いだったか?』と思いかけたが、杞憂だった。彼女は、口元を不自然に歪めて笑った。

正直不気味だ。何せ口角の上がる角度がヤバい。あんな笑い方アニメの悪役しかやらない。ここはアニメの原作世界だけど。


「よく、分かったわね。 もしかして貴方、光の力を持っているの?」


「いや、そういう特別じゃない。もうちょっとだけ別の『特別』なんだ。俺は」


言うまでもなく、俺が水瀬リナの闇墜ちを看破したのは、俺が原作アニメの展開を知る転生者なのが理由だ。光の力がどうこうとかは全く無い。

ついでに言うまでもなく、光の力を持っているのは原作主人公のツバサだ。もっとも、まだ覚醒はしていないはずだが。


「闇のカードの存在を知っているなら、話は早いわ」

「こっち側に来ない? 望む力が手に入るわよ」


「悪いがお断りだ」


「即答。ずいぶん意志が強いのね」


意志の強さの問題ではない。『闇墜ちしたら間違いなくバッドエンドが待っている』と知っているだけだ。俺は転生者だからな。


「俺の方からも一応、説得はしてみよう」

「水瀬、闇のカードを今すぐ捨てろ。 そんな物使っても何にもならない」

「道は自分の力で作って、自分の力で歩め。 少なくとも、俺はそうすると決めた」


…瞬間、水瀬リナの表情が変わる。

それまで張りつめていたような静けさが、一瞬にして霧散する。

瞳の奥に燃え上がるのは、押し殺していた激情。そして喉の奥から噴き出すように、言葉がほとばしる。


「ふっざっ……ケルなああぁぁぁぁぁぁ!!!」


彼女の絶叫に、空気がビリビリと震える。怒号というより、もはや咆哮に近い。

胸の奥まで伝わる振動に思わず息を呑み、身体がわずかに後ずさる。声の波が胸に重く圧し掛かり、空間そのものが彼女の意志に従うかのように揺れる。流石の俺も、この圧倒的な存在感に、少しだけ気圧される。


「お前にっ! 私の! 何が! 分かる!?」

「勝てない気持ちが分かるか!? 負け続ける気持ちが分かるか!?」

「勝てなくて、勝てなくて……いつからか、勝負することそのものが怖くなって!」

「あんなに大好きだったアルカナ&モンスターズを嫌いになって行く! その気持ちが、お前に分かるか!?」

「自分一人だけ奈落の底に置いて行かれる、その気持ちが! お前に分かるか!!!」


「舐めるな。そんなの、痛いほど分かるにきまってるだろ」


俺だって、勝てなくて、全然勝てなくて、本当に1勝もできなくて、大好きなカードに触れるのも怖くなった時期がある。と言うか、俺が転生する前の現実世界では、俺みたいなレベルのカードゲーマーには、誰にだって、その気持ちがわかるんじゃないかな。伊達に『アルカナ&モンスターズ』を10年以上もやってない。

勝てない時期なんて、いくらだって経験している。


「詭弁だ!」


「詭弁じゃないし嘘でもない」

「ついでに言うなら、そういう時期の自分を乗り越えて今があるとか、そういう立派な話でもない」

「そういう情けない時期の自分も背負って、それでも今がある。 ただそれだけの話だ」


「…黙れ」

「黙れ黙れ黙れ黙れ!! そういう! いかにも! 正論です!! みたいな! 話は!」

「聞き飽きた!!!」


だろうな。正直俺も、同じように悩んでいた時期の自分を、どうにか勇気づけられる自信なんてない。


「もういい。 お前は、いらない。 眷属は別の奴でいい」

「デュエルだ! 息の根を止めてやる!!」


「…まあ、悩んでいるお前には酷な話だと本当に思うよ。でも、この場はもう荒療治でしか収まりそうにないな」

「いいぜ。そのデュエル、受けて立つ。 …どうせ、闇のカードからは逃げられないしな」


ARビジョンが周囲に展開されると同時、不気味な雰囲気が漂う。

カードゲームアニメならよくある事だが、闇のカードを相手にした時、ライフポイントへのダメージは、単なるARのエフェクトではなく、現実にプレイヤーの体を傷つけるダメージになる。

ライフポイントがゼロになったら…、場合によっては死ぬ。


幸い、俺は闇のカードを持っていない。闇のカードを持っているのはリナだけだ。

だからこのデュエル、俺の体がリアルダメージを受ける事はあっても、水瀬リナの体は無事だ。だから、俺が勝っても、水瀬リナの命を奪う心配はない。


「その自信……、いつまで持つかな。 闇のカードの恐ろしさ、見せてやる」


こっちこそ。転生者の恐ろしさを見せてやる。リアルダメージへの対策は流石に不可能だが、闇のカードへの対策はバッチリしてきた。何せ俺は、『このタイミングで来る』と分かっていたのだから。


「そろそろ始めるか。行くぞ!!」


「「デュエル!!」」


己の非力に悩み、悩み抜き、その心の隙を突かれ、闇に落ちた少女。

『原作を知る』、その『特別』を武器に戦う男。

二人の戦いの火蓋が、切って落とされた。


―第9話、 了

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